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実在の人物や団体などとは一切関係ありません。


「転生……ね。(にわか)には信じられないわ。でも、その様子だと全くの嘘でもなさそうね。」


 猪ッチの説明で、何とか樹理も分かってくれた。転生についてはセィジョだとか、ァクャクレイジョだとか、ぃっぱぃ専門用語が出てきて、やっぱりゥチにゎ分からんかった。

 要するに、今ゎゥチがアズマってコトは間違ぃなぃ。


「しかし困ったわ。よりによって、こんな大事な時に、なんて事態が起きてるのよ…。」


 樹理がため息交じりにゥチを睨みつける。


「こればっかりはどうしようもないです。沢山の文献にもあるとおり、転生はいつどこで発生するか分かりません。」

「叔父の呪いかも…ね。」

「そんな事はありませんよ。」


 猪ッチゎフォローしてくれるけど、樹理ゎまたため息をつく。


「猪原、あなたが社長をやる?」

「俺は勘弁してください。次の社長はアズマさんしかいません。明後日は彼女にアズマ社長を()ってもらうしかないんです。」

「うまく行くはずないでしょ。」


 そこまで言われてゥチも黙ってはぃられん。


「ゥチだって頑張るから。猪ッチとジュリんが手伝ってくれたら、何とかなるって。」

「ジュリん…?」

「樹理だから『ジュリん』。良ぃっしょ。」


 ゥチのネーミングセンスに、ジュリんが眉をひそめる。良ぃと思ぅんだけどなぁ。


「アズマの顔でそんな呼び方されるとは……頭痛くなってきたわ。」


 猪ッチゎメガネに手をかけると、キッと決め顔を魅せる。


「でも、勝算はあります。」

「勝算?」

「彼女は、アズマさんが新社長だという事を知っていたんです。」

「それがなんだっていうの……」


 ジュリんゎそこまで言って、何かに気づぃた。そしてゥチの両肩を掴んで聞いてきた。


「どういう事なの!」


 どゅコトなの? ゥチが知りたい。


***


「それゎ絶対にダメっ。マヂで炎上するからっ!」


 あれから四時間後。明後日の記者会見で司会をする人たちとの打ち合わせ。

 ゥチゎ白髪頭のぉっさんにぶちギレてた。このぉっさんは司会するぉ姉さんの上司だそうだ。


「アズマ社長、このくらいは大丈夫です。どこもやっている事ですから。」

「ダメ、今すぐ捨ててっ。なんっも良ぃコトなぃから!」

「会見をスムーズに進行するには必要なものなんです。絶対に大丈夫ですから。」


 白髪のぉっさんも引き下がらなぃ。

 ヶンカになってる原因は、隣に座るちょっとデコの広ぃぉっさんが持ってる資料。それゎ記者の名前が載ってるリスト。


 ゥチゎ知ってる。

 このリストゎ記者会見の質問の時に指名しなぃ人の一覧だ。後で大問題になるコトも知ってる。

 リストの存在自体がテロみたぃなもんだ。テロリストだょ。


「ダメ。ぜったぃ。」

「アズマさん少し落ち着いてください。今日はおかしいですよ。いつものアズマさんじゃないみたいだ。」


 デコのぉっさんが困惑気味だ。デコのぉっさんゎ、事務所のコモン弁護士なんだって。きっと偉い人なんだろぅ。

 今、ゥチのコトを知ってるのは猪ッチとジュリんだけ。コモンも白髪もぉ姉さんも、アズマの中身が転生したゥチだとゎ知らなぃから、ぃつもと違うアズマに混乱してる。


「社長が駄目だとおっしゃるなら、駄目です。使わないでください。」

「そうね、やめましょう。」


 猪ッチもジュリんも賛同してくれた。それを見てコモンも何も言わずに引き下がる。


「…では、我が社で勝手に作ったものと言う事にして、事務所側は知らなかったと言う事にしてはどうでしょうか。それなら…」


 どぅして、この白髪ゎこだわるかな。絶対ダメって言ってるのに。ジュリんも「それなら良いか」みたぃな顔しはじめた。


「ダメだって! 知らなかったコトって、誰にも分からなぃじゃん。ずっと疑われるょ。」


 すかさず、猪ッチがゥチの説明下手をカバーしてくれる。


「リストが露顕した時に、事務所側が知らなかったと証明する事は誰にもできません。それは悪魔の証明です。ですよね、社長。」

「ん? そぅ。それょ。悪魔のしょぅめぃ。だからやめて。」


 猪ッチが畳み掛ける。


「基本的にこの業界は全てを秘密にする事はできません。必ず誰かから情報が漏れます。そんな業界だからこそ、今この事務所が危機に陥っているんです。お分かりでしょう?」

「でも記者に変な質問されたら、会見が荒れるかもしれませんよ。」

「それはもう、誠実な回答を重ねていくしかありません。」

「そこまでのお覚悟があるというなら分かりました。リストは破棄します。」


 やっと白髪も折れてくれた。さすが猪ッチ。


「そぅだょ、二回目の会見の時のリストがバレて、ちょぉ炎上したんだから。」

「…二回目の会見?」


 コモンが一瞬怪しむけど、猪ッチが話を無理ゃり次へと進める。


「いや、何でもない。時間がありませんから、どんどん続けてください。」

「え、ええ。」


 ぉぉっと危なぃ。

 これゎ秘密なんだった。


***


「未来人!?」


 ジュリんの声が裏返る。

 ゥチのコトをジュリんに分かってもらった直後、猪ッチは「勝算」について説明しはじめた。


「そうです。彼女は二ヶ月先の未来から転生してきた未来人です。まだ公表前であるアズマさんが社長になった事を彼女が知っていたのは、そのためです。」

「二ヶ月先…たったそれだけ? それって未来なの?」


 ジュリんが鼻で笑う。

 ゥチもそぅ思ぅ。二ヶ月ってぜんぜん未来じゃなくなぃ?

 そんなゥチら二人に、猪ッチは熱く語る。


「でも、これからの二ヶ月の情報は我々にとっては非常に重要です。会見の状況、メディアの反応、ファンの気持ち。これを知っていると言う事が、どれだけ大事な事か分かりますか?」


 ごめん猪ッチ。ゥチにゎ分からん。

 むしろ、ゥチを未来人って言ってるコトが面白くてツボ。


「確かに……。未来人のこの子が持っている記憶を元にして、これから事務所がやるべき事を見直すと言うのね。」


 ジュリんも納得してる。

 でも、ゥチは未来人でゎ無ぃと思ぅんだ。マヂ草生える。二人ともマヂメな顔して言ってるから余計に草。


「そうです。彼女は二回目の会見の事も知っていました。」

「二回目の会見…? 二回も会見するって事?」


 ジュリんがゥチを見る。ゥチはテレビやネットニュースで見たコトを話す。


「九月の会見で、今の事務所の名前を残すって言ったら、被害者の事を考えてなぃって炎上したんょ。で、十月の会見で社名変ぇてた。」

「どうして? 叔父の名を残す事には、好意的な意見が多かったはずなのに……。」


 ジュリんの疑問に、猪ッチは即答する。


「それは我々のファンの意見だからではないでしょうか。」


 ゥチも頷く。


「会見を開けばファンでない人々も当然に反応します。大衆はバッシングのタネを探しますから。メディアは視聴率が取れそうな方に動きます。」

「そうだったわ…。今まではメディアを抑えてくれてる人がいたから平気だったって事ね。」

「俺たちの事務所には、もうその手は使えません。いや、使いません。」

「そうだったわ。メディアを味方にできないってのは、こんなに辛いのね。」


 ジュリんが悔しそぅな顔をする。今までゎ何が起きてもメディアにソンタクをしてもらってぃたのに。それが手のひら返しされたのが悔しぃんかな。


「俺達が未来を知っている事は他言無用です。」

「タゴンムョー?」

「この三人以外には、誰にも言うなって事です。」

「絶対に秘密。約束よ。」


 猪ッチとジュリんとゥチは、固い約束をした。


***


 二日後。

 今日までゥチゎ、猪ッチからの厳しぃ特訓を受け、アズマ社長の動きと喋り方を叩き込まれた。マヂ厳しぃ特訓だったけど、へこたれんかった。好きなァィドルたちの事務所を守るためだから、手を抜くわけにはぃかん。


「基本的には君は手元のメモを読んでいれば大丈夫です。受け答えは基本俺がします。メモにある内容なら答えても構いません。」


 猪ッチが横に居てくれる。これだけで心強ぃ。


「ああ、頼んだ。」


 アズマの喋り方のマネをする。ゥチのコトを知らなぃコモン弁護士が隣に立ってぃるから、それらしく振る舞わなくてゎダメだ。でも特訓のぉかげで、かなり上手にアズマっぽくできてるはず。


「その調子です。もう少しゆっくり喋りましょうか。あとは頑張ってください。」


 猪ッチも応援してくれる。


 どこまで頑張れるだろうか。

 どこまでアズマの中身がゥチに変わってるコトを隠し通せるだろうか…。

 猪ッチの「全てを秘密にする事はできません。」とぃう言葉を思い出した。


 ってコトは、ワンチャンずっと秘密にできるってコトじゃん。ゥチゎやれるだけのコトをゃるっきゃなぃ!


 舞台袖から見ぇる会見場ゎ沢山の記者でぃっぱぃになってる。

 テレビで見たコトのぁるリポーターも居る。ぁの人の声って甲高くて頭に響くから好きじゃなぃんだ。


「凄い数のカメラ…」

「緊張しなくても大丈夫よ。」


 ジュリんがゥチをリラックスさせょぅとしてくれる。けど、ジュリんのほうが緊張で顔がガチガチに固くなってるじゃん。

 ゥチゎ、ぁまり緊張する方じゃなぃから、人前に出るのは平気。多分、二日前のゥチならウェーィって言ぃながらピースしながら飛び出てっただろぅ。

 でも今日のゥチゎアズマ社長だ。そんなバカなコトできん。


「ありがとう。私は大丈夫だ。」


 社長モードは崩さなぃ。


「本当にアズマそっくりね。これなら安心だわ。」


 ジュリんが笑う。緊張が少し解けたみたぃだ。


 この時のために皆が寝ずにぃろぃろと準備してくれた。その頑張りにも応えなくちゃ。

 一昨日、ゥチが転生するまでの二ヶ月間の記憶……つまり、これから起きる二ヶ月の未来を、猪ッチとジュリんに伝えた。

 一回目の会見、その後のメディアの追及。そして二回目の会見。

 社長の問題、知っていたかの問題、事務所名の問題、質問者の問題、グループ名の問題、被害者補償の問題、持ち株の問題。


 だから今まで準備してきたコトを全てひっくり返した。知らなぃで押し通すコトも辞めた。ブランド力のあった事務所名も変えるコトにした。事務所の仕事のやり方を大きく変える。変えすぎて驚かれるくらいに。でも、ィヶメンを活躍させる手伝ぃをするとぃぅ方針と信念は変ぇなぃ。


 時間がなぃ中で一から考ぇたんだ。反対する人もぃたけど、猪ッチゎ事務所の存続のために押し通した。マヂで猪ッチ有能。


「君のおかげで今日から事務所は変わります。……では参りましょうか、社長!」


 猪ッチがゥチの肩をポンッと叩く。

 最初はゥチ…アズマ社長の挨拶から始まる。気合を入れなぃと。


「ああ。」


 コモンを先頭に会見場へと歩き始める。

 カメラのシャッター音が会場を包む。

 眩しいくらいの照明、フラッシュ。

 ゥチの初舞台だ。


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