三話 精霊
「?...は、はい」
生きた目をした異性に話しかけられたのが久しぶり過ぎて、つい敬語になってしまった。普段敬語なんかろくに使わない。
「じゃあ同じクラスかな。私はフレア・イーリエンス。貴方の名前を聞いてもいい?」
「俺は...ソータ。ただのソータだ」
そう。それでいい。俺はこの世界では捨てられていた子だ。そもそもこっちの世界で日本人の名前は違和感しかない。それに、別に名前なんてどうでもいい。
「へー。じゃあソータさんですね。これからよろしくお願いします」
「よろしく」
いきなり良心のある人間に出会えたのは幸運かもしれない。まぁ決して信用はしていないが。
周りを見渡すとかなりの人数集まっていた。恐らく一年生だろうか。人数は集まっているが、まだ眼前の校門は開いていない。
「いよーっし。これで全員集まったかな?」
聞き覚えのある声が後ろのほうから聞こえた。
「この声は、ゼレス先生ですかね」
「そうだと思う」
彼女も彼に連れてこられたのか。ならほぼ確実に同じクラスか。
「やーやー。一年生諸君!元気かな?まぁ僕を知らない人もいるけど。まあいいや。これから門が開くからどんどん入ってってねー。そこから地獄になるか天国になるかは君たち次第!そんじゃ頑張って」
いきなりの出来事に周囲もざわついている。すると、校門が奇怪な金属音を立てて開き始めた。恐らく魔法で開いたのだろう。
「ここから、始まるのか」
「そうですね。私も立派な魔法使いになれるように頑張らないと」
独り言のつもりで吐いた言葉だったが、となりのフレアが反応してくれた。
彼女とは、友達として接してもいいのだろうか。前世がアレだったせいでいまいち人との距離感を掴みにくい。
「門を通った人を自動的にテレポートさせてる…大規模な転移魔法ですね。私たちも入りましょうか」
「そうだな」
門をくぐった瞬間に姿が消えていく。様々な場所に魔法が使われている。ここからはこれが当たり前になっていくのだろう。少しずつ喧騒も収まっていき、この場の空気に適応していっている。二人も周りに続いて門をくぐった。
×××××××××
「ここは…?」
門をくぐったと同時にどこかに飛ばされた。周りを見ると闘技場のような場所だ。さっき門の前にいた人たちも集まっているが、先より人数が減っている。
「あ、ソータさん!同じ場所にテレポートして来れたんですね。なんかちょっと安心しました」
「あぁ。なんか人数減ってる気がするけど、これは別の場所にテレポートさせられてる人もいるのか?」
「多分そうだと思います。それに魔法の操作権は向こう側の絶対領域になっていました。なのでソータさんと同じ場所に来れたことはとても幸運なことです」
「そうか。俺も君も運が良かったな」
「はい。でもこれから一体何をするんでしょうかね」
それもそうだ。いきなり闘技場のような場所に飛ばして殺し合いでもさせるつもりなのだろうか。
「やぁやぁみんな元気かな?さっきも聞いたけど。そして無事に全員テレポート出来て良かった。まずは入学おめでとう。ここにきた人は今から本気で魔法使いを目指してもらう。手始めにまずは一人一体専用の精霊を授ける。そいつらは君たちの適正魔法の種類と使い方を教えてくれる。まぁ分からないことがあれば基本は精霊に聞けばなんでもわかる。君たちのことを君たち以上に知っているからね」
先生がそう言うと、突如一人一人の目の前に白く光るモノが現れた。
「これが精霊か?」
フレアの方を見ると、フレアの前にも同じように光るモノが浮いていた。
「そうだぜ。俺は精霊。まぁ基本ついた人間の精神の物質体に近いがな」
突然目の前の精霊が喋り出した。教えてくれるとは直接の言葉で教えてくれると言う意味だったのか。
「はっ。それ以外にどんな伝え方があんだよ」
「?お前、俺の心が読めるのか?」
「言っただろ。俺はお前の精神の具現化。お前の思考は基本リンクしてるぜ」
「接続式か?切って問題ないなら今すぐ切ってやるが」
「ははっ。お前面白いな。一応自立型だから切断は可能だが、お前の指示も通らなくなるぜ。接続切断の指示しか通らない」
「面倒だな。まぁいい。それで俺の魔法の種類と使い方は?」
「第二魔法の…「別離世界」?だな」
「何故お前が不安そうなんだ?」