二話
「よし。全部持ったな」
荷物を持ち、教会の扉を開けた。
荷物といっても学校には制服があるらしく、基本は私物だけだ。今年の教会からの入学生は俺だけらしい。そもそも転生者の俺に魔法が使えるのかどうかもわからない。もしも魔法が使えなければ、俺はどうなってしまうのだろうか。
そんな不安を内心抱いていたその時だった。
「やぁやぁ。君が教会の入学者クンだね?僕は君を迎えに来た『魔法使い』さ」
目の前、いや空から男の人間が下りてきた。
「?」
「誰だよ。って顔してるね。君顔に思ってることが出やすいタイプだね」
一発で見抜かれた。いや、誰でも初めて空に浮いている人間を目にすれば困惑するはずだ。
そも、何故俺のところに魔法使いが飛んでやってくるのか。俺は教会に歩いて王都の近くにある学校に迎え。と言われていた。聞き違いではない。確かに昨日そう言われたことを覚えている。
「教会ってゴミだよね~。僕教会嫌いなんだよ。正しい歴史と魔法使いを見てきた僕から言わせてもらえば、教会なんて嘘ばかりの虚言集団だ。」
「誰かは存じませんが、教会を侮辱すればただでは済まないと思いますよ」
そうだ。俺だって本当はそう思っていたしクソみたいな場所だと思う。だが、それを言えば処刑されるだろう。教会で教会を侮辱する発言をする人間にはどういう処分が下されるか厳しく教えられていたせいか、そこに関してはよく知っている。
「あはは。そんなにかしこまらなくてもいいよ。それに君も晴れて学生の身だ。もう教会に囚われることもない」
「それは、どういう?」
「そのままの意味でとらえてもらって構わないよ。もう何を言おうが、君たちに何か起きれば学校側があらゆる手を尽くして守り抜く。まぁ、この僕が目の前にいる時点で君に危害を加える者なんていないだろうけど」
いまいち状況が把握できない。いや、この人の目的が把握できない。何故自分が教会より上の立場だと断定して物事を進めているのか。
「ん~。君は一回完全に教会から解放したほうがよさそうだ。夢ある者に幼いころから思想を吹き込むなんて、とても不愉快だ。君気づいてるかい?君の言動には教会が最も強い存在であると思い込んでいる節がある。」
「そんな意識は...な..」
「いやあるんだよ」
言葉を遮られた。
「君に魔法を見せてあげよう。」
そういって男は俺に右手をかざし、何か喋りだした。
「記憶操作魔法『メモリーシフト』」
瞬間、俺の脳内が一気に軽くなった。
「うっわ。マジでクソだな虚言集団。こんだけ脳にストレス抱えさせるとか。天才かよ」
「何をしたんですか?一気に頭が楽になったというか」
思わず聞いてしまった。
「君の脳内から、いや記憶からストレスになるような教会の無駄な情報を抜き取ったんだよ。だから今、君の脳内は軽くなったように感じた」
「これが..魔法ですか?」
「そうだとも。これから君が学び、身に着けるものさ。少し違うけど。自己紹介が遅れたね。僕は君の担任、第二位魔法使い『ゼレス・ヘルエス』。気軽にゼレスでいいよ」
「担任だったらゼレス先生..か。それで、結局ここへは何しに来たんだ?」
「邪魔潰しと自己紹介と、転送かな」
「転送?」
「そう。君、このちっさい町から学校まで歩いていこうとしてるでしょ。途中で死ぬよ?だからここから一瞬で学校までテレポートで飛ばしてあげようと思ってね」
そんなに遠かったのか。地図だと近く見えるが、縮尺があっていないのか。それとも、教会を出た俺を始末しようとしていたのか。考えるのも無駄だろう。
「僕一人なら飛んでこれるし、帰れるけど君がいればそれはできない。まぁできるけどテレポートのほうが楽だからね。それじゃ、いきなりだけど今からテレポートしてもらうよ」
「向こうについたら..」
「向こうで説明してもらえる。んじゃ。僕はまだ用があるんでまた後で。空間操作魔法『テレポーテーション』」
いきなり飛ばされた。
××××××××
「ん...ん?んー」
んしか言えていない。展開の速さが尋常ではない。魔法使いとは全てあんな感じなのだろうか。そして目の前にあるのが恐らく魔法学校だろう。移動した瞬間に眼前にとてつもなく大きい屋敷のような建物が現れた。俺の周りにも複数名、生徒のような人たちがいる。すると、
「あれ?もしかして貴方も先生に連れてこられた方ですか?」