一話
シスターの掛け声が部屋に響き渡る。
「この世のあらゆる事象の結果は、神によって定められているのです。さぁ。神に祈りを」
「「神に祈りを」」
「…俺はここで何をしてるんだ」
小声で我に帰ったように自問自答してしまった。
俺は前世の『日本』での記憶を継承したまま転生し、教会に預けられていた子供として16年間を過ごした。この異世界には神を信仰している宗教があり、俺がいる教会もその類の場所だった。
そして、この異世界には前世と大きく違うものがあった。
この世界には、『魔法』が存在している。
男女どちらも16歳になると『魔法使い』になる道が開かれる。この世界では肉体に魔力が巡っている。
16歳になると、全ての人に魔法学校への入学証が届く。実際俺にも教会を通して届いている。魔法学校は寮制のため、元々宗教系に興味のない俺からしたら最高の手紙だ。協会ではこちらの世界の事情や読み書きなど、かなり詳しく学ぶことができた。
この世界は遥か昔、魔王に支配されていたらしい。
それを一人の魔女が封印し、世界に平和がもたらされた。そこからが魔法の始まりらしい。原初の魔女によって、その魔法が代々受け継がれ、その祖先が魔法学校を設立し、さらに魔法が世界に広がった。俺が転生した頃には魔法の使用は日常茶飯事となり魔法が当たり前の世界となっていた。
だが魔法を悪用する者も現れ、今現在この世界の平和は少しずつ壊れ始めている。だが逆に言えば平和を保つためにも魔法を学ぶ人間が増えている。
俺にはそんな大層な理由もないが、教会から離れるチャンスはもうここしかないと思い入学手続きを行った。だが、
「俺って、魔王に転生する道を選んだはずだよな..今のところただただ平和な監獄生活みたいなものを送ってきただけなんだが」
教会で生温い生活を送っている中で、前世より穏やかな性格になった気がする。絶望から解放されたおかげだろうか。
正直16年平和に過ごして、何もかもどうでもよくなってしまった。また前世と同じように自分の意思も持てずに腐ったように死んでいくのか。それだけは許せない。
そうならないように、もう一度学校生活を正しく送れるだろうか。
「自分の意思で、自分の判断で生きていけたらなぁ」
折角二度目の人生だ。前世とは違った生き方をしてみてもいいかもしれない。
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