転生
俺は、いつも諦めてばかりだ。
いつも諦めて後悔する。今日もまた、一つ諦めた。
まだ高校一年で諦めてばかりの人生に、文句を言いたくなる社会人など山ほどいるだろう。
だが俺は知っている。諦めるのは一番優しい奴で、その優しさは誰にも理解されないことを。
事が終わった後に何か言われて、僕が、私が、「諦めてやったのに。」といっても諦めたのが悪いと言われる。
ならその「優しさ」とは一体何なのか。他人のための行為は「優しさ」ではないのか。
愚痴のように皮肉が零れる。信頼も、関係も、事実も、虚言も、全てが手のひらから零れていく。
この世界はまるで─────『地獄』だ。
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「貴方は生き還りたい...?」
「俺は、死ねたのか?」
「...はい」
そうか死ねたのか。
「俺は、もう生きるのは疲れた。」
「そうですか。ですが今、あなたには二つの選択肢があります。」
「それは、楽なものか?」
「いいえ。どちらも楽なものではありません。一つはこのまま現世に転生し、人生を一から始める。もう一つは...魔王となる。」
転生か魔王か...
「...魔王?」
「はい。貴方は前世に憎悪しかなかった。何もなくただただ不幸に見舞われ、全てを失った。ならば次は、次くらいは全ての憎悪を世界に向ける力があってもいいでしょう」
それは、本当にいいのだろうか。今の俺には全く想像できない未来だ。生きていた頃は確かに何もなかった。いや、何もかもを失った。恐らくそのほうが正しい。
「魔王か...それは死ぬのか?」
「それは貴方次第としか私には言えません」
「俺次第、か。」
「どちらを選びますか?」
ここが恐らく俺の魂の分岐点なのだろう。この選択が今後の新しい人生に影響してくる。世界の破壊か、一から始める人生か。正しいほうなんて分からない。今の俺にはもう何一つとして信じる物はなかった。
だが、このまま新しく人生を始めて本当に何かが変わるだろうか。恐らく記憶はなくなるだろう。しかしまた俺のような人生を歩むものが生まれてしまうとしたら。そんなことは許せない。俺が断じて許さない。そもそも俺はこの絶望を抱えたまま転生するのか。そんな地獄のようなことがあってたまるものか。
「なら俺は...全てを壊してやる」
「分かりました。では、あなたを、『宵倉颯太様』を魔王へと導きましょう。」
「ありがとう。今まで出会った人の中で、あなたの声が一番優しかったよ。その優しさは過信しすぎないほうがいい」
「警告ありがとうございます。心にとめておきましょう。」
ここから始まるのか。俺の呪いの物語が。
だが、それもいいかもしてない。
果たして何か変わるだろうか。
俺の心は、魂に取り付いた呪いは祓われるだろうか。
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