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夢現  作者: 西山 遊
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エレベーター

 友人と3人で市内へ買い物に出かけた時のことである。


 目的は雑居ビル7階のとある店で、今では友人と3人で買い物となると必ず顔を出す場所になっている。初めてビルを目にした時、こいつらよく入ろうと思ったな、と驚いたほどだ。

 中もお世辞にも綺麗とは言えず、何度も足を運んでいるとはいえ、さすがにひとりでは少し気が引けてしまう。そのせいで、入っているスナックやマッサージなどの店舗は、もしや如何(いかが)わしいやつなのでは、と勝手に想像が膨らんでしまうのも仕方のない話であった。


 その日、いつものようにいくつか店を回り、ビル7階へ向かうためにエレベーターに乗り込んだ。私達が入るとすぐにもうひとり男性が入ってきたので、行き先を尋ねると同じく7階と言った。

 7階ボタンと閉ボタンを押してエレベーターが動くのを待ちながら室内を見渡した。6人ほどで満員になりそうな狭さに加え、暗い照明、壁や床には物を擦ったのだろう傷や染みがいくつもあった。

 しばらくして到着のベルが室内に響き扉が開いた。ずいぶん早いなと顔を上げると、目の前は暗闇に包まれており、私は思わず「え…」と声を漏らしてしまった。天井から何かがぶら下がっているように見え、一瞬肝を冷やしたが、塞がれた窓から差し込む小さな光に照らされたそれは配線だと分かり一安心。すぐに閉ボタンを押し7階を目指した。どうやら壁に寄りかかった時にボタンを押してしまったようだった。


 再び到着のベルで顔を上げた。扉の先には明るい廊下があり、曲がると店の入口近くで店員が客と談笑していた。私はすっかり安心して軽く深呼吸しながら友人と店内に入っていった。

 ―もしかしたら、死んだ時はあんな風に目の前が暗闇に包まれるのかな

 ボタンの押し間違い、小さな選択の間違いで目の前が光か闇に分かれてしまうんだろうなぁ、と考えた1日であった。


 後日、このビルを調べてみると案内板の写真が見つかった。案内板には店舗の名前が連なるなかに空白がひとつ、あの日見た暗闇の階はどうやら4階であることが分かった。


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