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RAINTOWN マイア編  作者: きゅきゅ
35/37

36日目 本、本、本!

「たっだいまーーー!!!」


「「「おかえり!!!」」」


 皆が出迎えて、抱きしめてくれる!うれしい!!生き返ってよかった!!涙出てくる!!


 他の牢の子たちも、檻の向こうから口々におかえりを言ってくれた!ウェンディが、お祝いの曲を演奏してくれた!うれしいなぁ!


「髪の毛、だいぶ伸びたね!」


 ターシャが頭なでなでしてくれる。そう!もうけっこう、元のショートカットに近くなったのだ!フェイさんのおかげ!


「ベリーショートも似合ってたけどな!」


「…あの触り心地は病みつきだった…けどいつものマイアが落ち着く…」


 皆に頭をぐしゃぐしゃにされた。


「ちょっと!せっかくブラシかけてきたのにー!」


 ああ、皆に囲まれて、幸せだなぁ!


 皆お見舞いに来てくれてたけど、ここに帰ってくるのは、また違ったうれしさがあるね。


「ああ…やっと帰って来られたマイホーム、愛しのマイ牢屋!」


 何この、帰ってきた感。我ながらおかしすぎて笑っちゃう。


「あんたね、牢屋に愛着持ってどうすんのさ…」


 シーラが涙を拭いながら苦笑いする。


「皆がいるから、愛着が湧くのかな!」


 私が言うと、「まーた小っ恥ずかしいこと言ってら…」と呆れられた。


「さあ、こうしちゃいられない!10日のブランクを埋めなくっちゃ!トゲタローがステータス返してくれたけど、これでやーっとフリダシに戻ったって感じだからね!」


 私はこの3日間、いかに早く挽回するか、そればかりを考えていたのだ!!


「マ、マイアちゃん、そんなに焦らないで…無理せずゆっくり頑張ろ?そんなに張り切ったら、私の方が置いていかれちゃいそうだよ?」


 ターシャが必死になだめてくれる。


「ふっふっふっ!ターシャ!置いていかれたくないでしょう?一緒に早く出所したいでしょう?」


「え、ええ?どうしたの?マイアちゃん…」


「私には、秘密兵器があるのだ!ジャジャーーン!!」


 私が肩からかけていたバッグから取り出したモノに、皆がギョッとしてのけぞる。


「名作文学100巻セット〜!!」


「「「はああああ!?」」」


 本、本、本の山!!!


「ふぇぇぇ!!何この本の山〜!?いやぁぁぁ」


「うわぁ!あたしに本を近づけんな!」


「拒否反応が出る」


 皆して後ずさるんだから〜笑っちゃう。


「てゆーか、そのバッグにどーやってこんな大量の本が入ってたんだよ!?」


 シーラが私の持ってた肩掛けバッグを指差す。


「あ、これ?フェイさんが貸してくれたんだぁ!マジックバッグ!本も全部フェイさんに借りたんだから、粗末にしちゃダメだよ」


 私がベッドの上でヒマしてたから、小説を貸してくれたんだよね。私だって最初は活字に拒否反応出たけど…。フェイさんがあまりにも面白さを力説するもんだから、頑張って読んだら、すっごく面白かったんだ!フェイさん、ちゃんと、私に読めるレベルの簡単さで、特別面白いのを選んでくれたみたい。ええ人や…!


「あやつ、本の虫だったか」


 テレサ…仇みたいな目で本を睨む。本好きそうなのに全然好きじゃないらしい。


「な、何で本なんて…!?ステータスアップとどう関係あるの!?」


 ターシャも本に怯えてる。好きそうなのに!


「フッフッフ〜!聞いて驚け!なんと、小説を読むと、知能と魔力系ステータスが軒並みアップするらしいのです!」


「「「はああ???」」」


 いいね、その反応!


「フェイさんがね、小説が好きで、小説ばっかり読んでたら、いつの間にか知能と魔力系ステータスが大幅アップしてたんだって!」


 シーラがじとーっと睨んでくる。


「何だそれ…うっさんくせぇ…妙な洗脳されやがったな…」


 フェイさんは洗脳なんかしないよ!ただ小説のこととなると熱が入るだけで…。嘘なんかつく人じゃないもん!


「知能はわかるが、なぜ魔力がアップする?」


 テレサも胡散臭げに問い詰めてくる。


「フェイさんが言うには、きっと、想像力と感性が豊かになることが、魔力関連に影響するんじゃないかって」


 ターシャが首を傾げる。


「想像力は…魔法をイメージできるから?でも…感性?が…どうして魔力に?」


「感情が魔力を強めんのと一緒ってことか?」


「シーラ、冴えてる〜!」


 実際に確かめられたわけじゃないけど、フェイさんはなんとなくそう思ってた所に、私たちが、どの感情も魔力を強めるんじゃないかって言い出したのを聞いて、きっとそうじゃないかって。


「むむむ…そうだったとしても…本は嫌だ…」


 テレサったら。自分だって計算ドリル持たされて来たくせに…。


「でも小説だよ?読んでみれば面白いよ?計算ドリルなんかよりずーっといいと思うけどなぁ〜?」


 テレサ…ぐぐぐ…と洗脳を耐え抜く。いや洗脳じゃないけど!


「もし魔力が上がらなくても、楽しく読んで、読解力、推理力、想像力、思考力が鍛えられちゃうんだよ!何このお得感!」


 ターシャがちょっと傾いてきてる気がするぞ!


「知能が上がれば魔術書が読める!魔術書が読めたら、強くなれる!」


 シーラの目が獲物を狙う猫のようになった!


「ちょうどここに今!オススメの3冊が!笑いあり、涙あり、剣と魔法のわくわくファンタジー!」


 3人の目の色が変わる!


「わーった、わーった!読むよ!読めばいーんだろ!あたしに今一番足りないのは、知能だからな!」


「ちょ、ちょっとだけなら…読んでみようかな…時間も余ってることだし…」


「そこまで言うなら仕方ない…読んでやってもいい…」


 3人同時に釣れたーーー!!読書仲間ゲットだぜ!!



◇◇◇◇◇



 コクリ…コクリ…


「だーーーーっ眠い!!ターシャ、あたしに水ぶっかけろ!!」


「ふ、ふぇ!?水!?火事!?」


 シーラの突然の大声に、ターシャがビクッとして寝ぼけてる。


「ちょ、ちょっと、フェイさんの本が濡れちゃうじゃん!水はダメだよ」


 かく言う私も舟をこいでた…ヨダレが…危ない危ない。


「はあ…面白そーなんだけどさ…読みたいんだけどさ…活字慣れしてねーから、どうしても疲れて眠くなっちまう…」


 うん…わかるよ…そうなんだよね…おバカはツラいよ…。


「寝てないのテレサだけじゃん………って、テレサ!?目ぇ開けたまま寝てるぅ!!」


 怖いからヤメテェェェッ!!


「む…バレたか…」


 シーラが本をバタンと閉じて、肩を回す。


「うあー、肩こったー!体動かしてーし!筋トレするわ!」


 腕立て伏せを始めてしまった…うーん、私もしたい…!


 と思ったら、シーラは突然何か閃いて、飛び上がった!


「なあ!誰か一人が声に出して読めよ!そしたら他の3人は筋トレとか好きなことできんじゃん!」


 おお!ナイスアイデア!!


「わあ、それは嬉しいな!」


「乗った」


 いつの間にかテレサも起きてた…。


「じゃ、もちろん読むのは、言い出しっぺのマイアだよな?」


 私が読むのか!!!くっ…!!


「わ、わかったよ…。読むのヘタだけど、文句言わないでね?明日は誰か交代してね?」


 ということで、私が小説を音読し、3人は各々好きなことをすることになった。うう…なんか私だけ損してない?


 でも、一人黙々と読んでた時は眠くて仕方なかったのに、皆に聞いてもらってると思うと、眠くならなかった!結果的には、私も得だよね!


 それに、白熱するシーンを読んでたら、皆が手を止めて聞き入ってくれるんだよね。そういうの、めっちゃ嬉しい。


 時々ツッコミ入れたり、感想呟いたりしてくれるし!


「剣豪かぁ…いいな…あたしも剣で戦ってみてぇ」


「その料理おいしそぉ…聞いてるだけでヨダレ出ちゃう…」


「復讐だ!仇を取るんだヒルダガルデ!」


 ちょっと困ったこともある。


「さじを投げるって、どういうイミ?」


「さじ…スプーン?…美味しくないってことかな?」


 私たちはおバカなので、ちょくちょく知らない言葉があって、しかも誰に聞いてもわからないのです…。




◇◇◇◇◇



 体が重いけど、楽しみにしてた鍛錬の時間が来た!


 鬼コーチに呼びつけられて「戦えるんだろうな?無様な戦いをしたら許さんぞ」と喝を入れられた。

 なんかちょっと覇気が足りない。コーチが休みの日に看守たちが図に乗ったせいで、私の事件が起きたからかな?


 看守たちはちょっとは怒られたんだろうか?シーラに雷撃させた看守なんて、許せん!

 でも看守が上司に怒られるシーンなんて、絶対囚人の前では見せてくれないからなぁ。そういう情報はほとんどわからない。



 久しぶりの鍛錬場だ!ちょっと緊張する。


 ブザーが鳴る。


 痛っ!頭痛が…。耳鳴りもする…。大きい音が良くないのかな…。


 すぐに落ち着いた。さ、行かなきゃ!


 もちろん、私の目的は一つ。


(トゲタロー!トゲタロー師匠ー!)


 …返事がない。


 私はトゲタローを探して歩いた。


(トゲタロー?聞こえないのー?)


 …返事がない。


 …まさか。魔獣会話の魔法が使えなくなってるとか…!?


 うそ!?いやだ!そんなの!!


「トゲタロー!トゲタロー!!マイアだよ!!生き返ったよぉ!!」


 私はなりふりかまわず叫んだ。


 …返事がない!!そんなぁー!!!


 とにかくトゲタローを探し出すんだ!


 私は重い体にムチ打って、走り回った。


「!!!」


 あの背中は…!!


 魔獣の背中に違いなんてないように見えるけど、あれは、あれは、間違いなく、トゲタロー!!!


「トゲタロォー!!!聞こえないの!?マイアだよ!!生き返ったよ!!トゲタローのおかげだよ!!」


 トゲタローは、返事をしなかった。背中を向けたまま、ただその場で飛んでいた。


 私はへたり込んで、むせび泣いた。


「う、うわああああ!トゲタロォォォ!もう話せないの!?そんなのいやだよぉぉぉ!寂しいよぉぉぉ!!」





『…うるせぇな。聞こえてるよ』


「!!?」


 トゲタローが、振り向いた!


『ピイピイ泣いてんじゃねぇ!まったく相変わらずしょうがねぇヤツ!』


「トゲタロー!…わあああん…!よかったぁぁぁ…」


『泣くんじゃねぇって言ってんだろぉが!ホラ!周りに変な目で見られてっぞ!』


「そんなの…かまわないよぉ。トゲタローとまた話せたんだから…。何で無視したの!?」


 トゲタローはそっぽを向いた。


『別に。お前の魔法が弱くなったんじゃねえか?』


「そうなの?でも私はトゲタローのおかげでステータス戻ったのに…。まさか…トゲタローのステータスがダウンしたから!?それで聞こえにくくなったの!?」


 トゲタローは、ぷんすか怒り出した。


『ああああもうっ!!アホっ!!そんなんじやねえ!嘘だよ、ちゃんと聞こえてた!わざと無視してたんだよ!そうしねえと、オメーまたオレにステータス寄越すかもしんねぇだろ!?』


 私はポカンとしてしまった。


「…トゲタロー…私の心配してくれてたの…?」


 トゲタローは慌ててまたそっぽを向く。


『そそそそんなんじゃねぇっ!!誰がオメーの心配なんか!!ただ余計なステータスなんかオレには要らねぇっつー話!だから返したんだし、もう要らねえの!オレ様は強えんだからよ』


「そっか…ありがとう。ありがとう、トゲタロー。あんたのおかげで、生き返れたよ。もうステータス譲渡なんて、バカなこと、絶対しないよ。頑張って強くなる。修行、してくれるよね?」


『おう、当たりめーだ。バカ弟子!何日修行サボってたと思ってる!さっさと始めるゾ!』


 トゲタローは、戦闘態勢になる。私は炎を拳にまとって構えた。うん、ちゃんとできる!久しぶりの、炎パンチ!


 体の動きは鈍いけど、頑張るぞ!パンチパンチパンチ!


 あれ、トゲタロー…


「ねえ、〈キュア〉は?使わないの?…まさか…!ステータスダウンで、使えなくなっちゃったの!?」


『は?使えるし。〈キュア〉!』


 キラキラッ!焦げ跡がキレイに治った!ほっ。


『オメーのへなちょこパンチにいちいちキュアなんか使わねーよ』


「な、なんだ…おどかさないでよ…でもステータスダウンしたのに、何で使えるの?」


『あん?カッカッカ!バーカ!オレ様は、オメーが成長するよりさらに成長してたんだよ!今さらステータスダウンなんかどうってことないわ!』


「え、えええええ!?トゲタロー、成長してんの!?」


『当ったりめーだろ!オメーと違ってグングンステータスアップしとったわ!他の魔獣どもよりな!ま、オレ様も師匠やってっと、自分の修行にもなるってわけだな!』


「ほえええ…。ずるい…。でも、よかったじゃん」


『だからよ、マジでオメーのステータスなんか要らねえってわけ。わかったか?バカなこと考えんじゃねーぞ!』


「そっか…そっか…そうなんだね…わかったよ」


 こんな風に皆、成長していくんだな…。私のステータス譲渡なんて、本当に意味なかったのかもしれないな…。相手はその時は急激にステータスアップするけど、時間をかけて成長しても、最終的には変わらないかもしれない…。


『ホラ!ボケッとしてねーで、修行修行!!』

 

 こうして私たちの修行が再開した。


 ハァ…ハァ…もう息が切れてきた…。


『オイオイ!まだ始めたばっかだぞぉ!?10日もサボったからぁ!!』


「し、死にかけたんだから、しょうがないじゃん…。防御型で戦おうかなぁ…」


『ああん!?これ以上、サボろーってのか!?許さんぞ!このナマケモノ!!』


 トゲタローは思いっきり突進してきた!


 ぐはぁっ!


「ゴホッ!ちょっとぉ!?病み上がりなんだから、加減してくれてもいいじゃん!?」


『甘ったれんな!強くなるって言ったばっかだろーがぁ!!あれは口先だけかぁ!?』


「うっ…」


 トゲタロー師匠のスパルタ修行が始まった。


 何度目かに投げ飛ばされた時、トゲタローが言った。


『ん?オメー、骨、折れにくくなってねーか?』


 あれ?そういえば…。


「ステータスアップのおかげかな!?やったー!」


『んじゃ、思う存分、修行できるな!』


 …………は?


 私はいつも以上にボコボコにされた。病み上がりなのにぃ!これが師匠の愛情表現ですか?



◇◇◇◇◇



 …ピコン…ピコン…ピコン…


 …あ、コールだ…なんだか久しぶりな気がするな…リハビリ期間中は来てくれなかったし…


「…久しぶり…この前はありがとう…」


 コールはこっちを見もしないで言う。


「お前に礼を言われる筋合いは無い。自分の仕事をしたまでだ。礼をしたいなら大怪我をするのをやめろ」


 そして鬼の形相で、骨折してる私の腕を持ち上げた。いたたっ!


「18ヶ所も骨折しているぞ!?なぜこうなる!?これ以上私の仕事を増やすのはやめろ!私はお前を骨折させるために治療しているのか?」


 うう…私だって好きで骨折してるわけじゃないよぉ。トゲタローめ。でも私の方から頑張るって言ったんだ…。


「ごめんなさい…修行頑張らなきゃと思って…」


 コールは呆れてため息をついて『お手挙げ』のポーズをした。


「ところで、聞きたいことがあるんだ…」


「何だ」


「『さじを投げる』って、どういうイミ?」


 コールが急に冷たい目で見下ろしてくる。


「いや、知能アップのために小説読んでたんだけどさ、意味わかんない言葉多くて…皆してバカだから誰もわかんないんだよね」


 コールが遠い目をする。


「…ちょうど今、私がお前に対して使いたい言葉だ」



◇◇◇◇◇



「さ…さ…さ…さじを投げる…あった!『医者が、治療法がないと見放すこと。また、解決策がないと、あきらめること』だって」


「あはは!コールにピッタリな言葉を質問しちゃった!」


 私たちは、辞書を手に入れた!


 今日のターシャの治療の担当がフェイさんで、同じ質問したら、辞書を貸してくれたんだって!


「辞書なんて大っキライだったけどさ、やっぱないと困るんだなー!」


 これで百人力!私たちはすいすいと小説を読めるようになった!


 鍛錬の後は疲れてあまりやれることもないので、時間持て余しがちだったんだ!これで、楽しくて、お勉強になって、ステータスもアップする、最高の時間になった!


「…こうして人々は、幸せに暮らしましたとさ。おしまい!」


 皆が口々に感想を言ってくれる。


「うおー!剣豪ベアトリーチェ、かっこよかったなー!あたしも剣豪になろっかな?」


「私はやっぱり治癒師のマリアに憧れちゃうなぁ!」


「皆、何を言っている…この物語の醍醐味は、何と言ってもヒルダガルデが復讐を成し遂げる所!」


 皆、楽しんでくれたみたいで結構結構。

 え?私?号泣してます。


「マイア、泣きすぎ…そんな泣くほどのもんでもねーだろ…」


「だってぇぇ…4人の仲間の永遠の友情が…!いい話だったねぇぇ」


 私、蘇生後にバカみたいに涙もろくなってる気がするんですけど…。


 テレサが私を見て冷めた口調で言った。


「人が号泣しているのを見ると途端に醒める…」


 ひどい。気持ちはわかるけど…。


「なあ、次は何読む?あたしは剣豪か、ハンターの話がいいな!」


「私は治癒師の話をもっと聞きたいなぁ」


「復讐劇か、ミステリー」


 皆、好き勝手言っちゃって!


「あのねぇ、次読むのは私じゃないよ?じゃんけんして決めてね!」


 皆はアアッと叫んで、恐い顔して気合いの入ったじゃんけんを始めた。


 ターシャが負けて、次はターシャが読むことになった。ガックリ項垂れてる…。


「ターシャ、自分の読みたい本選んでいいんだよ!やったじゃん!」


「あ、そっか…!それはうれしいなぁ!じゃあ、治癒師のお話、あるかな?」


 ターシャはあらすじを見て、一冊の本を選んだ。『ブラック・ジェーン』だって。


「『スゴ腕の治癒師ジェーンが数々の難病を治癒し、人々の命を救う!〈私、失敗しませんわよ〉』だって!面白そう!これにするね!」


 ターシャ以外は治癒師にそんなに興味がなかったんだけど、物語を聞いていくうちにどんどんのめり込んでいった!すっごく面白いんだ!


 このブラック・ジェーンがまた、かっこいいんだな!孤高の天才って感じ!高額な治療費請求する嫌なヤツなんだけど、本当はすっごくいい人なんだよね!


 ジェーンが原因不明の難病をズバズバッと解決して治癒して去って行くのがサイコー!皆どハマリしちゃった!


 ただ、私たちバカだから、身体の詳しいこととか全然わかんなくて、知らない単語もいっぱい出てくる。さらに辞書を引いても説明がよくわかんない!それでも面白いんだから、さすがは名作だけど。


 ターシャが単語をいっぱいメモして、今度治癒師の誰かに聞こうって。一応皆にもメモを渡して、誰かに聞いてねって…。


 いや、私は絶対明日もコールだから…教えてくれるわけないじゃん。教えてもらえたとしても、絶対私には理解できないし!うぐ…あの冷たい目で私をバカにする顔がありありと目に浮かぶよ…。



第35話お読みいただきありがとうございます。私は手塚治虫先生のブラック・ジャックが大好きです。小学校の図書室に置いてあったんですよね。子供を夢中にさせるなんてすごい。図書室に置いた人えらい。

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