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RAINTOWN マイア編  作者: きゅきゅ
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18日目 魔の日曜日

 さあ、今日から鬼コーチの指導を実践して行こうじゃないか!ステータス、ガンガン上げていこうぜ!


 まず、朝は筋トレ、ストレッチ、マッサージ。皆にも教えて、4人仲良くやるよ。


「いだだだだぁっ」


 シーラは体が硬くて、背中押すとギャーギャー言う。でも「もっとやれ」とか言うから押しちゃうよ。


 めいそーも日課。魔力の流れを感じてみたくて。本当にできるかわかんないけど、やりたくなる。


「#$%^&@…」


 なんかテレサが呪文みたいなの唱え始めて、頭空っぽになってきた。何これ、ヤバくない?まいっか。なんか疲れが取れた気がする…。


 めいそーが終わると、なんとテレサが計算ドリルを持ち出してきた!!け、計算ドリルなんて、見るのも嫌だ!シーラも飛び退って悲鳴を上げる。


 テレサが腹黒く微笑む。目が笑ってなくて怖〜い!


「私は魔術書を読むために知能を上げなければならない。しかし君たちは私よりさらに知能が低いはず。私だけがドリルをやらされるなんて、不公平だと思わないかな?」


 早口でまくし立てられ、皆で計算ドリルをすることに。うあああ!頭をかきむしる。テレサまで、頭をかきむしってる!こんなテレサは初めて見た、貴重だなぁ。



◇◇◇◇◇



 もうすぐ、鍛錬の時間。ウォームアップしよう。それはいいけど、ちょっとため息でちゃう。

 私は炎パンチしかやっちゃいけないし、ウェンディの曲は聞けないし。つまんないの。


 シーラもため息ついてる。


「あーあ!あたしは今日から、氷結パンチだよ。魔獣の血を凍らせるなんて、想像もできねぇ!せっかく雷撃パンチできるようになったのに!」


 シーラは雷撃を禁止されちゃったんだ。魔獣の血を凍らせるのは、難しいけどやれって言われたって。近接戦闘なのに初めてやる攻撃方法なんて!さすが鬼コーチ…。


 遠くでウェンディも項垂れてため息ついてる。なんと、〈悪魔の生け贄〉以外の曲を禁止されちゃったんだ!あんな恐ろしい曲しか演奏できないなんて!!朝食の時に話したんだけど、胃に穴が開きそうって、しょんぼりしながらノロノロご飯食べてた。大丈夫かな?

 しかも、一日置きに風魔法戦闘もやらなきゃいけないんだって。やっぱ鬼コーチ、身を守れなきゃダメだって言ったんだろうなぁ。


 私も一緒に戦ってあげたいけど、それじゃウェンディの成長にならないし、何より私は近接戦闘だから相性が良くないんだ。風魔法で竜巻起こされたら、私も一緒に巻き込まれちゃう!

 あーあ、ウェンディの演奏も聞けないし、一緒に戦えないなんて。つまんないなぁ。


 さ、戦闘が始まる。


(トゲタロー師匠ー!修業お願いします!!)


 今日はちょっと下手に出ちゃうよ。


 ブーーーーンッ!


『おうおう、殊勝な心がけだな、バカ弟子よ!さっそく修業開始だ!』


 私はいきなり近接戦闘に持ち込んで、炎パンチを繰り出した。パンチ、回避、パンチ、回避、パンチ…。


『んおおい!!ずっとパンチしかしてねぇじゃんよ!!バカの一つ覚えみたいに!!』


(実は…鬼コーチに、炎パンチをひたすら鍛えろって言われちゃったんだよね…)


『つっまんねぇぇぇ!!』


(でも早く強くなりたいから、私はその通りにしたいんだ、付き合ってよ)


『しょうがねぇなぁぁあ!?んーなら、近接戦闘の特訓だ!!容赦しねぇぞぉぉ!』


 うげっ。なんかスイッチ入った。


『おらおらおら!遅ぇぞ!』


『そこ!脇が甘い!』


『もっと重心移動しろ!』


 完全に師匠面だよぉ…。まあ仕方ない…実際トゲタローは強いんだから。こんな風に言葉で教えてもらえるなんて、ありがたいよね。早くステータスを挽回しないと…。


 しばらくして私がグダグダになってきた頃、トゲタローも飽きてきちゃった。


『はぁーもう!オメーは体力ねぇなー。おい、音楽家は?なんか曲かけてもらおーぜ』


(あー…この前私、感情暴走したらしくて、魔力暴走の危険があるって、音楽禁止されちゃった)


『はああああああ!?何やってんだオメー!音楽なしじゃ、オレ様は一体何を楽しみに鍛錬に来なきゃいけねーんだよぉぉ!?』


 いや元々あんた、音楽なしでやってたじゃん…。すっかりファンだな。もう…中毒かよ!


『あ、緑、見つけた!聞きに行こーっと!』


(えっ!?ちょっと!何修業ほっぽり出してんのさ!?)


 行っちゃったよ…まったくもう!


 ウェンディが何か演奏してるのが見える。あれ?〈悪魔の生け贄〉を演奏してるはずなのに、顔が全然怖がってないぞ??もう怖くなくなったの?


 ん?聞きに行ったトゲタローも、ノリノリで楽しそう。〈悪魔の生け贄〉を聞いてる反応じゃないな。まさかウェンディ、違う曲を演奏してるの?


 その時、看守がウェンディに向かってきて、何か怒鳴った。違う曲演奏してるから怒ってるのかな。けどウェンディは、振り向きもしない。夢中で演奏してる。

 とうとう看守がキレて、ウェンディを殴った!もう!殴るほどのことでもなくない!?

 ウェンディはぽかーんとしてる。何だかよくわかってないみたい。聞こえてなかったんだな。

 『懲罰』

 ええええええええ!!??何で!?ありえないっ!!

 私は駆けつけた。看守の腕を掴む。


「やめてよっ!!何で懲罰なんかするの!?」


 看守が腕を振り払って私を殴る。


「コイツは禁止された曲を演奏したのだ!さらにあろうことか私の注意を無視したんだぞ!」


「ウェンディは演奏に夢中になっちゃっただけだよ!悪気があったわけじゃない!普通に注意すればいいでしょ!?」


 突然後ろから肩を掴まれた。


「このクソガキ。お前も懲罰を食らいたいか」


 何っ!?


『懲罰』


「ぎゃあああああっ!!」


 冗談でしょ!!??

 二人の看守が私を嘲笑いながら見下ろしてる。こいつらどうかしてる!!看守はだいたいどうかしてるけど!!


 ブーーーンッ!


 へ?


 突然、魔獣に噛みつかれて投げ飛ばされた!


 ぐはぁっ!


(ト、トゲタロー!?な、何すんのさ??)


『何だよ。懲罰が早く終わって助かったろぉ?感謝しろよな!』


(え、た、助けてくれたの?ありがと…)


『べっつに助けたわけじゃねーーし!看守が音楽止めやがったからな!腹立ったんだよ!!せっかくノリノリだったのによぉ!』


 チラッとウェンディを見ると、青ざめて震えながら演奏してる。今度こそ、〈悪魔の生け贄〉だな。


(ウェンディ、さっきは何の曲演奏してたの?)


『ありゃ元気の出る曲だな!アイツ、悪魔のイケニエに滅入って途中から変えたんだな!』


 なるほどね…。


『おら、ボケッとしてねーで、修業再開するぞっ!』


 私はもうヨロヨロだったけど、仕方なく炎パンチでの近接戦闘を続けた。


 バタン!あーもう、満身創痍!でもまだ魔力が残ってる。倒れながら炎玉を撃ち続けなきゃ…うああ…もう…げんかーい…。



◇◇◇◇◇



「お前は自重というものを知らないのか?」


 コールが面倒くさそうに、冷ややかな目で見下ろす。


「鬼コーチから直々に、近接戦闘のみで行けと指導を受けました!」


 私は敬礼して見せた。今日は右腕ギリギリ折れてなかった!トゲタローが加減したのか?

 

 コールが般若の顔で憤怒のオーラを爆発させた。


「あんのクソ野郎ォォ…仕事を増やしやがって…絶対に許さん…!!!」


 グシャァッ!!

 コールが手にしていた点滴の袋を握り潰した!!憎しみの業火に燃えている〜!!

 鬼コーチとどっちが強いんだろ?戦わせてみたい。コールは治癒師だけどさ。なんか強そうじゃん?



◇◇◇◇◇



 牢で体をマッサージしながら今日のことを皆に話した。


「あー、今日は日曜日か。鬼コーチが休みなんだよな。毎週日曜日は、ヒラの看守どもがのさばるんだよ!ほんと、いけすかねぇ!」


 シーラが壁をドンッと蹴った。


「…日曜日は悪質な嫌がらせが横行する」


 テレサも憎々しげに顔を歪めてる。


「そういうことだったんだ…。曜日感覚あんまないけど…そういえば日曜日って懲罰ばっか食らってたような…」


 この前もウェンディ助けようとして懲罰……その前は…皆に助けてもらって懲罰食らった日…?


「あたし今日、氷結パンチぜんっぜんうまくいかなくてさー。ボロッボロにされて動けなくなったから、雷撃してたわけ。そしたら看守が!雷撃禁止だろとか言って!懲罰食らわしてきたんだけどっ!?マジ意味わかんねぇっ!どーしろっつんだよなぁ!?」


 はあああああ!?


「何それ!?ひどすぎ!!ほんとに最低!!」


 私たちは怒りに任せて毛布を丸めてサンドバッグにした。巡回の看守が通りかかる。…何か?筋トレしてるだけですけど!


第29話お読みいただきありがとうございます。鬼コーチがいない日曜日はこんなんなっちゃうんですね。鬼コーチは厳しい人ですが、囚人を甚振って楽しむような性格ではありません。ヒラの看守の多くは性格が悪いです。口調が男みたいですが魔女です。

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