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RAINTOWN マイア編  作者: きゅきゅ
26/37

16日目 復讐の鬼ヒルダガルデ

 テレサが妙なポーズで座って目を閉じて何かブツブツ言っている。


「テレサ、何やってるの?」


「…瞑想」


 めいそーって何だろ?


「…身体の魔力の流れを感じている」


 魔女の身体にはいつも魔力が流れてる。血流みたいなもんかな。


「魔力の流れを感じると、何かいいことあるの?」


「…わからない。魔力生成器〈コアシード〉からの魔力の発生を感じたい」


 みぞおちにある魔力の源だ。


「それで、何かいいことあるの?」


 テレサが目を開いて私を見た。


「魔力バフ」


「な、なるほど!!」


 それは私もやりたいです!!シーラもターシャも乗っかってきた。


「おおおお、あたしもやる!」


「私も、私も!」


 皆でめいそーした。

 うーむ?魔力の流れかぁ…自分の身体に流れてるのも、コアシードも、全然感じ取れない。血流だって感じ取れるもんじゃないじゃん?


 …血ってコアシードにも通ってるのかな?


「コアシードって、血ぃ流れてるの?」


 テレサは目を閉じたまま考えている。


「…おそらく…」


 ターシャが目を開いて首を傾げた。


「じゃあ、コアシードは血液から魔力を作ってるのかな?」


「おっ?ならコアシードに血液どんどん送れば、魔力ドバドバ出たりして?」


 シーラの言葉に、皆が目を見開いた。


「「「それだ!」」」


「…皆、よくやった。コアシードに血液を送り込むのだ」


 テレサが司令官ぽく言ってニヤリと笑う。


 皆、まためいそーする。


 …………。



「どーやってコアシードに血液送んのさ?」


 …………。


 

 誰にもわからなかった…。

 しかしこの日から、めいそーが皆の日課になった。魔力を感じ取ろうとすることだけでも重要な気がして。



 あぐらをかいて手を組んでめいそーする私たちを見て、看守が気持ち悪がっていたのは知る由もない…。




◇◇◇◇◇




「新曲をたずさえて来たよぉー!聞いてくれる?」


 鍛錬の時間、ウェンディが来て言った。


「マイアさん、糸を戦いに使ってたんだねぇ?糸の曲があるから、聞いてみてほしいんだぁ」


 糸の曲?


「糸の曲なんてあるんだ?聞いてみたい!じゃあ今日は糸メインで戦おっと!」


 戦いが始まった。


(トゲタローやー!ウェンディが演奏してくれるよー!)


 ブブブブーーーーンッ!!速いって!


『おうおう、久しぶりじゃねぇか!待ちかねたぜぃ!』


「では聞いてください。いにしえの民の歌、〈いーとーまきまき〉です」


 何だそりゃ?演奏が始まった。なんだか親しみを感じる曲だな…歌詞が聞こえてくる気がする…。


 ♪いーとーまきまき いーとーまきまき ひーて ひーて とんとんとん。いーとーまきまき いーとーまきまき…


 な、何コレ!?なんかよくわかんないけど、すごく糸出したい!!無性に出したい!!


『おもしれぇー曲!なんか踊りたくなるな!前足グルグル回してぇ〜』


 トゲタローが踊ってる。ウケる。


 けどなんか私ヤバイ。頭の中がいーとーまきまきでいっぱいになるぅ!フレーズが回り続けるぅ!


「♪いーとーまきまき!いーとーまきまき!」


 うあああ!?両手の指から糸がどんどん出てきたぁ〜!


『ウハッ!オメー、糸出しすぎ!ウケる〜!!』


 ♪いーとーまきまき いーとーまきまき…


 フレーズが繰り返し繰り返し…止まらないよぉぉぉ!どうすんのこの糸!?


『おいおいバカ弟子!バカやってねーで修行しろよ!戦えよ!』


 そ、そうだよ糸で戦わなきゃ!


「食らえっ!いーとーまきまき!!」


 私は10本の糸を操り、トゲタローに襲いかかった!狙うは羽!!まきまきまきまき!!


『うおおおおっ!!こらやめろっ!!』


「♪ひーて ひーて とんとんとん!」


 巻き付けた糸をギューっと引いて結んでやる!!


『ああああ!このっ!このっ!』


 トゲタローが必死に羽をばたつかせてる。前はこれで糸切られたんだよね。


『うがああああっ!!切れねぇっ!!』


「マジ!?糸が強くなってる!!」


 ふはははは!ではやることは一つだな!


「糸よ燃えろ!凝縮炎!」


『なっ!!!やめろぉぉぉ!!!』


 ボオオオオッ!!トゲタローの羽に巻きついた糸が激しく燃えた。


『ガアアアアアッ!!あぢぃぃぃっっ!!』


 トゲタローが激しく転げ回る。ようやく鎮火してきた。羽が焦げ焦げ!かわいそ〜っ!でもそんなこと言っていられないんだ!


(一本とったぜ!私のステータス、返しやがれ!!)


 トゲタローが黙ってムクリと起き上がる。ブルブル震えだした。えっ?


『この…この…よくも…よくもっ!オレ様の自慢の羽をぉぉぉっ!!許さん!!』


 ギラッ!目が真っ赤に光る!トゲタロー様がブチ切れたぁっ!!


『〈キュア〉!地獄を見せてやるぞぉぉっ!!』


 羽が元通りに治癒。


(ちょっ!治癒できたんだからキレないでよ!それよりステータス返して!)


『うるせえええええっっっ!!!!!』


 ヤバババババ!!!


「マイアさん、〈復讐の鬼ヒルダガルデ〉、聞いてださい!」


 ウェンディが、〈復讐の鬼ヒルダガルデ〉を演奏し始めた。


 ♪ズンドゥクズンドゥク…ドドドドドドドドダーーーーーンッ!ダダダンッダンッ!


 こ、これは…腹の底から怒りが煮えたぎってくる…!!


 ヒルダガルデが、ヒルダガルデが刃物を持って復讐に燃えているーーーっ!!


 うおおおっ!仇を取るんだ!ヒルダガルデ!


 私もステータスを取り返す!取り返してやるー!!


「うおおおおっ!この恨み、晴らさでおくべきかーーーーっ!!!」


 私は炎を拳にまとった。なんと!両手に同時にできた!!すごーーっ!!やってやるーー!!


 ブチ切れトゲタローの猛攻撃!!かまうもんかっ!!回避なんぞくそくらえ!!この拳をとことん叩き込んでやる!!すでにブチ切れてるから、口の中だって遠慮してやらない!!


 こうして私とトゲタローの、はちゃめちゃな戦いが始まった…。


 いつの間にかウェンディが倒れて回収されていったけど、私たちは止まらなかった…。

 

 珍しく、トゲタローはけっこうダメージを負った。…私?…聞かないでよ…。




『あーイカした曲だったな!なんだかスカッとしたぜ!ふん、バカ弟子よ。今日はなかなかいい戦いだったぜ…』




 トゲタローは〈キュア〉で何事もなかったかのように去っていった…ずるすぎるぞ…。





◇◇◇◇◇





「ハア…ハア…ヒルダガルデ…カタキをとれぇぇ!」


「おい、さっさと目を覚ませ」


 コールが私の頬をはたく。


「ハア…ユメか…ハア…殺シテヤル…」


「お、おい。目が据わっているぞ。瞳孔が開いている…」


 コールがライトで私の目を確認する。


「カエセ…カエセ…ワタシノステータス…カエセェェ!」


 私は折れた手足をものともせず暴れた。


「おいぃっ!何してる!『拘束』!!」


 コールめ!魔術で拘束しやがった!!


「ウガアアアアッ!ハナセ!トゲタローッ!カエセーッ!!」


 コールは鎮静魔法を使った。私はまた寝ぼけて、ヒルダガルデを想いながら、ブツブツと呟き続けた。


「…何なんだコイツは…なぜこうも問題ばかり起こすんだ…」


 コールは額に手をおいて首を振り、ため息をついた。




◇◇◇◇◇




「フフフフフ…脳が異常に興奮してマスネー」


「先生…また何か妙な薬を与えたんですか」


「ちがうヨ。これはWd42333の支援魔法による感情増幅効果デスネー。Mi11948は、共感性が異常に高いので、効きすぎたネー」


「なるほど」


「これだけ興奮してると、魔力暴走起きてもおかしくないネー。ハイ、Mi11948はWd42333の支援魔法受けるの、禁止!」


第26話お読みいただきありがとうございます。糸巻きの歌のタイトルは何ていうんでしたっけね。勝手に歌ってJASRACさんに引っかからない?大丈夫?

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