表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
RAINTOWN マイア編  作者: きゅきゅ
14/37

6日目(3) トゲタローの下僕

 目覚めると、まだクルールの研究室にいた。


 うえ…気持ち悪い…吐きそう…


 クルールはデスクで機械にかじりついてる。


「フフフ…フフフフフフ…」


 ねぇ、その不気味な笑い声やめてぇぇぇ?

 

 私が起き上がるとクルールが私を見て、ニヤリと笑った。


「君はいまやトゲタローの下僕、デス!」


 …はあ?


「な、何で私が…オェ…トゲタローの…げぼ…下僕なん…ですか」


 看守がバケツをサッと出してくれた。手際がいい…この人は看守というより、ドクターの助手なのか?


「ササ、こっちに来てこれを見なサーイ」


 クルールが見せた画面は、何かわからない数字で埋め尽くされてる。

 吐き気がするよぉぉぉ!うっぷ。


「ちょっと吐きそうです…見てもわけわかんないし…」


「昨日、君のステータスの一部が減少してマシター」


 え…ステータス?体力とか魔力とか知能とか?


「減少って…あんな麻薬なんか飲んだから?」


「チガーウ!私の出す薬は極めて安心安全デス!脳内装置のデータによれば、コトが起きたのは、君がトゲタローと"会話"した時、デス」


「えっ…私のアタマが…ますますヤバくなったってこと?」


「そうとも言えマスネー」


 …マジか…。あんなおかしな幻覚のせいで、バカな頭がますますバカに…うわーん…


「魔獣bb-477、通称"トゲタロー"は、昨日、同じだけの能力が上がった、デス!」


「……………へ?」


 クルールがグラフを見せる。"マイア"のステータスを表すいくつかの棒グラフが、縮んで行く。"トゲタロー"の棒グラフが同時に伸びる。


「な、何これー!?トゲタローに、私の能力、吸い取られた!?」


「フフフッ。魔獣にそんな力はないデスけどネー?鍛錬が成り立たなくなるじゃないデスカ」


 …そりゃそうだ…じゃあ何でよ??


「君が失ったのは、魔力総量、魔法技術、知能、精神、自己治癒力、デス」


 ノォォォォッ!私…こんなに頑張ってんのに…ますます魔力減って、弱くなって、バカになっちゃったのー!?


「トゲタローは同じだけの能力を得マシタ。そのおかげで、新スキル、治癒術〈キュア〉を獲得できたのデスネー」


 ななな!私から吸い取った魔力や知能で!私だって治癒術なんて使えないのに!!トゲタローのやつ、ずるすぎるー!!



「それだけでなく、面白い変化もあったみたいデスヨー」


 クルールが、トゲタローのデータを映す。


「トゲタローの攻撃性が減少し、好奇心、友好度が上がってマス。…つまり、トゲタローとの会話は幻覚でなく、本当に、会話が成立してる可能性が高いの、デス!」


「ええっ、本当に会話してた!?そんなこと、ありえますか!?」


「フフフ、君、〈魔獣と会話する魔法〉を使ったのかもしれないデスネー」


「えええっ!?そんな魔法使えませんよ」


「私もそんな魔法聞いたことナーイ。でもラリッて、無意識下で魔法を作り出した可能性はアルネ」


 …まさかぁ。でも、それ以外に説明がつかないのか…?


「それにネ、脳内装置のデータによれば、君が"会話"してる間、一定の魔力が消費され続けてマスヨー。昨日も今日も、ネ!」


「それじゃ、私、本当にトゲタローと話して…友達になったの…?」

 

 魔獣と話す変人になってるという大問題はあるけど、友達になれたのはちょっと…嬉しいかも?


「トモダチ?フフフ。トゲタローが君をトモダチと思ってるとは限らないデスネー」


 …え、何それ。


 クルールがトゲタローの棒グラフを見せる。何か一つがグーンと伸びてる。


「トゲタローのステータスで突出して伸びたのは…リーダーシップ、デス!」


 リーダーシップ!?


「あの魔獣、バイツバグ種は群れを作りマセン。単独行動を好む種デス。どの個体もリーダーシップは0。でもトゲタローは昨日、リーダーシップが突然急上昇!君を群れの一員と認識したのデスかネー?トゲタローと君の、二人だけの群れ、デスネ。そして群れのリーダーは、君じゃなく、トゲタロー、デス!」


 クルールが笑いを噛み殺してる。


「君はトゲタローの下僕、デス!」


「おいいいいっ!!トゲタローぉぉ!!なんてやつだっ!!」


 クルールはとうとうお腹を抱えて笑いだした。


「クフ、クフフフ…非常に愉快なデータ提供ありがとデース」


「あいつめぇぇっ!友達…いやせめて…ライバルだと思ってたのに…」


 ああー…怒鳴ったらめまいと吐き気が…。へたり込んでしまった…。


「うう…私は…魔獣と話す変人で…魔獣の下僕になって…能力吸い取られた笑い者…」


 涙がボロボロこぼれるぅー…まだ後遺症が残ってるのか。


「まあまあー。そう落ち込まないで、ネ!」


 ブスッ!


 !?


 クルールが突然私の左腕に注射器を刺した!!


「いだぁぁぁっ!?な、何すんの!!」


「元気が出る栄養剤デース。ちょうど夕飯時デスし。吐き気でご飯食べられないでショー?有り難く頂きなサーイ」


 何この毒々しいオレンジ色の液体っ!!いやーーーっ!!


「変な液体を私に注射しないでぇぇっ!」


「私が開発した安心安全なモノデスヨー。ご飯食べるより、速くて元気出て、注射好きにはたまらない、一石三鳥のスグレモノ!」


 いや注射好きって何!?!?アンタがやりたいだけじゃん!!





…ピコピコ…


『ずたぼろの おちこぼれまじょが なかまにしてほしそうに こっちをみている! なかまにしますか?


 →はい

  いいえ             』


トゲタロー『ああん?つかえなそーなヤツだな!けどまあいっか、オレ様の下僕第一号にしてやろう!カカカッ』

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ