0.便利屋〜おまけのお話〜
「こんぐらいの威力でやったから大丈夫だろ?カッカッカッ!」
あたしは手を伸ばしてブライの肩を少し強めに叩いた。
「…………………お、おぉ」
ブライは膝を着き大量に汗を流しながらあたしが叩いた肩を抑えていた。
「あん?どうしたんだよクマちゃん?」
「お、折れた……」
「はぁ!?」
ブライの言葉を聞いてムルシュが様子を伺う。
「ありゃー完全に砕けてますねぇこれ」
え、いやマジか。
まさかブライの骨がこんなに脆いとは思わなかった。
「お嬢〜やっちゃいましたねぇ〜」
「ご、ごめんなクマちゃ…ブライ……」
「お、おう…………」
「……………あー、チェンジで」
あたしは懐から取り出した眼鏡をかけた。
紅く染まった髪が一瞬白く輝き落ち着いた黒髪へと変貌した。
「ちょっっっとぉぉお!?ブライ大丈夫ですか!?今治しますから!ごめんなさああああああい!!」
〇
「しかし骨を折られるとは思ってもみなかった……」
仕事を終えてティスニアに戻る準備を整えている途中ブライは治った肩を見ていた。
獣人は他種族に比べても頑丈な方である。
熊族はその中でも強さと頑丈さを兼ね備えた最強クラスの獣人族だった為、今まで骨折とは無縁であった。
「初めての体験で情けない姿を皆に見せてしまったな」
照れ臭そうに先程のことを思い出す。
エマリアの一撃で彼の肩は複雑骨折した。
それを治したのもまたエマリアであった。
彼女は骨を砕いてからすぐ眼鏡をかけもう1人に入れ替わった。
眼鏡のエマリアは軽くパニックになりながらも回復魔法を使用し彼の肩を完全に元に戻したのだ。
「紅いお嬢のパワーも凄いが、眼鏡のお嬢の治癒も相変わらず大したものだ」
眼鏡のエマリアの回復や支援魔法は他とはレベルが違った。
普通の回復魔法では複雑骨折を一瞬では治すことはできないのを考えると彼女の力の凄さがよく分かる。
「ブライ……」
ブライの背後からリィーが現れた。
「リィー?どうしたん……ガハッ!?」
振り向いたブライのみぞおちにリィーの拳がめり込んでいる。
「な、なんだ急に」
困惑するブライに続けて何発も腹パンをしていくリィー。
「が?ちょっ?待て!?お、おい!やめ!ガハ!」
腹を抑えて倒れ込むブライを、リィーが見下ろしている。
「な、なぜこんな……」
「お前がこれ以上調子に乗らない為だ」
「はあ?」
「お嬢に骨を折ってもらったうえにお嬢に治癒までしてもらうとは貴様……羨ましいにも程があるぞ!なんというご褒美だ!!私はまだ骨なんて折ってもらったこともないのに!!そしてお、お嬢に!ほ、骨をくっつけて貰っただと!?羨ましすぎるぞ貴様ああああ!!」
「…………」
「あまり出しゃばるなよ」
それだけ言ってリィーは去っていった。
「な、なんなんだよ……」
今回はおまけです。
次から本格的に始まるのでよろしくお願いします。