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帰還の儀の朝

翌朝僕はいつもより早起きをした。

エリーのお弁当の準備と寝室への紅茶の準備のため、太陽よりも早く起く起きた。

昨日はお義父上とずいぶん話こんでしまったので、少々眠い。

欠伸を噛み殺して起き上がり、眠気を我慢しながら顔を洗う。

そして、オルガの手を借りながら身支度を整える。


まず、向かうのは厨房だ。


「おはよう、みんな。」

「おはようございます、旦那様。」


僕が厨房へ入るとジョシュアが顔を出した。

見習いの料理人たちも慌てて顔を出したので、片手で制した。


「仕事の邪魔をして悪いね。昨日お願いしていたお弁当準備してもらえたかい?」

「もちろんでございます。奥様が好きなパストラミのサンドイッチですよ。」

「ありがとう、エリーも喜ぶよ。」


可愛い布に包まれた朝ごはんを受け取り、オルガに預ける。

そして、この屋敷に来てからの日課である朝の紅茶を淹れる。


「旦那様もさすが手慣れてまいりましたね。」

「そういってもらえると嬉しいよ。」


この屋敷で厨房の使い方やお茶の入れ方を伝授してくれたのは侍女のオルガだ。

僕の手慣れてきただろう手つきを見て満足そうに頷いている。

初めてこの厨房を借りたときは勝手がわからず、何度も淹れ直した覚えがある。

僕もようやくこの屋敷になじんできたのだろう。


ジョシュアから預かった包みと紅茶の満たされたティーカップを持って、向かうのはエリーの寝室だ。


「エリー、入りますよ」

「あら、どうぞ」


ノックをして扉を開けると、今日のエリーはもう軍服へ着替えていた。


「おはよう、今日の紅茶は君のお気に入りですよ。」

「これは……セントーレアの花の香りですね。」


ベッドに腰かけたエリーはそっとカップを手に取った。


「早く出るって言ったから紅茶だけでも届けようと思ったんだけど、もう出るところだったかな?」

「紅茶の一杯くらい馬を飛ばせば問題ありませんわ。」


紅茶を楽しむ彼女の前に包みを差し出す。

ジョシュアに用意してもらったお弁当だ。


「これは朝ごはん。式典にはお義父上と一緒に参加するから、あとで会場でね。」

「はい、面倒なことはお父様にお任せになって。」

「そういうわけにはいかないよ、エリー。」


空のカップがソーサーに置かれた。

エリーが立ち上がる。僕は右手を差し出した。


「エントランスまで、ご一緒させてくださいね。」

「まぁ、ありがとう。」


朝の空気は冷たいが、どこか澄んだ匂いがする。


「いってらっしゃい、エリー。」

「行って参りますわ。」


僕は愛馬と共に駆けてゆくエリーを見送った。

式典はもう少し日が高くなってからだ。そのあとは昼食会を兼ねたガーデンパーティーの予定と聞いている。


お義父上は昨日あれだけ飲んだので、まだ起きて来ないだろう。

食欲もあまり無いかもしれないな。


そんなことを考えながら僕は屋敷の中へ戻った。


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