怪談絵本コンテスト二次選考通過作品「しりとりでんわ」
プルルルル プルルルルル!!
ガチャ!
「はい?」
「ねぇねぇ しりとりしよう」
「え?」
「これからまいにち でんわするから しりとりしよう」
「わかった」
「かえせなかったり さいごに[ん]がついたら まけだからね」
「はいはーい」
「まけないようにね」
「まけないぞ」
だれだったんだろう。まぁいっか、しりとりたのしそうだし。
プルルルル!!
「じゃあ しりとりのりからいくね りんご」
「えっと…ゴリラ!」
ガチャ
こんなかんじでまいにちするんだ。
プルルルル!!
「ラッパ」
「んーじゃあパンツ」
ガチャ
あしたがたのしみだなー
「マコト、フルーツあるわよ」
「え!おかあさん、なんのフルーツ?ぼくのすきなりんご?」
「ももよ」
「あーももか」
プルルルル!!
「つくし」
「し〜…しょうがっこう!」
ガチャ
そろそろおふろはいろうかな
「おかあさん、パンツどこ?」
「……」
「え…」
プルルルル!!
「うた」
「じゃあ…タカシ」
ガチャ
そろそろがっこうにいくか
「あれ、どこいくのマコト?」
「え、しょうがっこうだよ」
「なんなのそれ」
「え?」
ピーンポーン
「あそぼうぜ」
「コウジ、しょうがっこうは?」
「ん?なんだよそれ」
ど、どういうこと?しょうがっこうがなくなった?まずなんでみんなしょうがっこうのことをしらないんだ。あ!そういえばきのうのしりとりでしょうがっこうっていったからか?そんなわけないか…いやでも、パンツもそうだ。パンツもあのときしりとりでいったからなぜかこのよからきえている。あのしりとりってそんなものだったのか……あれ、じゃあつぎはなにがきえたんだ?…まずはうただ。うたがきえるってどういうこと?なにかうたってみよう。
「…えっと……あ…」
だめだうたえない。たしかにきえてる。つぎにきえるのは……タカシ!う、うそだ。ひとがきえるなんてそんなはずない。
「なぁコウジ、タカシはげんきかな」
「タカシ?だれそれ」
「……」
プルルルル!!
「しかえし」
「おい!いろんなものをけしてどういうつもりだ!」
「……」
へんじがない。でも、しりとりにまけるともっとひどいことになりそうだ。しりとりはつづけよう。
「しか」
ガチャ
これからどうしよう。できるだけひがいのすくないことばをいってしりとりをつづけても、そのうちぼくのたいせつなひとやものをけされそうだし、でもまけてももっとあぶなそうだし。どうしよう。
プルルルル!!
「かぞく」
「…え…かぞく……くま」
ガチャ
かぞくがきえた。ぼくのかぞくも。みんなのかぞくも。たいせつなつながりが、きえた。ぼくのせいだ。そうだ、ぼくがきえればいいんだ。つぎのもじは、ま。あいつがマコトっていうはずだ。ぼくがきえたら、きっとそれでいいんだ。
プルルルル!!
「ねぇマコトっていおうか?いったらきみ、きえちゃって、しりとりかえせなくなるよね。そうなったらきみ、まけだよ」
…え?ほんとうだ
「じゃあいうよ。まけたらどうなるんだろうね。たのしみだね」
「ちょ…ちょっとまって」
「だめだよ。もうきみのまけだよ。いうね」
「いやだいやだ…ごめんなさい」
「マコトいがいのすべて」