疲れやすい発明家
時は西暦20XX年、人間の手による科学や生物学の発達によりあるものが身近なものとして扱われるようになった――――。それは“魔法”である。人類は魔法によりかつてないほど豊かな生活を送っていたのだが、魔法の登場による弊害も現れた。
力を手にした者全てが必ずしも善であるとは限らない。
「やべぇやべぇ!転校初日から遅刻って笑えねぇっての!」
静かな朝に轟く叫び声。その声の主の名は、十六夜空介。彼の声で周りの住民からクレームの嵐が巻き起こったが、今の彼にはそんなものはどうでもいい。「速く走れるマシンでも作っときゃ良かったかぁ!?」と言い道路をひたすら疾走する。
しかしそこで彼とは別の叫び声、というより悲鳴が彼の耳に届く。「誰だ!?」。空介は、道を外しその声が聞こえた所へ向かった。そこには触手のようなものを4本携えた化け物が店を襲っている風景があった。
「へへっ、本当は学校で見せたかったんだが、ここでお披露目といくかぁ!」空介の声を聞き、すぐに彼に飛び込んだ。ドスン、化け物の着地音が辺りに響く。
「ちょっとタイムタイム!武器ぐらいすぐに出させろや!」空介の文句もお構い無く次の攻撃へと向かう。そして、2本の触手が彼を襲う。
「クソ……詰んだか……。」と思った刹那。
「万物を縛る天の鎖 《カエルム・ウィンクルム》」
空介の背後から無数の鎖が襲来した。その鎖により、化け物は動きを止めた。
「え?何が起こった……これ俺の魔法じゃねぇぞ!」
「何ボーッと突っ立ってんの!早くその武器とやらを出しなさい!」そこには空介と同じ制服の女性が立っていた。
「誰だか知らんがサンキュー、恩に着るぜ。」そして、鞄から銃のような物を取り出した。
「さてと……喰らえ!“空介式魔導銃”!!」その銃から放たれた光により、化け物は完全に消滅した。
「いやー、危なかったぜ、お前がいなきゃやられ……て……」突然空介は膝を付いた。「この程度の運動で疲れるってどんな生活してんのよ……ってもうこんな時間じゃない!仕方ない、運んであげますか。」
「光栄の至り。で、お前の名前は?」
「忘れないでよね……榊原結城 よ」
そして二人は向かった、魔法使いの優等生が集う「天門高校」へ。