3話 復讐者になるまで-3-
展望台にきた。
ここは元々は魔物が町の中に入らないような見張り台の役割をやっていたが20年前にここだと情報が伝わりにくいということで見張り台ではなく展望台として使われるようになった。
いまはみんな勇者パーティを一目見ようとしているのか、誰もいない。町の入口付近には溢れんばかりの人がいるのが見える。
その遠くには勇者パーティが見える。竜の下には大きな槌を持ったドワーフ、両手に小手をはめている獣人、杖を右手に持った森精、そして腰に遠くからでも見える剣を持っている。
てかもう町も近くなったんだし竜化を解除いてもいいと思うんだけどな。
と思っていたときに事は起こった。
「「「きゃあああああ」」」
竜が火のブレスを吐いたのだ。
「あ、あれは竜人のスキル【火のブレス】じゃないか!?なぜあんなことを!?」
そしてそれだけでは終わらず、森精が火の大きな球を町中に向けてはなった。
「な、なにがしたいんだ!?」
シュリカはと言うと顔を青ざめ震えている。
「お、お父さん、お母さん…」
「…シュリカ!探しに行こう!」
「う、うん」
シュリカは震える足で立ち、シュリカのお父さんの元へ向かおうとする。だが震えているためにちゃんと歩けない。
これではだめだと思い、俺はしゃがんだ。
「…ど、どうしたの?」
「そんな足じゃまともに歩けないだろ。おんぶするよ」
「い、いいの?」
「ああ、ダメならこんなことやってないって」
「なら…ありがと」
今更ながらシュリカを背負うのは久しぶりな気がする…って、こんなこと考えてる場合じゃない。
シュリカは背負われてから俺の服をギュッと掴んでくる。背負っていても震えている。
「大丈夫、きっと大丈夫だから」
そういい続け町中を走る。
町は火や叩き壊されたような家が沢山ある。瓦礫が多く、行動できる範囲も制限される。
町に魔物が入った場合には避難所に行くよう言われている。地上にあるのではなく穴を掘って地下構造になっているらしい。
おれはそこに向かって走っていく。俺のお母さんとシュリカの両親がいると信じて。
「シュリカ!ヒューリ!」
ある程度走ったところでシュリカのお父さんが見えた。
「お父さん!」
「2人とも無事か!?」
「心配してくれたんですか?ありがとうございます」
「うん!大丈夫だよ!お母さんは?」
「お母さんは避難所にいるぞ。そうだヒューリ、お前のとこの母さん見なかったか?」
「お母さんですか?見てないですが…もしかして」
「ああ、まだ避難所にいないんだ」
お母さんが…いない?
「だから俺は今から探しに行く。お前らは避難所に行って待ってろ」
「い、嫌です!俺もお母さんを探します!」
「何言ってるんだ!こんな状況だぞ!危険なんだぞ!」
「それでもお母さんを探せないよりは危険を冒しても探した方がいいです!しかも俺には魔法も使えるから大丈夫です!」
「…何を言っても変わんないのか?」
「はい…」
そういうとシュリカのお父さんは頭を掻きながらため息をついた。
「やっぱりあいつの息子ってか…わかった。探してもいい。だが危険だと分かったら直ぐに避難所に行け。わかったな?」
「はい!」
「シュリカは避難所に─」
「嫌!私も探しに行く!」
「…はぁ、お前もかよ。分かった。だけどシュリカ、ヒューリと一緒にいるんだぞ。」
「うん!」
そして俺たちとシュリカのお父さんは二手にわかれ、お母さんを探すこととなった。
「まずは家に行こうと思う」
「私はヒューリに付いていくだけだからどこでもいいよ」
言ってくれるな。
家に着いた
家は完全に崩れ、原型を留めていない。
「いない…?」
「別のところに行ったのか?」
と思った矢先、瓦礫が動いたのだ。
「う、うう…」
「お母さん!?」
瓦礫の動いたところにはお母さんがいる。
「お母さん!大丈夫!?」
「ヒューリ、無事…だったのね…よかったわ」
「ちょっとまってて!今すぐ助けてあげるから!」
するとお母さんは首を横に振った。
「いいのよ。私はもう生きられない。足も動かないし血もたくさん出てる。だから、ヒューリ、これを」
そう言ってお母さんは首にかけてあるペンダントを渡してきた。ペンダントには小さな黒い羽がある。
「これは…?」
「これはお父さんのものよ。お父さんが近くにいれば何かしら反応があるはずだから持っておいて。あとお父さんに会ったらあの時はごめんなさい、ありがとうって伝えておいて…ね……」
「お母さん?お母さん!」
なんども名前を呼んだが、返答が来ることは無かった。
「うっ…うう……」
「………」
「……あいつらだ…勇者パーティがやったんだ…殺してやる…いつか…お母さんの苦しみを…味わわせてやる…」
「……いこう、避難所に…ね?今やることはやり返すことじゃなくて今の安全だと思うよ…ここにいても…辛いだけだよ……」
「そう…だね、行こうか」
そして立ち上がった。その時、誰かの足音がした。
足音の方向を見ると、勇者の人間がこちらに歩いてきている。
おれはすぐさまシュリカの前に立ち、シュリカを守るような姿勢を取る。