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あ、小鳥  作者: 一滴
6/25

少年とガンホークの災難?ラッキー?

練習中

かなりごちゃごちゃです

難しい

 風が吹く山の上。

 山脈が連なる山で一人の少年は弓とナイフを持って歩いていた。

 その足は静かにゆっくり、されどしっかり土を踏みしめる。

 少年の目は何も見逃さないようきつく見開かれている。

 耳を澄まし、いかなる音も聴き逃さんと神経を集中する。

 その体はどんな時もすぐに対応出来るように引き締められていた。

 狩りをしているのだ。


 少年の家族は少年を残し狩りから帰って来なかった。

 家族のみでここに住んでいた彼は一人ぼっちになり、今のように一人で森を歩いて狩りをしていた。

 最初は食料が尽きたせいで死に物狂いで狩りをした。

 その次は心細く森が恐くて中々獲物を取れなかった。

 しかし狩りも二年目になれば慣れたもの。

 恐れず、されど(あなど)らず少年は歩を進める。


 そして少年の目が何かを捉えた。

 木々の間に僅かに動く生きた動物。

 この山の森には気を付けなければならないモンスターが数多く生息する。

 そして少年が見つけたモンスターはこの森で最も注意すべきモンスターの一つ、空のモンスター『ガンホーク』、の子供だった。

 偶然見つけた傷つき瀕死になっているガンホークを、少年は近づき止めを刺そうとした。

 将来脅威となる中位種であるガンホークを即刻殺すために。

 しかし少年はガンホークの目と顔を見てしまい殺すことが出来なくなってしまった。

 厳しい自然の弱肉強食の摂理は傷つき動けなくなった時点ですぐに逆転する。

 中位種であろうと子供であり既に死にかけているこのガンホークは普段なら既に命も未来もなかった。


 しかし少年は摂理に歯向かった。

 ガンホークを抱え、殺さず持ち帰り回復させるために。

 少年は寂しかったのだ。

 親を無くして2年、ずっと一人で暮らしてきた。

 ガンホークの瞳は親元を離れてしまった寂しさで満ちていた。

 少年はどうしても無視できなかったのだ。


 家に戻りガンホークを回復させる。

 傷口を水で洗い、山で採取した薬草と動物の毛皮を火で消毒して作った包帯で巻いて後は安静にさせる。

 清んだ森と清んだ空気、水で育った薬草は普通の薬草より効果が高く、次の日にはガンホークは元気になった。

 ガンホークは自分を助けてくれた少年に懐き、少年もガンホークを受け入れた。


 それから1年。

 少年とガンホークは一緒に狩りをしていた。

 まだ子供とは言えガンホークの子供。

 大きさは既に羽を広げて2メートル近くある。

 狩りをする上でも空というアドバンテージは大きい。


「キュラララ……」

「……そっちか」


 ガンホークが空から獲物を探し、見つけたら一声鳴く。

 後はそっちの方に飛んでもらえば簡単だ。

 ガンホークが飛ぶ方向に向かって走れば獲物をすぐ見つけられた。

 ウサギだ。

 ガンホークに合図を送ったら矢で牽制(けんせい)し、驚いて少し動きと意識をこっちに向けさせれば後は空からガンホークがカギヅメで仕留めるだけでいい。


「よし、よくやった!」

「キュオロロロロロ」


 頭に乗ったガンホークを誉めながら気分よく山を降りる。

 狩りが楽に、楽しくなった。


 そして夜。

 少年が薪を拾い上げ積み重ねている。

 火打ち石で集めた渇いた雑草に火種を与えれば簡単に火がついた。

 キャンプファイアである。

 夜の山の上で火を起こすとモンスターが寄ってくる。

 少し前までは怖く、危なくて出来なかったが、今の彼には味方がいる。


「キュララララララララ!」

「もう少し待て。すぐできる」


 焚き火でウサギの肉を焼く。

 普段は逃げ足も発見も困難だったが、ガンホークと一緒に狩りをすれば捕まえるのは簡単になった。

 ただし、この頃一つ問題が、


「キュラララララララララ」

「何だよ? 足りないのか?」


 ガンホークはこの頃成長期でウサギ1匹では足りなかったのだ。

 明日からは獲る量を増やさなければならないだろう。


「キュアアラララララララララララララ!」

「わかった、わかった! 俺のもやるから我慢してくれ!」


 結局、家の保存食まで出すことになった。




 翌朝、いつもよりたくさん獲物を捕まえるために大きめのバッグを持って家を出る。

 いつも通りの手順で獲物を探す。

 一日で見つけられる獲物の数は限られてる。

 新しい狩りの方法を考えるか狩場を変えるかした方がいいかも知れない。


 いつも通りの少しだけ長い狩りになる筈だった。


「キュアアアアラララララララララララララ!!」

「ん、何だ!? どうした!?」


 ガンホークが血相を変えて急いで降りてきたと思たら、肩の服を掴んで引っ張りだした。

 余程慌てているのか持ち上がらないまま必死に少年をここから離れさせようとしている。


 瞬間、森に影が射し、周りが真っ暗になった。


 ドラゴンだ。

 50メートルはある。

 体は深い蒼色。

 目は黒く、しかし美しく光を反射している。

 そして、その双眼はしっかりガンホークと少年を捕らえていた。


 モンスター、神獣、守護獣、破壊神、様々な呼び名を持ち、地方ごとにその姿も色も能力も性格も人びとの認識も様々なモノ。

 生物の進化の極地と呼ばれ、その実力は天地を割る。

 ただ一つ、人間の間で硬く禁じられる事が『ドラゴンを怒らせるな』だ。

 徳なことなど無いのだから。

 そもそもドラゴンの話のほとんどは最後に破滅するもの。

 実際に滅んだ国の数は数えきれないだろう。


 少年は親からドラゴンの話しを聞いていなかった。

 しかし話を聞いたことが無くとも、関わら無い方がいいと言うことは何となく理解できた。


『面白いな。魔物と人間がともに狩りを行うとは』


 ドラゴンが言葉を喋っている。

 ドラゴンに寿命があるのかどうかなど知られていない。死体を人間が見つけた事は無く、人間が現れる前から生きてきたと言われ、その長寿故に理性も知能も高い。

 ちなみに魔物とは理性のあるモンスターが他のモンスターを呼ぶ時に使う物だ。


「……」

「……」


 少年もガンホークも、声を出せなかった。

 それほどまでにそこに存在しているだけで膝を屈して膝まづきたくなる高潔さと美しさがドラゴンから滲み出ている。

 地方によっては信仰対象ともされる由縁の一つだろう。


『フム、初めて見るな。人間が魔物を受け入れ、魔物もまた人間を受け入れている。…………試してみるか』


 少年の心には不思議と不安や焦りはなかった。


『我は空龍。200753108432の朝日を仰ぎ見た天空の龍である』


 少年にはこのドラゴンが無意味に殺生をするようには思えなかったからだ。


『我の興味を引いたものよ、我の期待に応えよ。(たわむ)れだ。さすれば褒美を授けよう』


 それほどに気高く見えていたから、ドラゴンが


『殺し会え』


 ……と、そう言ったとき頭が真っ白になった。

 そして次には沸々(ふつふつ)と怒りが沸いてきた。


(何が戯れだよ! 俺にコイツを殺せってのか!? 絶対イヤだ!)


 だからガンホークが自分に襲い掛かって来た時はさらに驚いた。

 さっきまで少年をドラゴンから逃がそうとして必死に引っ張っていたのに何故?と。


「や、やめろ! 俺はお前を殺す気なんて……」

「キュオ!」


 ガンホークは聞く耳を持たない。

 それほどまでにドラゴンが絶対なのか、それともドラゴンの機嫌を損ねさせないためか。

 どちらにせよ少年は気分が悪くなる一方だった。


(イヤだ。コイツを殺すなんて絶対イヤだ! コイツを殺すのも、コイツを殺して一人に戻るのもゴメンだ! あんなドラゴンの思い通りになるのも嫌だ! 殺す方を選ぶぐらいなら、俺が……)

「キュラララララララララ!!」


ドスッ


 鈍い嫌な音がした。


 ガンホークは鷹に近い姿をしており、鷹より大きく成長し大人は7メートルを越える。

 そしてガンホークの最大の武器はそのカギヅメだ。

 ナイフにも加工されるその切れ味とノコギリ状の反りが入った爪。

 毒は無いが、掴む、切り裂くに特化しているから、当然突き刺す事も出来る訳で。

 少年の腹にカギヅメ状態で食い込んでいた。

 少年は避けようともしなかった。

 殺して生きるのと、殺さず死ぬ。

 どっちがいいかと考えると、少年は自分が死ぬ方がいいように思えたからだ。


 そしてガンホークも、少年に襲い掛かったのは少年に自分を殺して貰うためだった。

 ガンホークは少年が優しすぎるのを知っていたからだ。

 いつもとる獲物の数は1匹。

 絶対余分に取ろうとせず、止めをさす時はいつも謝っていた。

 だからガンホークは自分が襲いかかればいくら優しかろうが生存本能で自分を殺してくれるだろうと思ったのだが、ガンホークが思っている以上に少年は優し過ぎた。


 少年は崩れ落ち、ガンホークは唖然としていた。


 少年は笑っていたから尚更ガンホークは唖然となった。


 そしてこうなった張本人であり、事の元凶であるドラゴンは


『フハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!!』


 大爆笑していた。


『面白い! 実に面白い結果になった! よい戯れに礼を言うぞ、人間、魔物。約束通り、褒美を授けよう』


 そう言ってドラゴンは、ガンホークと少年に蒼く、しかし温かいブレスを吐いた。


 それだけで地面の植物が少年とガンホークを持ち上げながら急成長し、一気に100メートルを越える大樹に成長した。


 少年の傷はふさがり、ドラゴンと同じ蒼色の細くて長い尻尾が生えた。


 ガンホークは今まで2メートルあった体が5メートルまで成長し、体が蒼色になった。


『その尻尾は任意で消せる。更に貴様の強い願に応じて進化する。また会おうぞ』


 そう言ってドラゴンは去っていった。


(二度と会わない事を願います!)


 すぐ目を覚ました少年はドラゴンに向かって切に願った。

 関わらない方がいい予感は間違いなかった。


「ドラゴンは嫌いだ!」

「キュア!」


 同意するようにガンホークも鳴いた。


 その後、100メートルの木からどうやって降りようか考えていたら、ガンホークが少年を余裕で持ち上げ木から下ろしてくれた。

 ガンホークの体は蒼一色、羽が8割、体1割、カギヅメ1割の5メートルと言う微妙にアンバランスな体型になっていた。その目は真っ白だった。

 その後、狩りを行ったが、いつもの何倍も楽だった。

 目を瞑っても周りを感じるほどに感覚は鋭敏に、木々の間を風が通るように走り抜けられるようになった。

 ガンホークの目は更に遠くを見れるようになり、飛行速度とそのカギヅメ以上に驚いたのが、空に少しでも舞い上がると鋭敏になった感覚と視力でも見つけられないほど空に溶け込んだことだ。

 更に蒼いブレス吐きやがった。

 将来どうなるのだろうか?




 狩りが楽になったことに喜びながらも、その恩恵があのドラゴンだと言うことにすごく微妙な顔で家に帰った一人と1匹だった。

 もう一つ言える事は、食う量が少年もガンホークも、十倍になった事だった。

読んでくれてありがとうございます。

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