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新山は、自分とちゃんと向き合おうとし始めた海月にちょっと感動していた。
笑い声をあげたり、冗談も言えるようになった。仲良くなってきたと感じて、嬉しかった。
でもいつも家に帰る時、その時だけは海月が無理に笑ってみせるから、新山はそれが気がかりだった。
「誰も帰らないんだ」
海月は言った。新山は一瞬何のことかと思ったが、そう言って扉の向こうへ消えた海月を見て納得した。
唐揚げを頬張る海月を見つめていたら
「なんだよ?」
何でもないと返すと、そうか。と呟きまた黙々と唐揚げを頬張るから、思わず笑った。