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きっとあの言葉は、魔法の言葉だったのだと海月は今でも思っている。
「海月ー、唐揚げ揚げたの置きたいからお皿お願いー…あ、キッチンペーパーもだよー」
大きな皿にキッチンペーパーを敷き、新山のもとへ行く。ああ、すごく美味しそう。思わず、腹の虫が鳴いた。
新山はその日以来、毎日放課後図書室にやって来た。
放課後の図書室に来る人はほとんどいない。
昼休みに本を返し忘れた人と、
海月をいじめるために来る奴ら。
そのくらい。
でも新山が来るようになってからは、いじめっこたちは何故か来なくなって。
最初はただの気まぐれか何かだと思っていた海月だが、ほんとに全然来なくなったので不思議に思っていた。
代わりにクラスでやられるのかなと思っていたが、そんなこともなかった。
最近それを新山に話したところ、
「あー、俺がみんなやっつけたんだよ」
と笑って教えてくれた。海月はちょっとだけ、新山をこわいと感じた。