5/32
02
不思議に思った新山は同じクラスの図書委員に声をかけた。
「毎日いるやつ?ああ、阪井だよ、阪井海月。放課後なんてろくに人来ないからみんな行かないんだよ当番なんか。でもあいつが毎日行ってくれてるって聞いてさ、ラッキー。みたいな?」
阪井海月、そんな名前だったのか。ずっと気にかけていたが、名前も知らなかったんだなと少し驚いた。
「あいつにはあんま関わんない方がいいぞー新山。なんかいじめられてるらしいから、迂闊に助けたりするとお前も巻き込まれるぞ」
阪井は彼と同じクラスのやんちゃなグループから
いじめられているという。
けがをした姿なんて見たことは無かった気がするが…。
先生にバレないようにこそこそやられているのかもしれないと、新山は思った。
その日の放課後、新山は早めに放送室を出ると図書室に行った。
扉を開けると、阪井はちらりとこちらに目を向けた。
「図書当番終わったらさ、一緒に帰らない?」