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阪井海月の嫌いなもの、それは太陽。
夕焼け朝日日だまりなどなどなど。
同級生からのいじめに遭い、屋上で見た朝日。
腫れた瞼にあたたかな光を感じて空しさを覚えた。
自分が帰らずとも気にもとめない家庭。
他に何人も男がいる自分を産んだ女性。
酒がない、とビール瓶を振り回し
茶色い破片を踏まぬように階段を登り、
チチオヤなる男のヤジを聞き流す。
窓から差した赤い太陽は、茶色い破片を通って
チチオヤに刺さっていた。
***
海月がいじめに遭ったのは高校2年の春から。
小中学校からの幼馴染みや、
高校に入学してから出来た友達の大半が
他のクラスに割り振られ、
ちょっぴり一人狼でいたら
襲われた。
いじめに立ち向かうとか、
逃げるために不登校になるとか
そんな考えは海月にはなかった。
毎日毎日、図書委員会の活動があったから。
委員長がだらしなくて、他の委員もやる気がなくて、
放課後の図書室の当番はいつもいなかった。
だから海月は、毎日毎日図書室のカウンターに座り
下校の時間まで当番をしていた。
図書室は人がいることがほとんど無かったけど
ある日の下校間近、ふらっとやってきたのが新山だった。
「図書当番終わったらさ、一緒に帰らない?」