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時空を越えて  作者: 飛燕
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第六話:未来からの訪問者――十年――

「おいしいね、あかり」

「うんっ」

 捜索に行き詰まり再び桐生家に集まった四人と子供二人。

 その六人が現在居間のテーブルを囲みケーキを食べている。

「私が買ってきてあげたんだから味わって食べなさいよ?」

「うんっ!」

 満面の笑みで二人が食べているのはミサが買ってきたショート・ケーキ。

 二人の口の周りには、生クリーム製の髭が生えている。

「……」

 そんな二人とは対照的に暗い表情の攻司。先程の敗戦が尾を引いているようだ。

「ちょっと攻司、ケーキが不味くなる様な顔しないでよ。いらないなら貰うわよ? 敗者に情けはいらないってね」

 そう言って攻司の前にあるモンブランに手を伸ばすミサ――の手を反射的に攻司が掴む。

「なっ、なによ?」

「――なによ? じゃねー! 勝手に人のモンブランを奪うな!

 沈んでるオレに追い討ち掛けるな! そして偉そうにするなー!」

「うるっさいわね、バカみたいに大声出さないでよ。あ、バカか。

 それに私が買ってきたんだから別にいいでしょ?」

「バカって言うな! 買ってきたとかいってチャッカリ自分の分もオレに払わせたじゃねーか!

 しかも本当に捜してきたかも怪しいし」

「あーもう、いちいちうるさい! 光が起きちゃうでしょ!?」

 ミサが指差すその先には未だ横たわっている光がいた。

 先程とは違い布団をかけられ静かに寝息を立てている。

 一応牧村もその横で沈んだままだが、ミサの視界には入っていないようだ。

「うぬぬぬ……」

 ちなみにあかりと衛司はというと、ケーキに夢中で攻司達のやりとりには無関心でいる。

 依然ジッとミサを睨んでいた攻司だったが、突然ハッと真顔になる。

「ん? どうしたの?」

「来る」

「は?」

「何かが……来る」

 攻司がそういった直後、軽快なチャイムが鳴り響く。

「……誰か来たみたいね」

「ああ」

 今までに感じたことのない、只ならぬ気配に自然と攻司の顔が引き締まる。

 スゥと小さく空気を吸い込み立ち上がる。

「ちょっと、大丈夫なんでしょうね?」

「多分な」

「多分って……」

 この不思議な気配は攻司だけでなく、ミサも感じ取っていた。

 ――そんな二人を急かすように、再びチャイムが鳴り響いた。



「どちら様ですか――って、え!?」

 緊張した面持ちで玄関を開けた攻司の目がこれでもかと開く。

「お、攻司だな? 元気にしてるか?」

「わ〜、本当に昔のコウジ君だ。かわいい〜」

 ぽかんと口を開け固まる攻司を余所に、実に和んでいる二人の訪問者。

 一方は体格の良い長身の青年、もう一方は線の細い小柄な女性。

 ――その二人は誰かに似ている。正確には誰かと誰かに……。

「おっと、和んでる場合じゃなかった。攻司、あかりと衛司を見なかったか?」

「なっ!? 二人のことを知ってるんすか!? それにオレの名前まで?」

「当然。だってオレ達は――お、あかり、衛司」

 ケーキを食べ終えた二人が奥でひょっこりと顔を出していた。

 そんな二人に笑顔を向け手招きする青年。

 一瞬戸惑ったあかりと衛司だったが、すぐにパァッと花が咲いたような笑顔で玄関に駆け出す。

「パパ〜!」

「ママ〜!」

「よ〜しよし、やっぱりここにいたか」

「二人ともいい子にしてた?」

「は〜い」

 あかりは青年に、衛司は女性の方に飛び付き元気な返事を返す。

 しかしその笑顔は長く続かなく、突如ハトが豆鉄砲をくらったような表情に変わる。

「パパ?」

 青年に抱き抱えられながら攻司の方へ顔を向ける。当の攻司は固まっている。

「あかり、そっちの人は攻司であってパパじゃないんだ」

「あっちにいたママは?」

「うん、あっちの人もママじゃないよ」

 攻司を含めた子供達の頭の上に『?』マークが浮かぶ。

 衛司と攻司に至っては全く同じ顔で口をポカンと開けている。

「っと、攻司。これ隊長に渡しておいてくれないか?」

 そう言って青年が懐から差し出したのは、拳一つ分くらいの大きさのケースだった。

 それは純粋な銀で出来ているようだったが、

所々黒い焦げ跡のようなものがついていてお世辞にも綺麗とは言えない。

「え? あ、はぁ……」

「じゃあ時間がないから帰るな。子供達の面倒看てくれてありがとな」

「ありがとう、若いコウジ君」

 それぞれ笑顔で攻司の頭をわしゃわしゃと撫でていき踵を返す二人。

「――っておい! ちょっと!」

「ん? 何だ?」

「何だじゃなくて、あんた達は何者なんだよ!?」

 一瞬呆気に取られた青年だったが、何を思ったかあかりを下ろし攻司に歩み寄る。

 そして攻司の顔を覗き込んだ後、フッと笑い再び頭を撫で回す。

「ま、十年もすれば分かるさ」

「十年?」

「今はそれしか言えないな。じゃ、光を大事にしろよ」

 最後に頭をポンと叩いて含みのある笑みを見せる。

 攻司もそれ以上は問い詰めず、黙って青年の背中を見送った。

 自分と似ているようで何処か違う青年。

 そんな青年に不思議な何かを感じながら部屋へと引き返す攻司だった。

 ここまで読んでくださってありがとうございます。ココだけたまたま読んでしまったという方は前の話も読んで下さいね。

 とりあえず一つ話が終わりました。次の話は大よそ出来ているので更新は割と早いかな。よかったら覗いてみてください。

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