第十二話:想い出の花――暴走――
予告通り、今回のV.S.は時空とは関係ありません。
序盤は騒がしいですが、徐々にダークな方向へ……。
人が死ぬ描写が含まれている為、そういったのが苦手な人は、読まない方がいいかもしれません。(リアルには書いてはいませんが……)
「た、大変だ……」
ガヤガヤと賑わう教室に駆け込んできたのは、全力で走ってきたにも関わらず顔を真っ青にした攻司だった。
それに気が付いた光が心配そうに攻司に歩み寄る。
「どうしたの? コウジ君」
「ひ、光! そうだ、オレと結婚してくれ!」
「ええっ!?」
突然のプロポーズに静まり返る教室。そんな中、尚も光の肩をがっしりと掴み詰め寄る攻司。
「頼む! 今すぐだ!」
「け、結婚って言っても……私、まだ心の準備が……それにコウジ君はまだ結婚出来る年じゃ――」
「そんな事はどうでもいい! とにかくヤバイんだ! ――あ、沙羅!」
既に恒例となった沙羅の教室(攻司)訪問。
今日も変わらず、尻尾が見えそうなくらい嬉しそうに走ってきていた。
「おっはよ〜桐生殿っ。拙者に何か用でござるか?」
「沙羅! オレと結婚してくれ! きっと幸せにする!」
「ふぇっ!?」
「コウジ君!?」
攻司の暴走のせいで完全に教室の時間が止まっている。
しかし暴走は留まることなく更にヒートアップしていった。
「あ! そこの女子! キミでもいい! 結婚してくれ!」
「え? 私?」
半狂乱に陥った攻司が光、沙羅に続き、廊下を歩いていた小柄な少女に結婚を迫り始めた。
その女子は一瞬驚いていたが、言葉の意味を理解したのか、頬を赤らめて小さく頷く。
「わ、私でよかったら喜んで……」
「マジか!? サンキュー、助かったよ――ってお前は悠希!?」
「うふふっ、久しぶりねコウちゃん。元気だった? それよりも今のってプロポーズだよね?」
「あ……あわわわ……」
この上ない程青ざめる攻司に『悠希』と呼ばれた小柄な少女が擦り寄る。
当然の事ながら、廊下を歩いていた生徒の視線を一身に浴びている。
「桐生殿っ〜! 隊長殿から聞いたでござるが、結婚したら『はねむうん』というのに行くでござるよ〜!」
更にいつもの様に体当たりに近い勢いで沙羅が飛びついた。
すると先程まで笑顔だった悠希が徐々に険しい表情へと変わり、沙羅に疑惑と怒りを込めた視線を送りつける。
「ちょ、ちょっと、何? 結婚ってどういうこと?」
「桐生殿は拙者と結婚するでござるよ」
対する沙羅も悠希の敵意に気付いたのか、ムッとした表情で頬を膨らませる。
「ちょっと攻司! 光以外にもプロポーズするってどういう事よ!?」
「あ、あの、ミサ、私は気にしてないから……」
「光は黙ってて!」
ズカズカと詰め寄るミサに申し訳なさそうに制止するが、その表情は複雑だ。
「え!? 光ちゃんにもプロポーズしたの!?」
「……」
既に攻司の魂はここにはない――かと思えるほど覇気がない。
例えるならミスター・ポ○だ。
「ね〜桐生殿〜。どこに行くでござるか〜?」
「はっきりしなさいよ!」
「コウちゃん?」
三人の容赦ない精神攻撃に耐えられなくなったのか、次第に身体がガクガクと震えだし――
「うわ〜〜〜!」
駆け出した。