片目つむったかたつむり。
このタイトル、ブログの名前と一緒なんですよ*
その日、雨が降っているのに僕が公園にいた理由は、単純に家の鍵がしまっていたからだ。
きっと、お母さんが今日は学校が早く終わる、ということを忘れて、買い物にでも行ってしまったのだと思う。僕の心は曇りになった。
公園に行けば、誰かいるかな。とちょっとだけ、期待した。だから、家から一番近い公園に行ってみたのだ。期待は「ちょっとだけ」だったから、誰もいなくても「やっぱりな」としか思わなかった。
それでも、せっかく来たのに寂しい。お母さんは何時に帰ってくるんだろう。
僕の心には、雨が降り始めた。体に傘はさせても、心に傘をさすことはできない。僕は、泣きそうになった。心の雨が、目から出てきたんだ。
「なんで泣いてんの」
うしろから、声が聞こえた。女の子の声だ。振り向いてみると、僕よりずっと大きなお姉さんが立っていた。きっと、中学生くらいの。
「……お母さんが、帰ってこないから」
「それで、寂しいの?」
「……うん」
お母さんにも、先生にも言われた。知らない人に話しかけられても、答えちゃだめだって。
それを思い出して、答えるかどうか、ちょっとだけ迷った。でも女の子は中学生だ。中学生で、小学生を誘拐なんてしない。そう思って、結局僕は答えることにした。
「あ、かたつむり」
と、僕は声をあげた。目の前の葉っぱの上で、休憩しているようだ。
「……かたつむりって、なんでかたつむりって名前か知ってる」
「知らない、なんで?」
女の子が聞いてきて、僕は首を横にふる。すると、女の子はちょっとだけ笑って、言った。
「片目つむってるからだよ。ウインクしてるの」
僕は、休憩中のかたつむりを覗きこんだ。
「嘘、ちゃんと目開いてるよ」
ちゃんと説明してもらおうと思って、僕は女の子を振り返った。
……女の子は、もうそこにはいなかった。
「お母さん、帰ってきたのかなぁ」
きっと、あの女の子も家に誰もいなくて、寂しかったから公園に来てたんだ。
「……僕のお母さんも、帰ったかな」
僕は、もう一度かたつむりを覗きこんだ。ほら、やっぱり両目開いてるよ。
そう思った時、ひとつの目がちょっとだけ、閉じた気がした。
「……ウインクした」
気のせいかもしれないけど、僕には片目をつむったようにみえたんだ。
僕は楽しくなって、笑った。すると、もう一度後ろから声が聞こえた。
「ほら、片目つむったでしょ?」
さっきの女の子だ。
「あ、どこ行ってたの?」
「別に、雨止んだと思って見に行ってただけよ」
女の子の顔も、ニコッと笑った顔になった。
「……ね、心にも傘はさせるでしょ」
「なんで知ってるの。僕、口に出してないでしょ、それ?」
さっき、僕は「心に傘はさせない」と考えていた。でも、頭の中で思っていただけのはずだったのに。
「私も、同じ様なこと考えたからよ」
そういうと、じゃあね、と女の子は手を振って公園を出ていった。
結局、名前も何も聞いていない。
女の子は心に傘をさしてくれたけど、その頃には心の雨も止んでいて、虹がかかっていた。
もう一度さっきのかたつむりを見ると、今は両目を開いていた。
今回、話し方がものすごく幼いですよね^^;
小学校低学年の男の子をイメージしたらこうなったのですが、読みにくかったらゴメンなさい><
本当の「かたつむり」という名前の由来は、
「かた」の部分は「笠をきた虫」ということで、「笠」から。
「つむり」は、「つぶら」「つぶり」など、同系の貝の名前から来たそうです。
あの、かたつむりはウインクなんてしませんよ^^;
最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。