プロローグ7
プロローグが終盤になって参りました!!
……………やっとかよ……。
〜夕方〜
結局、半日近くリーアの家でディノ達は過ごした。
と、いってもディノは主に勉強をさせられていた。
「ディ、ディノ………い、生きてるか……?」
「あ、ああ。………くそ〜っ。リーアの奴………数の計算なんかわかんねーよっ!!」
「奇遇だな………俺もだ。」
やらされた問題は数字の足し算から始まり、わり算までやらされたのだ。
「………よしっ!もー帰っていいわよ。」
リーアがパンっと手を叩いて終了を宣言した。
「っしゃー!!ケン帰ろーぜ!!」
「わーい!!」
二人は使った紙や鉛筆やらを高速で片付けて荷仕度をし、さっさと家を飛び出していった。
「…ったく。逃げることに関しては一品ね………。」
リーアが呆れたように言った。
「でもそれがあの二人らしいんだよね。」
エリーが笑いながら言った。
「む、メリア。家への方向はわかるか?私は連れられるがままにきてしまったのだが。」
聞かれたとたんメリアはサラから目線を反らした。
「…え?…ぬし…もしや、家の方向を知らぬのか……?」
「…だって…お兄ちゃんに…着いて行かないと…リーアさんの…家に行けないんだもん………。」
少しうつむきかげんでぼそぼそと言った。
「じゃ、私とエリーが家まで送ってあげる。」
リーアが案内をかって出た。
「何回も行った事があるから道ぐらいわかるよ。」
「ん。リーア、助かる。エリーもすまないな。」
「じゃ、行こ。」
そうして4人は家の外に出た。すると、
「おせーぞ。お前ら。」
「もうちょいで置いてくとこだったよ。」
先に出たディノとケンが待っていた。
「なーんだ。二人とも待っててくれたのね………ま、いっか。みんなでディノの家まで行こっか。」
「「「「「おーっ!」」」」」
サラ以外の全員が片手を空に突き上げた。
「お、おーっ。」
サラが不思議な顔をしながら真似をした。
「あーっ!ダメダメそんなんじゃ。皆に合わせて。もう一度やろうぜ!」
すぐにケンがやり直しを強制した。リーアがめんどくさそうな顔をしたが、諦めて音頭をとり。
「ハイハイ………。じゃ、せーの…いくぞーっ!」
「「「「「「おーっ!」」」」」」
・・・・・・・・・・・・・
〜帰り道〜
ディノ達は「遠回りのでもいいから綺麗な景色を見て帰ろーぜ。」と言うディノの発想で、村外れの土手を歩いていた。
ピイイイィィィ………
「あ、向こうで『ネック』が鳴いてるぜ!」
ディノが東の空を指差して言う。
「あ、本当だ。」
ケンがディノの指した方向を見て頷く。
「メリア。『ネック』とはなんだ?」
サラがメリアに聞く。
「『ネック』は夕方になると飛ぶ竜よ。体は3〜4メートルで、あまり大きくないけど、立派な翼で飛んでいる。足の爪が発達していて、小さな小動物を捕らえて生きている。主に森の木が住みかよ。」
「へぇー。メリアちゃん詳しいんだね。」
エリーが関心したように言う。
「エリーだって私には描けないような上手くて綺麗な絵が描けるじゃん。」
リーアが皮肉った言い方をする。
「リーアだって私には解けないかけ算ができるじゃん。」
エリーが皮肉った言い方で返す。
「…………なんか、大人の会話っぽいね。」
リーアがエリーの顔を見ながら言う。
「………本当ね………。」
エリーは少し笑いを堪えたように返す。
「「………ぷっ…きゃはははははははははっ!!」」
二人が同時に仲良く笑った。
「………おかしな者たちだな………ふっ……はははは。」
「…く、ふふふふふ。」
つられてサラとメリアが笑いだす。
「…ぶっ…だはははははっ!!」
つられてケンが、
「…くっ…ぷはははははっ!!」
ディノが笑いだす。
「「「「「「あははははははははっ!!」」」」」」
皆が笑い出して、賑やかな時間が流れる。
・ ・ ・
そう。
皆が笑っている時だった。
全てを破壊する。
漆黒の竜が二頭。
飛来したのは。
最初に気づいたのはディノだった。東の空から黒い物が二つ飛んできて、高速で頭上をかすめて飛んでいったのだ。
一瞬にして皆の顔から笑顔が消えて困惑や恐怖に変わる。
「なっ……、なんだ今の……。」
ケンが通り過ぎた飛翔物を見ながら言う。
(………あの方向は確か……村の方向!!)
考えるより先にディノは走り出していた。
「お、おいっ!!ディノっ!!」
追うようにしてケンが走り出す。
「ケンッ!ディノッ!」
つられてエリーが二人を追った。
「エリーッ!!………メリア、サラ、何かおかしい!!行こう!!」
リーアが先陣を切って走り出した。
「あ、ああ!」
「うんっ!」
……………………………………
村の入り口に来たディノは愕然とした。
家が、村が、木が、森が、動物が、人が、皆、燃えていた。黒い炎に包まれて。
村の中央で、黒い竜の一匹が黒い炎を吐き散らし、全てを飲み込んでいた。
竜は村で一番大きな家より遥かに大きく、どっしりと二本の足で立ち、両手の爪で家を、人を、切り裂き、翼が大きく、動かすだけで突風を起こし、黒く光る鱗は矢を、剣を、武器を一切受け付けておらず、両目が真っ赤に染まり、血に餓えた口で全てを喰った。人も、家も、簡単に。
人々の悲鳴が聞こえる。
「たっ、助けてくれぇーっ!!」「痛い、痛い、痛いいぃぃぃっ!!」「お母さーんっ!」「いやあああああああっ!!」「兵士を呼べーっ!!」「熱いぃぃぃっ!!」「わあああああんっ!!」
「う、う、うわああああああああっ!!」
ディノは錯乱した。初めて見る惨劇に、地獄に。
(なんなんだっ!なにがどうなっているんだ!?………家は……?母さん……母さんは??)
ディノは走り出していた。ただ、ひたすら自分の母親の無事だけを考えて。
(あの角を曲がればいつもと変わらない家が………!!)
燃えていた。黒い炎に包まれて。木の燃える焦げた匂いが充満していた。
「う、うわああああっ!!母さん!母さあぁぁぁん!!」
燃えている家に向かって走り出そうとして後ろから腕を掴まれた。
「ディノっ!!待てっ!!今行けば死ぬ!バカな俺でもわかるっ!!」
聞き慣れた声だったが今は関係無かった。
「うるさいっ!!あそこには母さんがいるんだっ!!母さんがっ、母さんがああっ!!」
掴まれた手を振りほどこうともがく。
「落ち着けよディノ!!まだ、あの中にディノの母さんがいるわけでもないだろっ!!もう逃げてるかも知れないぞっ!!」
「うるさいうるさいうるさいっ!!母さんを助けなきゃ!!母さんっ!!母さぁんっ!!」
「ディノっ!!」
がつんっ!!
「がっ!?」
頬に激痛が走った。
殴られたとわかったのはすぐだった。殴ったのはケンだった。
「今は自分の命の方が大切だろ!!俺は知ってるんだぞ!!お前のお母さんはそんなに簡単に死んだりしないって!!」
「ケン……………。」
ディノが落ち着きを取り戻しつつあった。
「ケンっ!!ディノっ!!」
また聞き慣れた声がした。声がした方を向くとエリーがいた。
ガアアアアアアアッ!!
こちらに気づいた竜が咆哮する。
「ひゃっ!!?」
「わっ!!?」
「うあっ!!?」
口々に短い悲鳴を上げた。
竜がゆっくりとエリーに向かって行った。
「あっ…………、あ………。」
エリーが恐怖で身動きができなくなっていた。
「エリーィィッ!!逃げろぉっ!!」
ケンはただ叫ぶ事しか出来なかった。
「う、うわああああ!!」
ディノはただ見ている事しか出来なかった。
竜の手がエリーに迫る。
最後まで読んでくれた方ありがとうございます。
一応……中途半端に切ったのは、この後の展開に迷っているためです。
察しがつく人もいると思いますが、まあ大方、当たると思います。
…………しかし、なんででしょうか……作者は楽しくなってきちゃいました(笑)




