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プロローグ2

プロローグの2話目です。1ではディノの交遊関係について語られました。この話ではディノの家族について触れます。

「全くよー、あのジジイどんだけ俺らコキ使えば気が済むんだよ」

やっと重労働から解放されたケンが愚痴を零しながら地面の石を蹴った。

「ほんとほんと。もう俺くたくただよ。ったくよ〜、野菜ぐらいいいじゃねーかよ〜」

「そう言う割にお前ピーマンとかニンジンとか嫌いだよな」

「うううっせ!!しょーがねーだろ!マズイもんはマズイんだよ!!ってかお前はどーなんだよ!!」

「あ、俺、家こっちだから。じゃね」

「ああ、うん。じあゃな………って話をごまかしてんじゃねーよ!おい!逃げんな!ってなんでこういうときだけめっちゃ足速いんだよ!!」

結局、ケンには追いつけなくて、ディノは渋々家に帰ることにした。家に着き、木で出来た開き戸を開けた。

ガチャ、きぃぃぃ……

木の軋む特有の音を立てて開いた。

「母さん、ただいま。」

家の中には刺繍をしながら自分が帰ってきたことを確認した母親がいた。

「おかえりディノ。じゃ、そこに正座。」

「………はーい。」

またか。ディノは抵抗する気も無く静かに指さされた椅子に正座した。

ディノの母、レクサード・マリアは怒る時、つまり説教なのだが、必ず椅子に正座させて怒るのだ。

「リーアちゃんから聞いたわよ。またファルドおじさんの野菜を盗んだんだってね。」

「………うん。」

「全く………ディノはいつもそうね。嫌いなピーマンが出る時は決まって野菜を盗むのよね。」

「……し、仕方ないだろマズイんだから。」

「だからといって、野菜を盗んでいいなんて言った覚えはありませんよディノ。」

「う………。」

思わず黙ってしまった。

「そんなんじゃリーアちゃんと結婚できないわよ。」

「ううううっせ!だっ、誰があいつと結婚するなんて言ったよ!!」

顔を真っ赤にしてディノは怒った。

「あら、母さんはそれでいいのだけど?だってリーアちゃんはしっかりしてるもの。」

顔をニヤニヤさせながらディノの顔色を伺っていた。

「ま、いいわ。ファルドおじさんにこってり絞られて来たみたいだから今日はこれくらいにしといてあげる。今度また同じことをしたら、外の畑の草むしりさせるからね。みっちりと。」

「………はーい。」

深々とため息をついてディノは椅子から飛び降りた。

ガチャ

「ただいまー。」

「おかえりなさい、父さん。」

ディノの父、レクサード・バルハラスはこの村の近くの城、アルバン城に兵士として勤務している。と聞かされている。毎日夕方にはほぼ必ず帰って来る。たまに夜に城に呼ばれることもあるが、よほどの事がない限りはいつも家でディノの相手をしてくれている。

「お、聞いたぞディノ。また野菜を盗んだんだってな。」

着ていた兵士用の制服を壁に掛けながら言った。

「………うん。」

「ハハハッ、よし今日は剣の稽古を厳しくつけてやる。マリア、夕食は何時ぐらいになりそうだ?」

「そうね……今日は30分くらいで出来るわ。」

近くの水時計を見ながら答えた。

「よし、じゃあメリアも呼んで。」

メリアはディノの妹で、まだ8才なのだが、既に家の家事をほとんどこなしてしまうのだ。

「はいはい。メリアーっ!!」

母が上に向かって叫ぶと、ハーイと返事がして、階段からバタバタと音がなり、メリアが下りてきた。

「なあに?お母さん。」

可愛らしい手製のワンピースを着こなしていて、後ろで縛ったポニーテールが更に可愛いらしさを引き立てていた。

「お父さんが剣の稽古をするから着替えてきなさい。」

「はーい。わかった。」

返事を軽く返したメリアはその場で服を脱ぎだした。

「じゃ、俺は先に外に行くな。」

「わかった。すぐに行く。」

ディノは棚に置いてあった訓練用の木刀を持ち、外に行くと、いつの間にか外に出た父親がいた。そして、ディノと同じ型の木刀を持っていた。

「来たなディノ。では始めよう。」

「はい。」

「構えっ!!」

バルハラスの掛け声と共に二人は木刀をまっすぐに構え、ひと呼吸置いた。

「………始めっ!!」

ダンッ!!

父親の声と同時にディノは前に飛び出し、下から一直線に切り上げた。

(当たった!!)

心の中で勝ち誇った。が、大きく空振りした。

「!!?」

ディノの父、バルハラスはディノの軌跡を読み、紙一重で左にかわしていた。

「良い踏み込み、良い狙い、良い振り方だ。が、本気で最後まで振り抜かなきゃな、途中で速度が落ちた…ぞっ!!」

「イタッ!!」

父の木刀はディノの腕を確実に捉えた。

ディノが叩かれた痛みで手から木刀を落とした。

「〜〜〜ったぁー!!何も本気で打たなくていいじゃないか!!」

叩かれた腕をさすりながら文句を言った。

「何言ってんだ。お前も本気できただろ。それに今の一撃は手加減してやったぞ。」

ディノが落とした木刀を拾い上げてディノに差し出した時だった。

ガチャッ

「お待たせ。」

ようやく仕度ができたメリアが出てきた。

「おお、来たか。じゃあディノ、メリア。お父さんに二人の打ち合いを見せてくれ。」

「はい、お父さん。」

「っしゃー!!負けねーぞ!!」

いつの間にか復活したディノがやる気マンマンで叫んだ。

バルハラスが近くの切り株に座り、あぐらをかいた。

「じゃあ用意………始めっ!!」

父親の掛け声と共に飛び出したのはやはりディノだった。

先程父親に仕掛けた攻撃と全く同じ攻撃だったが、一つ違うとしたら、今度は全力で最後まで振り抜きにいった。

勿論、反応が遅れたメリアは避け切れずにまともに腹部に直撃した。

「かはっ!!」

めきっ…という骨が軋むような音を残してメリアは上空にすっ飛ばされた。そのまま空中で放り投げられた人形のように無造作に舞った。

すぐさまディノは落下位置まで移動して落ちてくると同時に攻撃を加えようと構えた。

「………おかしいな…あんなに高く飛ぶなんて………。」

見守っていたバルハラスが不審そうに宙を舞うメリアを見つめていた。

ディノやメリアが使っている木刀は特別、反発性の高いゴムを使っている訳でも無いし、弾性のある木材を使った訳でもない。ただの家を建てた時の木材の余りで作った木刀、要は木の枝なのだ。だからディノぐらいの子供が体重30キロぐらいの女の子を5メートル近く打ち上げるなど物理的に不可能なのだ。だが、事実その現象が目の前で起きているのだ。

「一体どういう訓練をしたんだ………?」

二人の行動を見ていると一瞬、メリアが揺れたような気がした。

ここでバルハラスは気付いた。飛ばされたのではなく、自ら跳んだのだと。

だがメリアは、空中で体勢を立て直さずにそのまま落下しているようだった。

「うりゃあっ!!」

ディノが自分の木刀が届く位置にまで落ちてきたメリアにまた全力で木刀をぶん回した。

そして木刀が当たるのと同時に、メリアがディノの視界から消えた。

「えっ!??」

困惑するディノが更なる異変に気付いた。

持っていた木刀が、無い。

左右を慌てて見渡すが勿論メリアも持っていた木刀も、ない。

と、突然、世界が反転した。

地面が上に、空が下になったのだ。

それが自分が仰向けにひっくり返ったとわかるのに時間はかからなかった。

メリアが自分に馬乗りの状態になって木刀を自分の喉に二本も当てていた。が、ディノはメリアが目の前から消えた事や、一瞬で仰向けに倒された事や、喉元に木刀を突き付けられている事を忘れるくらいメリアの表情に魅入った。

綺麗で、限りなく無に近い無表情。目が鋭く怪しく黄色く光を帯びていて、それを月明かりが更に際立ててより一層、美しさを増していた。

「そこまでっ!!」

バルハラスが叫んだ。メリアは従うように無表情のままディノからどいた。

ディノは仰向けに倒れたまま何も考える事が出来なかった。

「………ディノ?」

メリアが不思議そうにディノを呼んだ。

呼ばれてからやっと意識を取り戻した。

「なーに呆けてんだディノ。負けたことがそんなにショックだったか?」

バルハラスがにやけながら近寄り、ディノに手を差し延べた。

ディノは差し延べられた手を握ろうとした瞬間、また空振った。バルハラスが手を引いたのだ。

「父さん………。」

「ん?なんだディノ。」

「茶化すのも大概にしろーっ!!」

ディノがバルハラスの急所を狙って足を振り上げた。

「はうっ!!」

見事に股間に直撃した。

「ほおおおあおうお…………。」

言葉にならない奇声を発しながら、ディノの父はぶざまにゴロゴロと転げ回った。

「ふんっ!!」

体についた土を払いながら立ち上がった。

ガチャッ

家の扉が開いてディノ達の母親マリアが出て来た。

「ご飯出来たわよーっ………て、あれ?あなたどうしたの?メリア知ってる?」

ゴロゴロと転がる自分の旦那を見ながら不思議そうにメリアに聞いた。返ってきた言葉は一言。

「自業自得。」

だった。

今回はアップするのがとても遅くなりました。待っていた皆さんスイマセン。(誰も待ってねーよ)こんな出来損ないなこの小説を最後まで読んでくれる酔狂な方が居てくれたりすると作者的に嬉しいです。感想や意見を投稿してくれると尚、嬉しいです。皆さんのご協力をよろしくお願いします。

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