プロローグ1
初めて長編にチャレンジします。ゆっくりと時間をかけて続編を書きたいと思います。気長に見てやってください。よろしくお願いします
かつて世界には竜がいた。
竜は神であり、悪魔であり、正義であり、邪悪であり、同時に『無』であった。
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ラック村
「こらぁーっ!!ディノーっ!!ケンーっ!!またうちの畑の野菜盗んだねーっ!!今日という今日は絶っっ対に許さないよーっ!!」
「へへーっ!!やなこったーっ!!」
「あははははっ!!」
手にいっぱいの野菜を持った10才ぐらいの子供が二人、麦藁帽子のおじさんから猛ダッシュで逃げていた。「しっかしさ、しつこく追うよなファルドおじさんもさ。」
「全くだよ。」
二人はそう言いながら村の中を右や左と翻弄しながら疾走していた。
「ケン!あそこの角を右な!!」
「合点!」
打ち合わせの場所で二人が家の角を曲がった瞬間だった。
「こらッ!!」
ポカッポカッ
いきなり拳が飛んで来て二人の額に当たった。
「てっ!!」
「ぎゃんっ!!」
二人は口々に悲鳴をあげてから地面へとダイブした。
ドザーッ
「ってーな!!何すんだよリーア!!」
ケンが服に着いた土を払いながら憤慨して言った。
「あんた達が枝拾いサボってどこかに行ったからでしょ!!ディノのお母さんに頼まれて探しに来たんだからね!!」
リーアと呼ばれた10才ぐらいの少女は似合わないショートカットをこれでもかと揺らしながら言った。ちなみにディノやケンとは幼なじみである。
「べっ、別にサボってねーよ!!枝拾いが終わったから遊びに行っただけだよ!!」
ディノと呼ばれた少年がリーアの顔から目線を外して反論した。
「ふーん。じゃあ今その手に持ってる野菜はなんなの?」
リーアに指を指されてハッとなって二人はすぐさま盗って来た野菜を後ろに隠した。
「今更隠しても遅いっ!!」
ポカッポカッ
「ってえ!!」
「殴んなバカッ!!」
二人して文句を言った時だった。
「追い付いたぞクソガキ!!」
「うわヤッベ!ファルドのオッサンが来た!!」
「マジで!!」
二人はものすごいスピードで立ち上がると前に走り出したが、
「こらっ!!」
ぱかっ、ぶんっ
「いてぇ!!」
「あぶねっ!!」
リーアの繰り出した拳はケンだけを捉えた。
「へっへっー!!当たんないぜっ!!」
ディノはリーアとファルドを尻目に意気揚々と走り去ろうとしたが、
「きゃっ!!」
前から声がして振り返る時には遅かった。
どーん
「きゃあっ!!」
「うわっ!!」
ディノは前にいた誰かに勢いよくぶつかった。
「ってえな!!今度は誰だよっ!!」
後ろに尻餅を着いたディノは再び憤慨して怒鳴った。
「はわわっ!ご…、ごめんなさいっ!!」
こちらも尻餅を着いていたが、すぐに立ち上がると丁寧にお辞儀をした。
「あっ!!エリーじゃない!」
ディノの後方からリーアの声がした。
「リーアさん!お久しぶりです!!」
エリーと呼ばれた少女はリーアと同年代くらいの娘だった。長い髪がしっくり似合っていて、まるで人形のようだった。
「へえ。おまえら知り合いなんだ。」
ディノが関心しながら立ち上がるとすぐさま後ろから押さえ付けられた。
「さあ捕まえたぞガキ共。今日と言う今日はたっぷりとコキ使ってやる!!」
ファルドおじさんが既に捕まえたケンを抱えてディノを持ち上げた。
「うわーっ!!鬼ーっ!悪魔ーっ!!」
ケンが悲鳴のように叫んだ。
「なっ!!放せーっ!」
ディノがじたばた暴れたが、大人の力に勝てる訳も無く引きずるように連れて行かれた。
「あきらめ悪い奴らよね………あ、そうだエリー、今から家に来ない?」
「え、あ、うん。そうする。」
そう言うと二人はゆっくり歩いて行った。