【6】爆イケとは何か。〜平成チャラ男の言霊、大天使を突き刺す〜
そしてルシアンがバタフライを泳ぎ続ける中――
ロクシーはアーチーボルトの別荘の自分の寝室から、同じく別荘に泊まっているルチアーノとビデオ通話していた。
この空間と回線はイレイナがまじないで作り出したもので、ルシアンにも、万が一にも――妖精王にも聞かれる心配はない。
ロクシーがマッカランをストレートで飲みながら、ニヤリと笑う。
「あんた……早かったわね!
それは認める!
ベストタイミングよ……!」
ルチアーノはタブレットの向こう側で丁寧にお辞儀をすると、話し出す。
「ロクシー先生からのスマホのメッセージを見て、直ぐにイレイナに連絡を取り、五万ドルで地獄からアーチーボルトの別荘まで飛ばしてもらいました!
魔術無効のセレニス州でも、セレニス州を魔術無効にしたイレイナならば魔術は使えますので!」
ロクシーの口元が僅かに上がる。
「良くやったわ!
それにしても……あんた、妖精王を怖がらないよね?
何で?」
途端にルチアーノが目を剥く。
「あんな平成チャラ男みたいな妖精王に、俺様が怯むわけないでしょう!?
それに……妖精の国は“陰と陽”で成り立っている……!
俺様は地獄の王!
つまり悪魔は“陰”の代表なのです!」
そして、ふわっと髪をかき上げるルチアーノ。
「つまり……妖精王でも……陰の代表の俺様は……そう……俺様は……妖精王とは対等なのであります!
俺様、尊い☆」
ロクシーはマッカランを飲み干すと、妖しく微笑む。
「あんたにさあ……ルシアンとアンジュちゃんの“尊い”映像、見せてあげようか……?」
ルチアーノは震える声で「……ハイッ……!」と答えた。
そして、ルシアンが8時間バタフライを泳ぎ続け、アーチーボルトの別荘に戻ると――
誰も起きていないリビングに妖精王がいた。
ルシアンの姿を認めると、嬉しそうに笑い、軽やかに目の前までやって来る。
妖精王はニコニコ笑って言い、タオルを差し出す。
「おつぽよ☆
初対面なのにさあ、俺の距離感が近すぎたよネ☆
メンゴメンゴ!
これ、良かったら使って!」
ルシアンは即座に戦士の眼になる。
『おつぽよ』の意味は分からずとも。
そして恩寵で確認する。
ただのタオルだと――
だがルシアンはタオルを使わず、恩寵を使って一瞬で自分を完璧に乾かした。
――何か罠、もしくは仕掛けがあるかもしれない――
ルシアンの妖精王への警戒は解けることはない。
その態度に、妖精王は心から感動したように言った。
「やべぇ!
ルシアン!
マジ、イケてるぅ〜♪」
ルシアンは妖精王を無視し、誰も使っていない寝室へと向かった。
シャワーを浴び、ベッドに横になり聖なる祈りを捧げていると、ノックの音と共にルチアーノの「ルシアン!」という切羽詰まった声がした。
ルシアンがベッドから素早く起き上がり、ドアを開くなりルチアーノが寝室に入って来る。
ルチアーノは頬を紅潮させ、荒く息をしている。
――もしや、妖精王が……!?
ルシアンが即座に「何かあった!?」と訊くと、ルチアーノはなぜか髪をふわっとかき上げて言った。
「……ズッ友よ……。
俺様はロクシー先生に呼び出されて幸運だった……!
あの、ちゃんちゃらおかしい妖精王がいる……!
つまり、お前の魅力は倍増!
アンジュちゃんは胸キュンしっぱなし!
さあ!
ロクシー先生による、初恋成就のための『対、妖精王の存在における恋の回避法・兼・脚本』だ!
頭に刻めーーー!!」
そしてルチアーノは、やり切った感満載の顔でルシアンに紙の束を渡した。
ルシアンはアンジュが起きてしまうかもしれないと、ルチアーノに静かにしてもらいたくて、紙の束に一瞬手を翳して言った。
「記憶した」
ルチアーノが小躍りして叫ぶ。
「やったーーー!!
じゃあ俺様はアイツの偵察に入る!
じゃあな!」
ルチアーノは来た時と同じように、突然部屋から出て行った。
ルシアンは静かに椅子に座り、目を閉じて考える。
――なぜ、突然、回避法と脚本なのだ?
そして0.5秒で、その考えを消し去る。
今は妖精王が地上に来た。
そちらの方が最優先事項だ、と。
そうして――
ルシアンが一時間掛けてセレニス州全土で妖精王の影響がないか確認し終わり、影響は一切ないと判断してリビングに行くと、アーチーボルトが笑顔で言った。
「ルシアン!
腹減っとらんか?
昼食を作るから、食べんか?」
そして声を落として続ける。
「……妖精王がいるなら、恩寵は大切に使った方がいいじゃろ?」
ルシアンが静かに答える。
「理にかなっているな。
ありがとう、アーチーボルト。
頂こう」
アーチーボルトがうんうんと頷き、自慢の髭を撫でる。
「よし!
ほら、リオがおるから栄養管理は得意なんじゃ!
ダイニングルームで待っててくれ!」
そう言い残し、アーチーボルトは駆けて行く。
ルシアンがリビングルームに入ると、ロクシーがタブレットを見ながらカフェオレを飲んでいた。
そしてルシアンの姿を認めると、鋭く一言。
「座って」
ルシアンが無言でロクシーの前に座ると、ロクシーが口を開く。
「ルチアーノから、正式に初恋成就の脚本を頼まれたんだよね。
でもさ……」
ロクシーが軍師の目になる。
昨日の恐怖に震えていたロクシーは、どこにもいない――
ロクシーの鋭い声は続く。
「ルチアーノは分かってない……!
あの妖精王……癖が強すぎる!
だから回避法も作成した。
つまり、ルチアーノが渡した『対、妖精王の存在における恋の回避法・兼・脚本』ね!
ルチアーノが昭和のおじさんなら、妖精王は平成チャラ男!
価値観が違う。
ノリが違う。
ルシアンはルチアーノには慣れてるだろうけど、妖精王はね……。
ルシアンが真面目に正論を説いても、「やべぇ!」「分かるぅ〜♪」「それな☆」で終わるのよ……!
ルシアン、絶対巻き込まれちゃ駄目だよ?
――来た……!」
ルシアンがチラリと目を向けると、妖精王が庭から歩いて来た。
腰まである長い金髪をなびかせ、優雅に歩く姿はまさに妖精王。
そして妖精王は庭からダイニングルームに入って来ると、二人を見てニパッと笑った。
「わ~お!!
イケメンと美女!
ヤバいヤバいヤバい!」
ロクシーは完全に無視して、タブレットのキーパッドを叩いている。
妖精王は気にする風もなくダイニングテーブルにつくと、ルシアンに言った。
「さっきさあ〜やっぱお散歩?
してるアンジュちゃんとすれ違ったけど、アンジュちゃんって爆イケだよね☆
ルシアンが惚れちゃうのもワカル〜♪」
ルシアンは至極真面目に問う。
「――アンジュさまが爆イケ……?
爆イケとは?」
妖精王が小首を傾げつつ答える。
「んー……つまり!
ルシアンは超絶イケメンじゃん?
その逆の女の子❤️
鏡見てみ?」
ルシアンが音もなく椅子から立ち上がり、「ロクシー、アーチーボルトに昼食は後で食べると伝えてくれ」と言うと、ロクシーが何も言う隙もなく、ルシアンはダイニングルームから出て行く。
そうして――
自分の寝室に戻ると、部屋を恩寵で囲った。
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