表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
大天使の初恋を、妖精王が台無しにする物語。 〜永遠の恋人は、まだ恋人未満〜  作者: 久茉莉himari


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/11

【4】妖精王――触れた者は、生きながら幽霊になる。

ロクシーは一拍置くと、勢い良く話し出した。


「私が頭がおかしいか、クスリでラリってるんじゃないかって言ったのよ!

それで『私を』救急車に乗せようとした!


だから私は一芝居打って、警察と救命士にお帰りいただいて、モーテルに血塗れの彼を運んだの。


まず、私一人でチェックインした。

アンジュちゃんには――見えてないけど、もし彼が起きてドアを開けたりした時に備えて、車に残ってもらった。


それから、車に寝かせてある彼を迎えに行った。


今思うと変だけど、彼はすごく軽かったから、私一人でも簡単に運べたの!」


「軽い……!?

あんな大男で、キンキラキンに飾り付けてるヤツが……!?」


アーチーボルトが思わず声を上げる。


ロクシーが即答する。


「そうなの……!


そしたら、その途中でモーテルの従業員に会ったの。

『こんな雨の中、女性お二人で何してるんですか?手助けしますよ』って、親切に言ってくれた。


――そしたら、急に怖くなったの……!


警察や救急車が来ている時は、とにかく私の話を信じてもらって、彼を助けてほしくて必死だったから、彼が他の人に見えないということは、私の中で後回しになってたんだと思う……。


でも、一般人にさらっと『お二人で何してるんですか?』と言われたら、急に恐怖が襲ってきた……!


私以外は彼が見えないんだと、自覚したの!


それで、リオに電話をしたのよ!」


そうしてロクシーは一気に話すと、深く息を吐いた。


アーチーボルトが微笑んで、ビール瓶を差し出す。


「そうだったのか……。

大変じゃったな、ロクシー。

まあ飲め。喉が乾いたじゃろう」


「うん!ありがとう、アーチー!」


ロクシーはビールを一気飲みすると、ルシアンをきっと睨む。


「次はルシアンだよ。

私が轢いた“人間もどき”の正体はなんなの?」


ルシアンが答える。


「その前に一つ質問をさせてほしい。


ロクシー、彼を発見した側に、大きな木が生えていないか?

樹齢千年くらいの」


「……そういえば……樹齢千年かは分からないけど、大きな木はある!


ゲームの世界で“大きな木”が重要な要素になってるから、確かイベント大会があそこに決まったの!」


ルシアンが頷き、全員を見渡して毅然と言う。


「皆に守ってもらいたいことがある。


彼には絶対に触るな。


ロクシーは彼に触った。

正確には、彼の血に触れた。


だからロクシーにだけ彼が見えた。


――ロクシー、彼の血に触れなかったか?」


ロクシーが、はっとした顔になる。


「そういえば……警察が来るまでに、息をしてるか確認したくて首に手を当てた……。


それと、傷口を押さえようとして衣装をめくったわ……!

傷口は分からなかったけど……」


「アンジュさまは?」


すると、アーチーボルトが叫んだ。


「……見えてないから、無意識に触ってしまったのではないか!?


だが、なぜアンジュだけ彼は見えず、意識がないのだ!?」


ルシアンが苦しそうに答える。


「アンジュさまは……特殊な体質なのだ。


だから、ロクシーよりも症状が酷い。


奴も見えず、意識を奪われた。

少しの間は動けていただけで、モーテルに着いた時にはもう意識は無く、機械的に動いていただけだ」


ロクシーが小さく頷く。


「そうね……。

私はアイツの怪我のことで頭がいっぱいだったから……。


確かにアンジュちゃんはおかしかったけど、気が動転してるのかと思ってた……。


そして、バスルームで倒れたの……」


ルシアンの厳しい声が響く。


「やはりな。


――いいか、彼の血は人間にとって『悪』だ。


だから私は、アンジュさまとロクシーに清めの儀式を行った。


彼の血が付いた手で目元を触った可能性があるから、眼球と粘膜もだ。


彼の血は、皮膚からも粘膜からも吸収されてしまう」


アーチーボルトが眉をひそめる。


「では、やはり怪物ではないのか?」


ルシアンが首を横に振る。


「もっと悪い。彼は――妖精王だ」


「妖精王!?」


ロクシーとアーチーボルトが同時に叫ぶ。


ルシアンが至極真面目に、


「そうだ」


と答えると、アーチーボルトが笑った。


「妖精とは、あれじゃろ?

生クリームが大好きな働き者の小人とか、ティンカーベルのような。

その王様?呑気な王様ではないか!


怪物よりもっと悪いとは……!」


ワハハと笑うアーチーボルトだったが、ルシアンが無表情で一瞥すると、その笑いはすぐに止んだ。


ルシアンが厳かに語り出す。


「いいか。


妖精は人間が考えるほど身近でも、親しみやすい存在でもない。


妖精は我々天使と同じ系列にあり、序列は一番下だが――神が人間のために創られた。


違うのは、我々天使は神の戦士として、命令を即座に実行できるよう天界に存在しているが、妖精は人間に夢や教訓を見せるための“ファンタジー”として、独立した次元の世界を持つということだ」


アーチーボルトが身を乗り出す。


「ならば……アイツが妖精王なら、妖精は異なる次元から地上に来ておるということか?」


ルシアンが頷く。


「そうだ、アーチーボルト。


違う次元といっても、例えるなら一枚の透明な紙で隔てられているだけの世界だ。


選ばれた妖精は、ある条件を満たせば、その紙を抜けるように地上へ行き来できる。


神は人間を愛している。


だからこそ、人間に楽しい夢やお伽噺の世界を垣間見せ、心を潤わせるために妖精を創ったのだ。


それに、まだ人間が今ほど文明的に進化していなかった頃には、その夢を“教訓”としても使われていた。


そして妖精の世界は、宇宙の法則と同じく、“陰と陽のバランス”で成り立っている。


善良な妖精もいれば、ずる賢い妖精もいる。


ただし、悪魔や怪物のように“邪悪”ではない。


だが――その分、解釈が広すぎて統制するのが難しい。


それを一手に統べる存在、それが妖精王だ」


「でもさあ」


ロクシーが頬杖をつき、疑問に満ちた瞳でルシアンを見上げる。


「悪魔や怪物のように邪悪じゃないんでしょ?


それなのに、なんで妖精王が見えるようになった私は“拷問”されたの?」


ルシアンが眉間に皺を寄せる。


「ロクシー、“拷問”ではない。“清めの儀式”と言ってくれ。


君は妖精王の血に触れた。

だから妖精王が見えるようになった。


アンジュさまは意識を奪われた。


妖精王の血に触れた者は、二十四時間以内に清めの儀式を行わなければ――

生きながら幽霊になる」


「いっ……生きながら幽霊になる!?

じゃあ私、もう死んでたの!?」


ロクシーの叫びに、ルシアンは重々しく頷く。


「そうだ。


徐々に弱り、やがて死を迎える。


だが本人は、自分が死んだことを理解できない。


死神も迎えに来ない。


悪霊となって永遠に彷徨い続けるのだ」


すると、アーチーボルトが真剣な表情で訊いた。


「じゃあ、わしとリオは?

スマホのカメラ越しでアイツを見たが……?


それに、ルシアンは天使だから見えたってことか?」


ルシアンは淡々と答える。


「そうだ。


私は天使だから、同系列の存在は見える。


だが、あの部屋の妖精王が“本当に意識がない”と確信できなければ、私も動けなかった。


もし敵意があり、私と妖精王があの場で戦えば――

同列の存在同士の衝突となり、被害は莫大だっただろう。


アンジュさまはもちろん、君たちも無事では済まなかった。


だからこそ、リオとアーチーボルトに先に部屋へ入ってもらったのだ」


アーチーボルトが、


「なるほど」


と頷く。


ルシアンが続ける。


「それと、“生きながら幽霊になる”のは、妖精王の血に触れ、かつ肉眼で見た者のみだ。


君たちは妖精王の血に触れていないし、肉眼でも見ていない」


アーチーボルトが今度は胸を撫でおろす。


「良かった!


じゃあ妖精王の血に触れなければ、妖精王は見えないんじゃな?」


ルシアンが深いため息をつく。


「それが……そうでもない。


妖精王が“存在を見せたい”と思った人間には、見えるようになる。


まじないではなく、妖精王が“そう思った”瞬間に、だ。


先ほど、妖精王は、リオもアーチーボルトも見えただろう?


逆も然り。妖精王が“見せたくない”と思えば、その瞬間から見えなくなる。


妖精王は、癖のある妖精たちを束ねるに相応しい――極めて強力な存在なのだ」


「じゃが……アイツ、怪我をしておったよな?


血塗れじゃったではないか!


傷口は見えんかったが……。


妖精王を倒す方法があるのでは!?」


アーチーボルトが確信を持って言うと、ロクシーがアーチーボルトを見て、うんうんと頷く。


ルシアンが腕を組み、再びため息をつく。


「妖精王は、親である前代の妖精王が死んだ時、男女を問わず直系の第一子が王座を継ぐ。


つまり、今の妖精王の親は、すでに亡くなっているはずだ。


だが、それが理解できない。


妖精王を傷つけられるのは、妖精王よりも強力な“血縁者”のみ。


つまり――本来なら、誰も彼を傷つけられないということだ。


それに、地上に降りた理由もまだ分からない」


その時、凛とした声が響いた。


重い空気が澄み切り、清められるかのような――


「妖精王は、ほとんどの生涯を妖精の世界で終える。


地上に来るのは、それ相応の理由がある時だけだ。


それに――彼は妖精王だ。


自己回復能力を持っている。


だから、血にまみれていても“傷口が無かった”のは当然だ。


そうだな、ルシアンよ……!」


「アンジュさま……!!」


アンジュが青い瞳を輝かせ、全身から神々しい光を放ちながら、ルシアンを見つめていた。

ここまでお読み下さり、ありがとうございます(^^)

明日も17時更新です☆


Xはこちら→ https://x.com/himari61290

自作のキービジュアルやキャラクターカード貼ってます♪


〈ルシアンとガブリエルをもっと知りたいあなたに…〉


【完結】大天使と“ズッ友”になりたい地獄の王。 〜柄物スーツに一目惚れしてから、すべてが始まった件〜


https://ncode.syosetu.com/n5195lb/


【完結】大天使ガブリエル、地上に爆誕!〜神の命がふんわりすぎて、祈ろうとしたら迷子になりました〜


https://ncode.syosetu.com/n2322lc/


【完結】大天使たち、日本昔話に異世界転生する。〜初恋成就作戦を決行するポンコツ地獄の王に振り回されています〜


https://ncode.syosetu.com/n7024ld/


【完結】大天使ルシアン、最強捜査官になる〜神の沈黙と愛の証明〜


https://ncode.syosetu.com/n5966lg/


【完結】大天使と最強捜査官のクリスマス戦線 〜セレニスに集う者たち、愛か使命か〜


https://ncode.syosetu.com/n9868lk/


【完結】大天使と最強捜査官のクリスマス戦線〜聖夜の余白の物語〜


https://ncode.syosetu.com/n9097lm/


【完結】地上でいちばん可愛い正月旅行〜天使と悪魔も福来たる、温泉・TOKYO・バタフライ〜


https://ncode.syosetu.com/n5279ln/


【完結】大天使、悪魔のお見合いを阻止せよ!?〜地獄の王がお見合いを断ったら、大天使に婚約者が爆誕!〜


https://ncode.syosetu.com/n2903lp/


【完結】地上でいちばん難しいバレンタインの贈り物〜天使が天使に恋してます!?悪魔と軍師も混ざる秘密の奇跡〜


http://ncode.syosetu.com/n2458ls/


を読んで頂けるともっと楽しめます(^^)


こちら単体でも大丈夫です☆

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ