【3】大天使は友に命じた。「刺していい」と。 〜絶対命令〜
その刹那――
ルシアンが大天使の剣を抜いた。
聖なる光が無数に弾け、溢れ輝く。
まさに聖剣。
その男は確かに、地下に監禁したはずの血塗れの男だった。
だが――
今は、一滴の血すら、身体にも、服にも残ってはいない。
白いローブを翻し、男は言った。
「ちょいちょいちょい!大天使さまが来るトカ何事!?」
ルシアンは答えず、その男を見据えたまま言った。
「リオ!
奴が見えているか!?」
ルシアンの聞いたこともない厳しい声に、リオが焦って答える。
「み、見えてる……!
あれ!?何で!?」
「それは今、どうでも良い!」
ルシアンの厳しい声は続く。
「君はこの大天使の剣を持ち、奴を監禁部屋に戻せ。
もし、指一本でも逆らったら……刺していい」
「さ……刺す……!?」
リオの声が震える。
ルシアンは揺るがない。
「そうだ。刺せ。
私は清めの儀式をやらねばならない!」
リオがハッとして、ルシアンの剣に向かって手を差し出すと――
剣はリオの手にピッタリと貼り付いた。
もう、離すことは出来ないように――
リオが剣を持つと、黄金と宝石を散りばめた王冠を被る男は、にっこり笑った。
「逆らったりしないよー!
俺のせいだって分かっちゃったし☆
だから監禁部屋とやらで、大人しくしてまーす!
リオ!行こうぜ!」
リオが目を丸くして、その男とルシアンを交互に見る。
ルシアンが深く頷く。
そして、その男の後ろをリオが大天使の剣を持って歩き、二人は部屋から去って行った。
一人残されたアーチーボルトが、じりじりとリビングで待つ中、二時間弱でアンジュとロクシー、ルシアンの三人が戻って来た。
アンジュもロクシーも、新しいニットワンピースに着替えており、髪も綺麗に乾かされている。
「二人とも!大丈夫か!?」
アーチーボルトが大声を上げる。
ロクシーは自分の横にいるルシアンを見上げ、「ルシアンに拷問されたけど平気」と笑って答える。
アンジュはぼんやりしていて口もきかず、ルシアンに支えられていた。
ルシアンが苦い顔になり、
「あれは拷問じゃない。
今のアンジュさまと君に必要な清めの儀式だった。……辛かったのは認めるが」
と言って、アンジュを見つめる。
ロクシーが、そんなルシアンの肩をポンと叩く。
「分かってるよ、ルシアン。
海より塩辛いお湯に沈んだせいで、腫れて真っ赤になった目も治してくれたし、感謝してる。
ありがとう!」
ルシアンがちらりとロクシーを見て、
「……どういたしまして」
と呟く。
アーチーボルトも笑顔になると、
「これでアンジュとロクシーは清めの儀式を終わらせたのじゃから、危険は無いんじゃろ?」
とルシアンに訊く。
ルシアンが答える。
「ああ、もう大丈夫だ。
アンジュさまは意識がはっきりされるまで、もう少し時間が掛かるが」
すると、アーチーボルトが続けた。
「じゃあ地下にいるアイツは何なのか、そろそろ話してくれんか?」
ルシアンがロクシーに向かう。
「その前に、万全を期すためにロクシーの話を先に聞きたい」
ロクシーが、
「いいよ」
と言ってソファに座る。
アーチーボルトがソファに座り直し、ルシアンは長いソファにそっとアンジュを横たえ、その横の一人掛けのソファに座った。
そうして、ロクシーが三人をぐるっと見渡し、話し出した。
「最初は、私のハマってるオンラインゲームのコスプレ大会に、アラブの王子様がどーしても参加したいから、身分がバレないようにしてくれっていう仕事の依頼だった。
つまり、私が行きたかったコスプレ大会にタダで行けて、報酬も出る!
イベントも盛りだくさんで、超楽しみだったわ。
アンジュちゃんもちょうどオフだから、一緒に行こうってことになって。
でも、アンジュちゃんも一緒だから、下手なところに泊まれない。
だから、アーチーボルトの別荘に来ようとしてたの!」
アーチーボルトが目を見開く。
「そんな連絡は貰っとらんぞ!?」
ロクシーがジロッとアーチーボルトを見る。
「だ・か・ら!
サプラーイズ!ってやるつもりだったの!
それとリオからメッセージ貰ってて、この別荘にいるって知ってたし!
それに、アンジュちゃんがコスプレとか言うと、イレイナがうるさいし、ルチアーノは何もしなくてもうるさいから!
アンジュちゃんとコスプレ大会を純粋に楽しみたかったの!
分かった!?」
「な、なるほど……。
話の腰を折ってすまん……」
ロクシーの迫力に、アーチーボルトが小声で詫びる。
ロクシーは満足そうに頷き、再び口を開いた。
「そうしたら、ゲーム仲間から連絡があったの。
『折角だから前夜祭をやらないか』って。
まあ前夜祭って言っても、バーベキューみたいなもん。
場所は明日のイベントのすぐ側で、集まるの二十人前後の、いつもゲームでチームを組んだりしてる親しい仲間だけだし、天気予報も晴れだったし、よしやろう!ってことになって。
でも、会場の近くに着いたら、突然土砂降りの雨が降って来た。雷も。
それでバーベキューは中止になったって電話が来て、私たちはモーテルに向かうことにしたら――
車で何かを轢いたの」
「アイツを車で跳ねたのか!?」
と、アーチーボルトが悲鳴に近い声を上げる。
「アーチー!
話の腰を折らないって、さっき言ったよね!?
跳ねたんじゃなくて、轢いたの!
――でも普通は、道路に人間が横になっていたとしたら、誰だって絶対に気付くでしょ?
ブレーキをかけて、轢いたりしない!
私もそう。
だけど、道路には何もいなかったから、普通に走ってた。
そしたら、何かを轢いた感触がタイヤから伝わってきて、慌てて車を止めて、車から降りたら、アイツが倒れてた……血塗れで。
それに、あの衣装でしょ?
てっきり、明日のコスプレ大会に出席する人で、前夜祭にも来たんだと思ったの!
私はすぐに警察を呼んだ。
警察と救急車は、すぐに来たわ。
でも、誰にもアイツが見えないの!
アンジュちゃんにも見えてなかったのよ!」
アーチーボルトの喉が、ごくりと鳴った。
「そして私は、怪我か何かで倒れていた動物を轢いたんじゃないかってことになった。
それで、その“動物”は私に轢かれたショックで蘇生して、びっくりして逃げたんだろうって。
でも、私には血塗れの人間が見えてる。
治療してあげたくて、必死に訴えたわ!」
ウンウンと頷くアーチーボルト。
ロクシーが低い声で続ける。
「そうしたら今度は、動物を轢いた衝撃で私が頭を打ったんじゃないかって、警察と救命士が言い出した!
私は頭なんか打ってないし、早く彼を病院に連れて行ってあげてって言い続けた。
――そしたら今度は、何を言い出したと思う?」
「な、なんじゃ……!?」
アーチーボルトの声が上ずった。
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