12 ボランティア(1)
プリンセスとマーガレットの二人はそれぞれ教室に戻って授業を受け、放課後になると校門で合流した。そしてシャトーに来るとリス君が二人にミルクティーを入れてくれた。
「マーガレット様、昼間は危ういところを助けていただき、ありがとうございました。」
「授業中にたまたま校庭の方を見たらあなたが見えたからできることをやったまでよ。今後ともよろしくね。」
ミルクティーを飲みながら、妹のマーガレットは事の経緯をゆっくり話し始めた。
「私、子供の時からお姉さまを慕ってきたのよ。ほら、いろんな遊びを一緒にして楽しかったわよね。そんなお姉さまが急にいなくなってしまって私はひどく狼狽したわ。
そんな時、爺からビデオメッセージが届いて、お姉さまがこの地球にいることが分かったの。私、いてもたってもいられなくなって、爺の手引きで3週間前にここにやってきたの。
私はアルテミス星を去る前に特別なプログラムで日本語を集中的に学習してきたの。爺はすぐに私をここに連れてくるつもりだったらしいんだけど、私はいきなりここに来たらお姉さまに叱られるんじゃないかと思って、昼間は学校で授業を受けて、部活動はどこにも入っていないので、その足である施設へ行ってボランティア活動をしているの。それも毎日よ。
「どんなボランティアをしているの?」
「この地球って惑星は戦争や紛争が絶えないところみたいで、多くの人々が家を追われて難民として他国に流入しているの。その施設ではアフガン人、シリア人、ウクライナ人、その他難民としてやって来て生活が苦しい人たちの世話をしているの。
中には技能実習生として希望をもってこの国にやってきたけど、悪徳経営者のもとで一日中働かされたうえで、ろくに給料も貰えない学生たちもいるのよ。」
「へえ、遠く離れた惑星に来てすぐにそんな活動を始めるなんてやっぱりあなたは活動的ね。どんなところに住んでるの?」
「ボランティアの人たちが寝泊まりしているアパートよ。家賃はとっても安いの。」
「でもボランティアじゃ収入が入らないじゃない。家賃もだけど飲食費はどうしているの?」
「爺の作った人間型アンドロイドたちが工場やコンビニとかでアルバイトしていて、そのお給料から少しいただいているの。ほら、アンドロイドたちって飲食しないし、しかも太陽光で動くからほとんど維持費もかからないんだって。」
「でもかなり切り詰めた生活をしてるんじゃないかな。どう、このシャトーに一緒に住まない?滅多に研究室から出てこないけど爺もいるし、ここ地球にはアルテミス星人は私たち3人だけなのよ。ひっそりと、仲良く暮らしましょうよ。」
「えっ、本当にいいの?私、てっきりお姉様に叱らるとばかり思ってたわ。」
「バカね。こんな可愛い妹に冷たくするわけないでしょ。」