プロローグ
桃桜高等学校。それは、静岡県に位置する、極めて平均的な偏差値を持つ高等学校。
他の学校と違う点と言えば、部活動が盛んであること。盛んとは言っても、ただ部活動が賑やか、と言うわけではない。
どの部活動も、大会やコンクール、コンテスト等で必ずトップを争っている学校だ。
野球部、サッカー部などの運動部はもちろん、吹奏楽部、茶道部などもその限りだ。
どの部活も充分に実力を奮っている中、周りから「落ちこぼれだ」と罵られる部活動が存在する。
その正体は、箏曲そうきょく部である。
筝曲部の人口は比較的少なく、静岡県内の大会であれば、初めての大会が県大会から。そして、県大会で勝ち残った高校が、全国大会へ出場。と言うのが一般的だ。
その大会では二十校が出場するが、桃桜高校が残した成績は、常に最下位。
これは桃桜高校の実力が、決して低いと言うわけではない。
その理由は実に単純な話。他の高校があまりに強すぎるのだ。
桃桜高校箏曲部の活動日は週五日。月曜日から金曜日までの五日間
だが、その練習量じゃ足りない!と現実を突きつけるような順位。
桃桜高校では今日も、ラケットがテニスボールを弾く音、合奏でぴったりと重なった吹奏楽の和音。そして、華麗な箏の音色が聞こえる。