表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
溺れるほど愛した百合の花  作者: 七色果実
【SEASON2】
13/20

13輪目【小悪魔は無邪気に笑う】

「ねぇ。ちゅー、しよ」


 義理の妹のゆいが突然そんなことを言い出した。

 少し前に親の再婚で家族となったあたしたちは、二歳違いの姉妹である。


 今、あたしたちは、あたしの部屋で各々まったりとしていた。


 あたしはテレビゲームに夢中だったが、ゆいもベッドの上で漫画に夢中……だったはず。


 テレビゲームを中断すると、あたしは背後を振り返り、そして視線をゆいに向ける。


「は? 急にどうしたのよ?」

「どうもしないよ。あかりお姉ちゃんとちゅーがしたくなったの」


 意味が分からない……。

 あたしはテレビに向き直り、再びゲームの続きをする。


 が、ゆいが後ろからピッタリとくっついてきて、ゲームどころじゃなくなってしまった。


「いやいや、ちゅーがしたくなったって、あたしたち姉妹なのよ」


 正気に返れと、わたしはイヤイヤをする。


「でも、血は繋がってないじゃん」

「そうだけど……」


 血が繋がっていなければ良いという話ではない。


 あたしはそれをゆいに伝える。


 しかし、『いいからいいから、そういうのいいから』と、強引にチューを迫るゆい。


 耐え切れなくなったあたしは、ゆいのお腹に肘打ちをかます。


「ちょおっ! 痛いじゃんか!」

「ゆいが変なことしようとするからでしょ!」

「……だって、わたしあかりお姉ちゃんのこと好きだし。チューくらい良いじゃん」

「姉妹でなんて絶対に駄目! もし遊び半分でそんなことしたら、あとできっと後悔するわよ」


 本当は怒っていないが、軽く怒ったような態度を取るあたし。


 それに対し、ゆいは沈黙。


 しばらくして、泣き声が聞こえたので、あたしはばっと背後を振り返る。


 あたしに言われたことが余程ショックだったのか、ゆいは大粒の涙を零しながら大泣きをしていた。


「えっ! えっ! ええっ!?」


 あたしは吃驚し、ゆいを抱き締める。


「ごめん! あたしが悪かった! ちょっと強く言い過ぎた!」

「……もう怒ってない?」

「怒ってない怒ってない。というか、最初から怒ってはいないよ」

「……あかりお姉ちゃんはわたしのこと嫌いなの?」

「嫌いなわけないじゃない。ゆいはあたしの大切な妹だよ。だから、変なことはしたくないんだ」


 ゆいを抱き締めながら、背中をポンポンと叩く。


「……本当?」

「当たり前じゃない。あたしの素直な気持ちだよ」

「良かった! ……でも、そのままわたしを抱き締めたままで聞いて。わたしね……」


 何かを打ち明けようと、ゆいが一呼吸置いた。


 しばらくして、小さく口を開く。


「実はわたし……、あかりお姉ちゃんのこと……」

「な、何よ?」


 突如として緊張感が訪れる。


 (まさか姉に対して告白するつもり!?)


 あたしは全身にじっとりとした嫌な汗をかく。


「あのね――!」

「う、うん……」

「あかりお姉ちゃんのことは、お姉ちゃんとして好きなの」

「は?」


 一瞬、何を言っているのか分からなかった。


 予想外の告白に吃驚したあたしは、ゆいの顔をまじまじと見てしまう。


「だから! あかりお姉ちゃんのことは、お姉ちゃんとして好きなの!」


 モジモジと赤面しながら、ゆいは再び普通のことを言った。


「い、いや、分かってるわよ。そのままの意味で受け取っていいのね?」

「そうだよ。ぷぷぷっ、どんな意味で受け取ろうとしたの?」

「知らないわよっ! このバァーカ!」


 この小悪魔めが。腹が立つが正直少しドキドキしてしまった。


「わたし、お姉ちゃんとはずっと一緒にいたいなぁ。だって、からかい甲斐があって面白いんだもん」

「あたしは面白くない! もう早く自分の部屋に帰って!」

「まあまぁ。そんなに怒ると、小じわが増えるよ」

「小じわなんか最初からないわよ!」


 あたしとゆいはジタバタと小競り合いを続け、そのあと、互いにベッドの上に乗った。


 そして、どちらからともなく、『ねぇ』と言うと、二人してお先にどうぞと言った。


 あたしたちはぷっと吹き出す。そして、手を繋いでこう言った。


「「死ぬまでずっと一緒にいてね」」


 互いに互いが事実上のプロポーズである。


 あたしはプラトニックな関係もアリだと思う派だ。


 だから、ゆいとはきっとそういう関係になるんだと思う。


 未来のことは誰にも分からない。


 でも、一つだけ分かることがある。


 あたしたち姉妹の絆は、この先もずっとずっと続く。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ