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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
異世界情報収集作戦

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第66話 異世界情報収集作戦2

「信世君の真っ赤な髪の毛。それと同じ色してなかった?」

「その通りだが……何か知っているのか?」


 俺の本来の髪質とはまるっきり違う、エクステで貼って付けただけに見えるこの嫌に目立つ紅色の髪の毛。これが生えたのは『奇跡』を初めて使った辺りからだったか。それ以降、『奇跡』を使う度にその紅色の髪は徐々にだが範囲を広げている。

 一度の使用でどれくらい広がっているのか明確な量は定かではないが、調子に乗って使い続けているといつかは髪を全て紅色に染めてしまうのは想像に難くない。この髪の侵食を抑える方法を俺が知っている訳がなく。そもそもこの髪が何か害を与えるものなのかも分からない。

 シオンから何か聞き出せれば良いのだが……『奇跡』を使うのも良いがこの髪の侵食が気になる。無理やり言わせる前に本人の意思で言ってもらいたい。


「勿論知ってるよ。まぁ、信世君の思い悩んでいるであろう髪の色が変わるのは全く分かんないけどね」

「そうか……それを教えてもらったりとかは?」

「別に良いよ」


「良いのかよ」

「うん、そんな隠す事じゃないし。髪の毛乾かしてもらってる間暇だしね~」


 話している間ずっと長い髪の毛の先端を指で遊ばせている彼女を見ていると兎に角暇なのだと察せられる。母や紡祇の髪を乾かすので般的な男性と比べて長い髪を乾かす機会はあるが、シオン並みの長さの髪を乾かすのは初めてで、まさかここまで時間が掛かるものなのかと驚いた。

 だからこその雑談でもあるのだが、この髪の長さならもう少し深堀りした話も出来そうだ。


「じゃ、暇潰しがてらちょっとだけお話するね」

「今度は長くさせるなよ」

「もちろんだよ」


 彼女は軽く笑い飛ばして言う。

 流石に今日のあの昔話は食卓で軽く話すには長すぎたのだと自覚したのだろう。多少は反省していると良いのだが。


「じゃあ、お話させてもらうね」

「ドライヤー終わるまでには終わらせろよ」

「まったく、心配症だなぁ」


 そうやって茶化しあった後、彼女はコホンと言って一拍置いて話を始める。


「信世君が見たっていう真っ赤な髪の男の人。その人は僕のお兄ちゃんだよ」


 それだけを言って、彼女は話すのを辞める。

 これは……俺の反応待ちか。

 ちょっとした面白い種明かしみたいな話だからか。俺の驚くような反応を求めているのだろうか。


「…………そうなのか」

「驚かないんだね」


 そう言う彼女も驚いている様子はない。予想は付いていたのだろうか。


「まぁ、一応考えてはいたからな」

「そっかぁ」


 あの髪と口しか分からなかった男がシオンのお兄さんだったのは別に意外ではない。たしかに、シオンとそのお兄さんが偶然にも紡祇と俺を別々に幽霊の如く同化していたのは驚きだったが、シオンの今までの言動でなんとなくそうなのではないだろうかと察しは付いていた。

 最初に彼女と対面した際のあの眼差し。俺の目を見ているようで一切見ていない、俺以外の何かを見ているようなあの眼差しは、やはり俺ではなく俺の中に居るお兄さんを見ていたのだと今になって確信する。


 そしてもう一つ、疑問も生まれる。

 彼女はこうもお兄さんに執着している様な言動をしているというのに、最初に俺から奪おうとしたのはお兄さんではなく何故『奇跡』だったのか。手段がそれしかなかったのか、お兄さんを奪うのは後でも良かったのか。

 あと少しでドライヤーが終わるので、話は程々にして終わらせよう。


「色々と聞きたい事は沢山あるが、また後で良いか?」

「もちろん。あとでスーパーに行く時にでもお話しよっか」

「また行くつもりかよ」


 やりたい事があるのは結構な事だが、少しは俺の財布事情も心配して欲しいものだ。

 会話が終わるのと同時にドライヤーが終わる。

 洗面台に置いてあるヘアオイルを手に付けて、万遍なく彼女の髪に塗り付けて髪の手入れが終わったのを確認して出した物を片付ける。


「よし、終わりだ」

「ありがと~」

「今度からしっかり乾かして出ろよ」

「は~い」


 解放されるやいなや、トテトテと鳴りそうな軽い足取りで洗面所から出て行く彼女。

 出した物を片付けて、無駄に広いこの家の使われていなかった一部屋にある引き出しから俺の服を取り出す。

 ここは元々、紡祇の母親が使っていた部屋だったそうだ。

 今は泊りに来た客人用スペースとして使っていて、よく泊まりに来る俺が使わせてもらっている。最近では俺の着替えを置いてもらっていたりしているので、制服を持ってくればこの家で泊まって学校に行くなんて事も出来る。

 まぁ、その学校は今日から夏休みに入っているのだが。


 俺と紡祇は部活に入っておらず、赤点も取っていないので夏休みの間に学校に行く用事は一切ない。

 翔流は夏休みの間も部活があるとは言っていたが、アイツなら結構な頻度で部活をさぼっているのであまり関係ないだろう。

 リビングに戻ると、翔流ときりるんが未だにゲームを続けていた。

 精神年齢が近いから馬が合うのだろう。こんな遅い時間だというのに双六ゲームでずっと大はしゃぎしている。

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