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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
メイド喫茶『とらんす♂』

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第63話 閑話 メイド喫茶『とらんす♂』3

 そうやって急ぎつつも丁寧に仕上げて10分もせずに完成させる。

「よしっ! できたよ!」

 椅子から立たせて姿鏡の前に連れて行く。

「どうどう? 可愛くない?」

 スタイルの良い美人さんになった信世に抱き着いて感想を求める。

 こういう初女装には「これが……ボクっ!?」みたいなのがよくあるけれど信世は一体どんな反応するだろうか。信世は身長があるし、着ているメイド服もフリフリ少な目でスリムに見えやすいデザインがシャープな雰囲気がある物で可愛いというより格好良いイメージに近いからあまり「可愛い」とは思われないかもだけど、それでもこの変わり様には良い反応を期待してしまう。

 姿鏡の前に小さなメイドと高身長の格好良いメイドさんが並ぶ。

「ほう……」

 まじまじと鏡の前で自分の姿を見る彼に期待一杯で反応を待つ。

 顔を上下左右から全て見て、一度身を退いて鏡越しに背中を見る。くるりと一回転したりスカートの端を軽く持ち上げてお辞儀したかと思えばニコッと可愛らしい笑顔を作って__全ての動作を無言で行う。

 なんだコイツ可愛いな。

「信世……もしかして凄い気に入った?」

 あまりのノリの良さに若干不安混じりつつ聞いてみる。

 元の顔の良さやスタイルの良さもあってこの姿を気に入ってしまうのも無理はない……のだけれど信世の感性はちょっとズレてる所があるからこの推測が当たってるのか自信がない。

 女装にハマってもらうのは別に良いんだけど、信世のスペックで極めようとしたら完全な女性に見紛うくらいにはなりそうだから、あんまりドはまりされると格好良い信世が見れなくなりそうで少し不安だ。

「んー、あー」

 ボクのそんな些細な不安をよそにボクの方を向いて信世らしくない言葉にならない返答をする。

「あーあー」

 かと思えば急に高い声を出す。

 カラオケで裏声を出す時に近い声を出して徐々に低くする。

「違うな。あー」

「何してるの……?」

 ただただ低くしていくだけじゃなくて低い声……じゃなくてこれは地声かな。地声と裏声を合わせるような声の出し方をしてちょっとずつ声を調整して__

「あーあー。うん。もう少し高く」

 そうやって何度か調整を重ねてただ高いだけの声から話声に近いような声の高さと喋り方にしていく。

 地声と裏声を合わせるのって確かミックスボイスって言うんだっけ。

 昔、頑張って出そうとして信世と一緒にカラオケで練習してたけど結局上手く行かなかったなぁ……信世は二回目で成功させてたけど。

 ミックスボイスかぁ……ここで働き始めてすぐの頃に女声を出そうとして、調べた動画で女声を出すにはミックスボイスをどーたらこーたらって見た覚えがあるなぁ……。

 やな予感がするなぁ……。

「もしかしてだけどさ……女声作ろうとしてる?」

「うん……よし。うんっ!」

 作ろうとしているというかほぼ完成というか、これってもう__

「お待たせっ! できたよ」

 信世のお母さんを更に若々しくしたようなギャル味がある明るい女子高生みたいな声でボクに向かって可愛らしく話してくる。

 …………出来上がっちゃってんじゃん。

 ものの数分で完成した信世の女声に恐れ戦いてなにも言えなくなる。

 成長スピードがバトル中に成長する主人公レベルなんだよ。アニメとかの創作物には「あんま現実味ねぇな」とか言いながら見てるクセに自分が一番現実味無い事してるじゃんか。前々から何でも出来るとは思ってたけどここまで即座に仕上げるとは思ってなかった。

 ボクだって女声頑張って練習してたのに、まだ一カ月だけの練習期間だけどその頑張りを数分で追い越さないでよ。

「凄い……凄い可愛いよ」

 完成度が想定以上過ぎる……実はこういうお店で働いた事があったのだろうか。信世に限ってそれは無いんだろうけども疑ってしまいそうになる位の適応スピードだ。

 これなら即戦力でお店に出れるはず。

 お料理も信世の腕前なら全部作れるし、見た目もあの店長に負けず劣らずのクオリティ。声も完璧で、あとはお話の仕方と仕草くらい。

 仕草については最悪そういうキャラで押し通せるかもだし。これなら行けるはずっ!

「じゃあ、店長の所に行くよっ! このくらい出来てれば新人さんでもいいよって言ってくれるはずっ!!!」

「アポ取ってねぇのかよ」

「うわビックリした!? その姿の時は可愛い声のままにしててよ!」

「はぁい」

 見た目は完璧に女の子なのに格好良い声出されたらギャップで死んじゃうでしょ。と言っても信世には芳しい反応は来なさそうなので飲み込んでおく。

 手を取って化粧室を出て、項垂れてぼそぼそ何か言っている店長に気付いてもらえるように目の前で仁王立ちする。

 同じ様な言葉をループしてあーでもないこーでもないと言っている。

「てんちょ~。おーきーてー」

「ぅあぁ……」

 少ししたら気付いてもらえるかと思ったけれど、どうにも一切反応が無いので仕方なしに肩を揺すり店長から聞いた事の無い地声らしき男声の呻きを鳴らして気を引く。

 けれど反応は無い。この人このメンタリティでどうやって店長になったんだ。

「どうしよ。店長がゾンビみたいになっちゃった」

「まさに生ける屍ってやつだね」

 口調は可愛らしく作っていても表情だけ見ると舌打ちしてそうな軽蔑の表情をしている。そういう特技なのだろうか。声と表情のちぐはぐ具合が凄まじくて笑ってしまう。

 顔と声が違う人格持ってるじゃん。すんごい器用だね。

「店長さん起きてください~」

 ボクと入れ替わって店長の肩を揺する信世。

 前後に揺れるだけじゃなくて左右にも大きく揺らす。ボクと違って揺らし方に容赦が無い。

「うぇ……んぁ」

 その甲斐もあって店長が苦しそうな声を上げて体を揺らした犯人である信世の顔を見る。

「店長さん。気付きましたか?」

「…………誰この男の娘」

 ジッと見詰めて数秒。一言目から性別を当てる店長。

 こわい。

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