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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
異世界のお話

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60/65

第60話 出費そして放心

ようやくですよ。ようやく『奇跡』についての説明が進みます。本当にね。遅いねよね。


それでは、本編へどうぞ

~~~~~~

 時間は午前の1時。

 こう表現すると一瞬昼の1時なんだと錯覚してしまいそうになるが、外は街頭や窓から漏れる光が目立つ時間である。よく深夜帯を起きている紡祇や知り合いの配信者の言い方を借りるならば深夜25時と言った所か。

「ありがとうございましたー」

 店員の声を背に受けてコンビニから出る。

 荷物持ちとして連れてきた両手がレジ袋で塞がった翔流、揚げ物を小さな口で美味しそうに食べる短パンニーソスタイルのシオン、そして、片手をレジ袋で、もう片方の手の中に一枚の長いレシート持って歩く俺の珍妙な三人で深夜の街を徘徊する。

 見た目は筋肉質な成人男性と一般的な男子高校生と誘拐されていそうな幼女だ。夜遅くというのもあって犯罪臭が溢れ出している。

 店員からの目線が大変痛かったが、コンビニに入った途端にシオンが見た目相応の女児らしさ全開で「深森みもりお兄ちゃん、天馬てんまお兄ちゃん」と言って知り合いのお兄ちゃんと遊びに来ている態で接してくれたお陰で事なきを得た。

 会話の中で「紡祇つむぎお姉ちゃん」も言っていたので、たまにこのコンビニを利用している俺と紡祇への配慮もしてくれたのだろう。

「いやぁ、シオンさん流石っス。幼女味溢れて最高だったっスよ」

「でしょ~。このくらいちょちょいのちょいだよ」

 その女児の演技を利用して我儘言って色々な物を買わされたのは大変不服だが……。

「一万……コンビニで一万…………」

 値段の割にあっさりと吐き出されたレシート凝視して受け入れ難い現実をどうにか上手く飲み込もうと努力する。

 ま、まぁ、道中の会話で色々と情報は貰えたからな。うん……プラマイ…………マイナス……いやプラスだ。プラスだと思い込もう。そうしたい。いやそうしよう。

 パンパンに中身を詰め込んだ最大サイズのレジ袋二つと俺の片手にぶら下がるもう一つの容量一杯まで詰め込まれたこれまた最大サイズのレジ袋を恨めしく睨んで、本人には言えない鬱憤をそこで晴らす。

「これで……この言動で成人女性か…………」

 完璧な女子小学生の演技をやりきった彼女に感心と畏れを込めて皮肉交じりに小さく言葉を放つ。その言葉が彼女に届いていたとしても、俺の惨敗した姿の前では負け犬の遠吠えにしか聞こえないのだと自覚した上で尚、言ってしまいたくなる。

 そう、この見た目小学生のシオンは俺達よりも年上のお姉さんなのだ。

 しかも成人女性。二十歳になったばかりの大人のレディーというやつだ。道中の雑談で教えて貰った。

「んー? 信世君が何か言いたそうにしておりますなぁ~」

「なんもねぇよ……。なにも言えねぇよ……」

「コンビニで一万とか見た事ねぇぞ。見事に嵌められてんなぁー。たはぁ~ふはぁーへっへっへっぐはぁ」

「お前の分は後から請求するからな?」

 シオンと一緒に調子に乗っている馬鹿の脚をローキックで崩してストレス発散に使う。

 流石の筋肉量と体幹の良さでコケる事は無かったが、膝の裏を狙って蹴ったのでそこそこのダメージは入ったみたいだ。塞がった両手のレジ袋を落とすまいと片足立ちで滑稽に歩いて着いて来る。



 この馬鹿へのストレス発散を終えて多少は気が晴れた。

 そのついでにシオンから道中の雑談で得られた情報を簡単に纏めよう。

 一つ。シオンの年齢は二十歳である。

 先程言った通り彼女は二十歳。日本では立派な成人女性である。

 なのに何故大部分が少女らしい言動なのかは、会話やシオンの昔話で推測出来る。

 ずっと狭いコミュニティで過ごしていたからだ。

 彼女の昔話のほとんどは彼女の兄で構成されていた。大層大切に甘やかされて育ったのだろう。親についてはまだ聞けていないが、そういった話題に少し触れると即座に話を逸らしたり「知らない」と言って拒絶する辺り何か訳がありそうだ。

 今は大して重要な情報ではないから深堀りしなかったがいつかは聞いてみたいと思う。

 二つ。魔法の存在の有無とそれを使えるかどうか。

 魔法自体は存在しているらしい。が、この世界では使えないみたいだ。仮に使えたとしても、彼女がここに来る前の世界で『奇跡』使い相手に使っていた『奇跡』特効魔法である『魔力砲』とやらは使えない。他の魔法なら、自身の魂を切り取ってそれを素材にすると生活にちょっと使える魔法を何度か使えるくらいは出来るらしい。

 魂を多く切り取れば精神崩壊や人格破綻が起きてしまう。生活用魔法の為に精神崩壊をするのは割に合わなさすぎる。という理由で試しに使った時以外は一切使わないようにしているらしい。

 そして三つ。『奇跡』の種類について。

 俺達に宿っているこの『奇跡』。時間が足らなかったのであまり聞けていないが、どうやら『奇跡』の能力の種類に法則性は無いらしい。例えば某夏をループする物語みたく「目を〇〇」するとか、某刀を収集する物語みたく(一部刀とは言い難い物はあった気はするが)「刀」に関連しているとか、とにかくそういった法則性は無く。強いて言うなら「魔法」に関連した能力しか無いと言っていた。

 魔法…………範囲が広すぎやしないだろうか。

 異世界物が流行りに流行っている現代での「魔法」の概念は「ほぼ何でもアリ」だ。メカメカしい物は科学みたいな雰囲気があるが、それ以外のほぼ全ては魔法でどうにか出来る概念だという印象がある。そもそも科学の枠組みに入れたとしても「高度に発展した科学は魔法と区別がつかない」という言葉まである始末だ。この世のほぼ全てを魔法の概念に当てはめる事だって出来る。

 コンビニに到着する直前にこの話題を話していたもんだから、買い物している最中にもこの考えが頭の中を巡ってあまり集中出来なかった。

 シオンの幼女演技も原因の一つだったが、これも含めてロクに集中せずに買い物した結果がこの一万円超えのレシートである。

 一万…………電車でプチ旅行出来るくらいの値段だ……。

 よし忘れよう。一万円の事は無かった事にしよう。

 手の中に残っていた無駄に綺麗に印字されている憎たらしいレシートをクシャっと丸めてレジ袋に放り…………入れる前に値段だけ確認して計算しよう。

 大丈夫。今は夏休みだ。夏休み前から誘われている紡祇のバイト先の特別報酬付きバイトとやらを受ければ今日の分を余裕で賄える。

 実質、この大事な情報達を先んじて手に入れるのと恥を捨てて出勤する特別報酬付きバイトの等価交換だ。重要な情報と丸一日分のバイトとの交換なら十分な元が取れている。むしろ得だ。

 うん…………。

「信世君が紡祇君の記憶含めて今まで見た事ない顔してる……」

「どえらい顔だなぁ……俺が半分負担してやっから。ほら、アイスでも食って気分上げてこうぜ? お前メロン味好きだろ? メロン型アイスだぜ? 自分で食いたくて買ったんだろ。スプーンも持てよ。あっレシートは写メ取らせてくれ。後で電卓で計算しとくよ」

「ありがとう……お前の最大限の励ましが心を癒してくれるよ……」

「信世君が紡祇君の記憶含めて今まで見た事ない翔流君への感謝の目を向けているっ……!!」

「これが俺への過去最高の感謝なの!?」

 おちゃらけている翔流にツッコミを入れる気力も無く貰ったアイスを食べる。そのついでに持っていたレジ袋を翔流に渡して両手をフリーにする。

「翔流君……こりゃ信世君ガチへこみしてるよ。可哀想だよ」

「シオンさんが手加減しないから……ほら、ここまで自腹切ったんだから信世もなんかしたい事あったんだろ? 紡祇以外に採算度外視で奢るとかしないんだしさ」

「そうだな……メロン美味しい……」

 美味しい。カップのメロン美味しい。もぐもぐ。

「ダメだ、急な想定外の出費で放心してやがる」

「うん……とりあえず励まそっか……」

 二人がなんか言ってる……メロンアイス美味しい。

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