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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
泣いても笑っても男の娘は可愛いんだよ

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第5話 事件

 あれから20分間。紡祇をお姫様抱っこしたままここまで歩いて来た__なんてことはなく。普通に二人で並んで歩いてきた。

 道中は彼の機嫌を取るためにコンビニでドリンクやドーナッツを買いなおしたり、どこまで俺達のことを把握しているか調べるために最近起きた出来事だったりを聞いていたのだが、特段彼が変な事を言う事は無かった。

 一つの差異もなく、紡祇が知っている事は知っていたし、紡祇だけが知らない秘密もしっかり彼は知らなかった。

 そして__

「なにこれ……」

 裕太の家がとんでもない事になっていたのも知らなかったようだ。

 写真で見るよりも荒れ具合がより酷く見える。よく見てみると、広範囲に亘って血肉が飛び散っているのが分かる。道路側にも少し飛び出ているくらいだ。

 ここ辺りの人混みは翔流と連絡した時よりも随分と落ち着いたようで、今は現場を調べている警察しか居ない。いや、現場を調べる人は警察ではなくて検察といったような……まぁそんな細かいことはどうでも良い。

 俺の隣で唖然として立ち尽くす紡祇。こっちの方が心配だ。

 不健康そうな青白い顔で顔に手を当てている。この不愉快な激臭を嗅ぎたくない為か、吐き気を抑える為なのか、どちらか定かではないが気分が良くなさそうなのは明白だ。

 それもそうだろう。あの大きな血だまりから発せられる不快感を催す強烈な激臭を嗅いで平然といれる無神経な奴は早々居ない。

 平和ボケ国家の日本の中でそんな神経している日本人なんて一桁パーセント存在してるかどうかなくらいだ。現に俺もこの激臭で少し具合が悪くなってしまっている。

「ちょっと……お手洗い行って来る……」

「存分に吐いてこい」

「うん……」

 青ざめた顔をして近場の公園の公衆トイレに駆け込む紡祇。

 激臭もそうだが、仲が良い友人の家がこんな事になっていたら気分も悪くなるものだ。

 先に写真で確認していたから俺は覚悟していたが、やはり唐突にこの状況に出会うとああなってしまうものなんだな。

 しかし、裕太の家跡地に集中してくれて助かった。ここからだとカーブミラーで丸見えなんだよな。

 彼女を気の毒に感じつつも、都合良くこの場から去ってくれた事に感謝して、道路の曲がり角まで歩いて行く。

 この辺りはあまり遮蔽物が無くて隠れる場所も少ない。必然、こういった遠くの様子が見にくい場所に潜むしかなくなってしまうのだろう。

「なんでお前がここにいんの?」

 曲がり角を曲がってすぐの所で、電柱に隠れてずっとこちらの様子を見ていた男に声を掛ける。

 高身長で全身が分厚い筋肉に覆われている鍛え抜かれた身体。服の上からでも相当な筋肉量だと分かる図体。見た目だけならギリギリ大人と言っても誤魔化せるだろう。身体と比べてアンバランスさは拭えないが高校生としては一般的な顔。夏らしく服は薄着なのに、筋肉と服に染み付いた汗の跡で涼しげとは真逆の暑苦しさすら覚える見た目。

 彼は天馬 翔琉。

 俺の記憶が間違いないなら、今頃紡祇の家に向かってもらっているはずの男だ。

「おせぇぞ信世!!」

 紡祇が去ったのを見て彼が少し苛立った様子で怒鳴って来る。

 色々と言いたいことがあるのだろう。移動中に連絡したとは言え到着には時間がかかり過ぎているし、本来連れてくる予定にない紡祇も連れてきている。

 最初に言っていた事とは全く違う事が起きているんだ。どんな文句言われても仕方がない。

 しかしそれは翔流にも当てはまる事。

 先に紡祇の家に行ってくれと伝えておいたはずなのに何故か裕太の家跡地で道草食っていやがるコイツに文句は言われても怒鳴られる筋合いはない。

 かと言って俺が文句を言える立場でもないのも理解している。

 計画が狂ってしまったのは事実だが、早い段階で翔流と合流出来た事を喜ぶべきだ。

「すまん。いざこざがあって遅れた」

「お前の事だからどーせ無神経な事言って喧嘩でもしたんだろ」

 何故バレた。

「うっ……」

「お前……図星かよ……」

 間髪入れずに事実を言い当てられてしまいそっぽを向いて誤魔化す。

 言動で察せられる所もあったのだろうか。表面上ではなんとも無さそうに振舞っていたつもりだったが、偽紡祇を泣かせてしまった負い目が残っているのは隠しきれなかったか。

「そんな事よりも」

「露骨な話逸らしだな」

「そんな事よりもぉ! こうしてる間にも紡祇が帰って来るかもしれないだろ。さっさと情報交換しようぜ」

「仕方ねぇな」

 幸い偽紡祇が向かった公園ここから見える位置にある。彼女が出てくるタイミングで解散すれば余裕で間に合うはずだ。

「んで、さっきの子がお前の言っていた自称紡祇か?」

「その通りだ。クセとかは完全に紡祇と同じだが、体は別人だ」

 会話を通じて感じた事も多少の補足として伝える。

 出会ってからずっと気になっていた事だ。

 彼の行動、言葉、表情、一挙一動全てが紡祇の影が見えて仕方がない。

「体は別人って……。お前が艶縫のことに関して体以外完全に同じって言うならそれはもう艶縫本人だろ」

「何言ってんだ。体が違うなら別人だろ」

「いやまぁ、それは確かにそうだけどよ……」

 なにやら色々と言いたそうにしている。おかしなことでも言っただろうか。

 ずっと彼と紡祇を重ねて見てしまっているが、見た目が違うのであればそれは本人ではない。

 現実である以上、見た目が違う人間が同一人物だなんて事はありえないのだから。

「てかよ、別人だって断言するならなんで連れてきてんだよ。」

「色々あったんだ。仕方なくってやつだな」

 こちらとしても何が起きたか一つずつ説明してやりたいが、紡祇の家の状況の方が重要だ。

「その色々が気になるんだが…………先に紡祇宅での成果を話すぞ」

「話が早くて助かる」

 偽紡祇には翔流が来ている事は一切伝えていない。この二人が遭遇するのはなるべく避けたい所だ。だからこそ、彼女が吐いて戻って来るまでのこの短い時間でなるべく多くの情報を共有しておきたい。

「結論から言うが、紡祇宅に紡祇は居なかった」

「そうか……収穫無しか」

「だが、犬耳を付けたイケメンが居た」

「どういうことだ」

 お前、結論から言うって言っただろ。犬耳付きのコスプレイケメンが居るじゃねぇか。

 あまり時間を掛けてはいられないので口を閉ざしたまま心の中で突っ込みを入れる。

 だが、イケメンか。偽紡祇とモールで話していた時にそんな事言っていたような、言ってなかったような。

 イケメンと言えば紡祇がよく熱心に語っているソシャゲのキャラが思い浮かぶが……あぁ、思い出した。

「そういえば、自称紡祇が朝起きたら『穂波坂 銀之助』が居たって言ってたな」

「それを先に言わんかい! 情報伝達下手くそかよ」

 仕方ないだろ。さっきまで忘れていたのだから。

 それに、俺は基本的に興味無い奴の話は頭の中にほとんど残らない。クラスメイトと話している内容なんてその日の内に忘れてしまう。酷い時だと数分他の人と会話を挟むと全部忘れている時がある。

 逆にだ。逆に何故そうも興味無い人の事を覚えていられるのだろうか。気にするだけ頭を使って疲れるだけだと思うのだが。

 たしかにクラスメイトとは最低限の関係を持っていた方が得なのは理解出来る。だからと言って友人との貴重な時間を割いてまで興味のないクラスメイトと話して無理に話を合わせて疲れる必要があるのだろうか。

 と、度々友人達に言い訳をするが、その度に「お前が面倒くさがりなだけだ」と言われて飽きられてしまうのだ。

 以前、他人に興味無いのがあまりにも酷過ぎて紡祇から怒られたので、それ以降少しは記憶に残そうと頑張っている。おかげで、高校に入ってからはクラスメイトとの会話が増えて友人が多くなってきた。

 その友人の内の二名が裕太と翔流だ。

 その片方は絶賛音信不通の行方不明なのだが。

「それで、その『穂波坂 銀之助』さんはどんな人だって言ってたんだ?」

「わからん」

「お前はもう少し他人に興味を持とうぜ」

 呆れ混じりに言われてしまう。

 興味の無い人間からの興味のない話題にそこまで耳を傾ける程の器を俺に求めないで欲しいね。

「すまんな。諦めろ」

 こればっかしはすぐには直せないもんなんだ。

 その後、割愛するが翔流から紡祇宅や裕太宅についてもう少し詳しく聞くことにした。

 裕太宅跡地にある例の中央にあるデカいあの血肉と服がごちゃまぜになった血だまり。周辺に散っている衣服や小物の残骸から、この周辺で朝から行方不明になっている7名のものだろうと推定されているらしい。

 また、裕太とその両親の安否に関してだが、近場で裕太の両親と思われる男女二名の生首が落ちていたという情報が出たという物だった。両親がこうなっているなら裕太は……。

 夏休み初日から相当グロテスクな話だ。血だまりに生首。早めのハロウィンが到来したのかと錯覚してしまいそうになる。

 まぁ裕太の事だ。真夜中にコンビニにこっそり出掛けるなんてよくある。スマホに連絡が無いのも、どうせ家に置きっぱなしにしていて裕太がコンビニに行っている間に家と一緒に粉々になったのだろう。そうなのだろう。きっと。

 そう思いたい。

 また、紡祇の家の周りでは何も起きてなかったみたいだ。せいぜい銀髪犬耳イケメンが紡祇の家から出てきたくらいで、それ以外の異変はなし。一つも家は粉々になってないし、不審者が出たという情報も、誰かの叫び声もなかったそうだ。

「今のところ、裕太も紡祇も行方不明か……」

「いや、多分あの自称紡祇が紡祇本人だと思うぞ」

 未だに何言ってんだコイツは。人が一夜にして他人になる訳ないだろ。

「まぁ、裕太に関しては警察に頼むとして、紡祇の方は手がかりがいくつかあるしな。お前が見た銀之助っぽいイケメンに関しては自称紡祇に聞いた方が早いだろうし、なんなら一緒に紡祇の家に行った方が良い。自称紡祇連れて家にもう一回行くぞ」

「あいよ」

 翔流との情報交換を終えて一度スマホを確認する。

 未だに裕太からの連絡は無し。裕太の事は心配だが、手掛かりが全くと言って良い程無い以上、一番何かが出来そうな紡祇の件から終わらせた方が合理的だろう。一つずつ終わらせていけば心理的負担も楽になる。

 本音を言えば、裕太と紡祇の件の元が同じだったら良かったのにと考えてはいるのだが、裕太の家の惨状を見た際の偽紡祇のからしてそれは無いのだろう。

 分からない事だらけだが一つずつ解決していこう。今は紡祇の件からだ。

 それに、もうこれ以上は変なことが起きないだろうからな。まだ起きるなら俺はキャパオーバーになって変な事の原因に奇声を上げて跳び蹴りする自信がある。これ以上紡祇の捜索の邪魔をしないでくれ。

「なんだあれ」

 俺がスマホの通知を一通り確認している間に翔流が何か発見したようで、俺の肩を叩いて何処かに指を指し示してくる。

 指された場所は裕太の家の目の前だ。

 そこには、紡祇と向かい合うように傷んだ白髪の女が腕組んで立っており、その周りを守るように警察と見知らぬ男達が囲っていた。

 言ったそばから変な事起きるのはやめてくれませんかね。

明確に能力持ちが分かる人物登場しましたね。

文字数が多かったので二つに分割しました

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