第49話 異世界人シオンちゃん
キャラ紹介。元の世界に住んでいた頃のシオンちゃんでございます。
名前:シオン
性別:女
年齢:20歳
誕生日:現在秘密
身長:150㎝
体重:40㎏
・異世界人
・ブラコン
・綺麗な銀髪を腰辺りまで伸ばしている。
それでは本編へどうぞ。
僕の元居た世界。魔法が当然のように使われていて、同時に一般人が外に出歩けばすぐに終わってしまうような魔物がゴロゴロ存在している世界。
その世界で、僕はお兄ちゃんと二人きりで森の奥で暮らしてたんだよ。
別に街や集落が存在してないって訳じゃなくて、僕達兄妹がたまたまそこに暮らしてただけ。そうなったのは諸事情あるんだけど……まぁ、今は話さなくても良いかな。
森の中で暮らしていただけじゃあどんな暮らしだったかピンと来ないよね。こっちの世界の物事で例えるなら、交通機関が一切無くて人一人居ない山奥みたいな所だよ。そこら辺に野生の動物とか魔物がうろついてる感じ。割と危ない所だね。
君達ならゲームやアニメとかで似たような世界は知ってるでしょ? そうそう、最近OVAが出たらしいあの作品だよ。信世君の黒歴史の一部でもあるよね。
そう睨むなって。一時の気の迷いと親切心の空回りでしたあの行動は紡祇君の記憶越しにしっかり確認して僕だって感激したんだから。よくやれたもんだね。
本当にごめんって。顔が怖いよ。
お話の続きをするね。
さて、そんな割と危険な所で二人暮らしをしていた僕等の、この世界に来るちょっと前のお話。君達が満足するまで話そうか。
昔々……って程じゃない最近の話。
いつも通り、魔物討伐とパーティメンバーの特訓に付き合ってるお兄ちゃんの帰りをご飯作って待っていた。
この時点では、『奇跡』なんて言葉は聞いた事が無かった。
ただ、魔法とは違う不思議で強力な力があるのは知っていた。お兄ちゃんの方針でそれの正体が分かるまで使用するのは控えて魔法の練習をするように言われていたから、仕方なく暇があれば魔法の練習として調理に魔法を使ったり、捕まえた魔物に使ったりして遊んで……じゃない魔法の練習していた。
翔琉君、何か聞きたそうだね。どんな魔法が使えるかって?
そうだね……。お兄ちゃんが模写してきた本の内容なら全部覚えたから、元の世界で普及している家庭用の魔法と、戦闘用の魔法なら全部使えるよ。その中でも、お兄ちゃん以上に回復魔法と補助系の魔法が得意かな。
お兄ちゃんよりも凄いって事は世界狙えるからね。世界の上澄みだよ。その分野だけなら世界最強名乗れるからね。
えっへん。
それと、今、信世君が一番気にしてそうな事も教えようか。
その魔法が今使えるかどうか。それでしょ。
予想は付いてると思うけど結論だけ言うと使えないよ。使えるけど使えない。
僕としてはこっちの世界で魔法を再現したいけど、生憎この世界には魔法の餌になる魔力が全く無いし、体の作りがこっちの世界用に少し作り替えちゃっらから自分で魔力を生成するのも出来ないよ。まぁ、魔力さえあればいつでも使えるけどね。
君が強力すれば出来るってどういう……あぁ、君の『奇跡』で創れば良いんじゃないかって事?
不可能だよ。信世君の『奇跡』は自由度がかなり高い物だけど『奇跡』と魔力は兎に角相性が悪くてね。魔力自体を生み出す『奇跡』は存在してるけど、そういう例外以外は基本的に魔力を作るなんて事は出来ないよ。
…………質問は終わりかな? 終わりみたいだね。
必要な知識以外は後で説明するから、細かい所はまた後で答えるよ。まずはお話を聞きなさい。
さてと。続けよっか。
~~~~~~
いつも通り、僕は大人しく魔法の練習をしながらお兄ちゃんの帰りを待っていた。
今日は雨なので魔法だけで室内の掃除だ。
家の隅々にある埃を全て宙に集めて丸めて燃やして、塵にしたら外の地面に埋めて自然に還す。
この埃を集める作業が意外と大変で、埃は些細なゴミの集合体みたいなものだから、魔法で一括でやると魔法の回路がこんがらがりやすくなるから、埃の種類をいくつかに分けて選ばれたものを回収する。みたいな魔法の回路になる。
これが複雑で手間も掛かって、同時に使用する魔法が増えるので魔力の消耗もかなり激しくて、魔法の細かい作業をする練習にはもってこいだ。
「うわぁ、髪の毛凄いなぁ……」
魔法の最適化もさせたいので、集めた埃の塊からどういうゴミが入っているのかも細かく見ている。
内訳の大半は皮膚と髪の毛だ。特にこの魔力の残滓を帯びてキラキラした銀色の髪の毛。これの量がとんでもない。
僕に抜け毛の病気があるとかそういうのじゃなくて、単に一本辺りの長さが長いから合計量が多く見えているだけなのだ。
お兄ちゃんに褒められて腰辺りまで伸ばした長い銀髪。これが健康的な人間と同じペースで毎日毎日極少量抜け落ちているので、例え本数自体は少量でも数日経ってしまえばこんな塊にもなってしまう。
にしても多過ぎないだろうか。集めて洗ったらぬいぐるみとか作れそう。
どうしよっかな。毛皮とか調達しに行って僕とお兄ちゃんのお人形でも作ろうかな。それならお兄ちゃんの抜け毛も集めないと。
床に落ちている中から一際目立つ魔力を帯びた紅髪だけを採取して瓶に保存する。
だけど、落ちた分だけでは当然足らず。他に落ちている所がないか探してみるけれど、大体は保存状態が悪い。
そもそも床に落ちてる分だから綺麗な訳がないんだけどね。綺麗には出来るけど繊維の状態が悪い。
「髪の毛髪の毛……陰毛でも可。あっ! てことは」
毛がいっぱいある所といえば大きく二か所。お風呂と寝室だ。
お風呂は汚いので、比較的状態が良さそうな寝室へと向かう。
自分とお兄ちゃんの枕元を探してみると、やはりそこには銀色の抜け毛と紅色の抜け毛が落ちてある。
「これなら作れそうかな」
状態の良い抜け毛を一本一本魔法で拾って瓶に詰めていく。同じ瓶に入れると混ざってしまって仕訳けが大変なので、見た目そのままで中身を拡張してある一種の収納型魔道具にしたポーチから、もう一つの瓶を取り出して色別に毛を分けて入れる。
毛を集めるだなんてなんとも呪物の素材集めみたいだなぁ。と呪術らしい自分の動作を見返しつつ、ふと昔読んだ本を思い出す。
そういえば、遠くの国だと好きな人の髪の毛や皮膚を使ったアクセリーを身に付けて互いに生霊で護るという文化があると、お兄ちゃんが買ってくれた本で読んだ事がある。
当初は10歳であまりそういう文化の理解が出来なくて「だいぶ狂った文化だなぁ」とは思っていたけれど、20歳にもなった今なら分かる気がする。これは相思相愛の二人ならどの国でもやりかねない文化だ。魔物や病でいつ死ぬか分からないこの世界で、愛する人を護り抜きたいと考えれば自然とそういう発想は湧き出る物である。
しかも、その文化がある国は呪物が発達しているそうで。そういったアイテムがいくつもあると聞く。
単純に願いを込めるだけのお守りもあるし、外出する時にも使える色々な効果がある呪物も沢山ある。勿論、呪物が発達しているという事は魔法陣の研究も進んでいるのは間違いないだろう。
魔法とは知識と魔力が大事だ。僕が強くなってお兄ちゃんに安心してもらう為にも、早く行ってみたい所である。
最近は色々と忙しいみたいで、前みたいに王都とかに連れてってもらう事は減ったけれど、お兄ちゃんがその国に行く時は連れてってもらうように駄々こねてやろう。
床でじたばたしてやる。




