第47話 ブラコン
ブラコンって、ブラジャーコンテストの略称としても使えそうですよね。
なんだよブラジャーコンテストって。勝手にやってろ。
それでは、今回はブラが必要無い位に貧なシオンちゃんがブラコンを若干発症してる回です。
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テーブルの真ん中には大きなボウルに入った素麺。各々の目の前にはデミグラスソースを掛けたハンバーグにブロッコリーを添えた皿と、それとは別のお茶碗に盛り付けられた白ご飯。それと刻みネギをまぶした麺つゆを入れた小さな透明のグラスがあった。
テーブルの端っこにはチューブの生姜が一つ。手が長い信世君が一番取りやすい位置にあるのは彼が皆に言われたら渡す為か。それとも落ち着きが無い翔流君ときりるんが焦って取って散らかさないようにする為か。
わさびのチューブだけは既に紡祇君の麺つゆのグラスにセットされていた。素麺を食べる時は毎回付けているから、信世君が先に用意しておいたやつだ。
「すっげぇ美味そうだな! あっ信世、生姜取ってくれ」
「あいよ。15cm入れるぞ」
「定規と同じ長さじゃねぇか。自分でやるよ」
「ご主人、お箸使いにくいのだ」
「仕方ないなもう……。フォーク持ってくるから待ってて」
「分かったのだ!」
頂きますと同時に賑わう食卓。翔流君は生姜をたっぷり入れられそうになるし、紡祇君は子供のおもりをするみたくフォークやティッシュを用意してきりるんのお世話している。
まるで家族で食卓を囲んでいるみたいな。そんな感覚。
懐かしいなぁ。お兄ちゃん以外とご飯食べるのって何年……何十年振りだっけ。ずっと2人きりだったから覚えてないや。
「どうしたシオン。ソースが嫌だったか?」
「な、なに? なんでソース?」
脈絡無くソースの話をする信世君。どうしてソースに焦点合わせて話してきたの?
このまま返事するとモタついてしまいそうだ。彼の事だから、きっと何か考えた末の質問なのだろう。連想ゲームだ。彼の思考を逆連想ゲームすれば分かるはずだ。
「ちょっと待ってね考えるから」
「……? 分かった。待ってる」
このまま会話を続けたらもっとこんがらがってしまいそうだ。互いに食べる手を止めてシンキングタイムを作らせてもらう。
まず、ソースにはいくつか意味があるけど……。まぁ、今回の場合ははぼ間違いなくデミグラスソースの事だろう。で、それが「嫌だったか?」だ。
彼がそう聞いて来るくらいに何か嫌そうなリアクションしただろうか。覚えが無い。そもそも手を付けていないんだ。
何も手を付けていないから嫌も何も……。あぁ、なるほどね。
「お待たせ。ソースが嫌いって訳じゃないよ。考え事してただけ」
手を付けてなかったから、味が嫌いなのかと心配になっただけだったんだ。
「そういう事だったのか」
「そっ、別にソースが嫌いって訳じゃないよ。元の世界にもソースみたいな物はあったからね」
しっかり信世君が納得して貰えるように言って、用意されたご飯をいただく。
さて、まず始めに、初めて触れる「箸」でブロッコリーを挟んで使い方に慣れてみる。
力の調整が少し難しいけど、大体使い方は分かった。紡祇君の記憶があるからすぐ出来たみたいなものだけど、この道具を使うのって意外と難しいな。
それでは、料理が得意らしい信世君の手作りハンバーグでも頂きましょうか。
最初は、手軽に作れて信世君に負担が掛からないからインスタントのハンバーグを選んだつもりだったけど、彼の後ろを着いて行ってたら食材を全部買って一から作ろうとしていたのだ。
別に、睨み合ってる仲だからそんな手の込んだ料理を作らなくても良いのにと思っていたのだけれど、わざわざ作ろうとしてくれている人に「やっぱいいや」と言うのは気が引ける。
そうして出来たのがこのハンバーグだ。見た目からして美味しそう。
王都で良い食材やレシピ本をお兄ちゃんに用意して貰って色々な料理を作っていたけれど、こんな芳醇な香りのするソースは初めて見た。
これが食材と知識の文化格差か。
「頂きます」
「おう。存分に頂いてくれ」
ハンバーグの真ん中をなるべく綺麗に割る。
断面にデミグラスソースがトロリと垂れ、その下を這うようにじんわりと広がる肉汁。ハンバーグの焼き方も綺麗なもので、肉汁がたっぷりと中に残ったまま焼かれている。
一口サイズに切り分けたハンバーグの断面にソースを付けて口の中に運ぶ。
確か具材は牛と豚の合挽肉だったか。初めて食べるけど、元の世界に居たミノタウロスに味が似てるな。このお肉はミノタウロスよりも柔らかくて食べやすいし臭みも少ない。ニンニクらしき特徴的な風味も混ざって美味しい。
極上とまでは行かないけどとても美味しい。お店のご飯は幼少期以降はあまり食べた事はないけど、多分こんな感じだった気がする。丁寧な味付けと丁度良い焼き加減。万人受けするレシピ通りのご飯。
「うん……美味しい。向こうの世界のお店みたいに美味しい。凄い丁寧な料理」
「そうか。料理の文化はこの世界と近かったんだな。安心したよ」
さっきまで手を付けようともしていなかったから、作り手としては気が気でならなかったのだろう。こうして食べている姿を見てホッとしてくれている。
ちょっと悪い事しちゃったかな。
折角、要望を聞いて作った料理が口に合わなかったんじゃ作り手として相当に悔しいだろう。食卓を囲んで食べる物は美味しく感じて欲しいと思うのは料理する人の共通の感情のはずだ。
僕だってそういう経験はある。
お兄ちゃん以外にご飯を作った事が少ないから忘れていたのか。それとも、毎日毎日繰り返してそれくらい当然の事だと思っていたからか。
当然か……。
その当然の日常はもう無いけど。それをどうにかする為の手段はある。散らばった『奇跡』さえ回収出来れば何とかなるはず。
それを成し遂げる為に、信世君と紡祇君は何としてでも味方にしないといけない。翔流君はまぁ……最後に回収出来れば良いか。
今はとにかく交友を深めよう。色々お話をして、仲良くなって、そして……。
「シオン手が止まってるぞ。考え事か?」
お兄ちゃんに似た声色で頭を撫でる信世君。
紡祇君以外にこういう事するだなんて彼にしては珍しい。
「あ、ぼーっとしてた。ごめんねお兄ちゃん」
ほら、紡祇君を見てみろ。この日一番の殺意に満ちた形相してるよ。目カッ開いて変なオーラ出してるじゃないか。
頼まれても自分以外にはしないはずの頭ナデナデをぽっと出の他人にしたからね。二人は付き合ってないから別に浮気でも何でもないけれど、あんな親密にしているのに他の女の子の頭撫でたら嫉妬の炎は燃え滾っちゃうよ。
あれは嫉妬の鬼だよ。圧が怖いよ。彼の真横に座ってる翔流君が青ざめてるじゃないか。早く仲裁してくれこの馬鹿。
端っこに座ってるきりるんは……まぁ、何も分からないよね。頭傾げてはてなマーク一杯みたいな表情だね。
こうやって三者三葉分かりやすく空気が変わっているのにも関わらず、信世君は未だに僕の頭の上に手を置いたまま固まっている。
お兄ちゃんみたいな接し方したと思えば、急に止まるだなんておかしな人だ。
お兄ちゃんみたいに……。お兄ちゃん……
…………さっき僕なんて言ってた?
ちなみにですが、彼らの席順は
1机4
2机5
3机
1翔流、2紡祇、3きりるん、4信世、5シオン
となっています。
なので、シオンちゃんから三人の顔は大変よく見えます。




