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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
異世界人と男の娘とぬいぐるみと。

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第43話 道草もぐもぐ

本日はちょっとキリが良い所が早すぎたので短めです

「ですが、それだとご主人の為に出来る事が減ってしまいます」

 自分を創った人間と同じ『奇跡』を持っている相手でも、役に立つ為の手段を減らされるのは我慢ならなかったのだろうか。不服そうな、そして少し落ち込んだ様子で彼が言い返す。

 この子が言いたい事も理解出来る。大切な人の為に色々してあげたい気持ちはボクにだってある。

 でも、それで無理して倒れてしまったら__

 それこそ本末転倒じゃないか。

「君がボクの為に色々してあげたいって考えてるのは分かるよ。

 でもね。ボクは無理をしてまでやれとは、一言も言ってないよ」

 ゆっくり丁寧に。理解してもらえるように一つ一つ言葉に重みを付けるように。しっかりと聴いてもらえるように。そう伝える。

「ボクは、他の人がボクの為に無理をして辛い思いするのは絶対に嫌だ」

 昔、信世に言ったみたいに。

 君の目を見て、目を逸らさせないように。

「ご主人のお願いだからさ。守ってくれるよね」

 数秒間、彼は無言で目を伏せて考える。

 彼なりに自分が出来る限りの事をしてあげたいという思いがあるのは理解出来る。

 だけど、その思いのせいで他の人が辛い思いをするのはさせたくない。

 人の為の行動なのに、逆にその人に心配されちゃうのは良くない。そんな事されたら自分が何も出来ないという不甲斐なさで辛くなってしまう。

 自分のせいで他の人が苦しくなっていると考えてしまって辛くなってしまう。

 他人の為と言っておきながら結局は自分が苦しくならないようにする為だけれど。

 でも、これはボクがこうさせたい事だから。そうされたくない事だから。

 譲りたくない自我だから。

「…………ご主人の頼みであれば。従いましょう」

「うん。ありがとね」

 意識が生まれて1日も経ってない彼がどうしてそこまで忠誠心を持っているのか疑問は残るけれど、言うことを聞き入れてくれて良かった。

「それじゃ、家の精霊さんは今日は休んでて。月に2回しか使えない能力使って疲れちゃってるでしょ」

 近い目線でお話しやすいように膝を付いてしゃがんでいた姿勢から、お話が終わったのを分かりやすくする為にパッとジャンプして立つ。

 よし、みんなに言うべき事は粗方終わったかな。


 ポケットに入れていたスマホを取り出して慣れた手付きで信世とボクだけの個人チャットが出来るトークルームを開く。

「今日の晩御飯どうしよっかなぁ」

 信世が2人を連れて出る時、買い出しに行くと言っていた。多分、2人とお話するついでに晩御飯用の食材を買いに行ったのだろう。

 彼の性格からして、ご飯を作る時は初めましてのお客さんの好みを聞いてから材料を探すのだろうけれど、それはそれとして一応家主であるボクの意見も聞いておきたいと考えているはずだ。

 さて、ボクの意見としては、なるべく冷蔵庫に残ってる食材を全部使いたい所だけど……。たしか、残ってる食材ってタッパーに入れたブロッコリーや刻みネギと、冷奴の余りのお豆腐くらいかな。

 4人分のご飯にするには絶対に足らないし、おかずとかでちょっと出そうにも中途半端過ぎる量だ。

 今日一日でこんなにも色んなことが起きなかったら、信世と2人で夏休み1日目のお泊まり会にするつもりだったからなぁ。

 食材が少な過ぎるのも、一人暮らしが故の少なさとかじゃなくて、一緒に買い出しに行くつもりでわざと減らしてたから、冷蔵庫の中身がすっからかんになってるのは当然か。

 お米や袋麺はあるからそれを選ぶのは出来るけれど__だからと言ってこの世界に来たばかりのシオンちゃんが選べるご飯の種類が縛られるような選択肢は出したくない。

 冷蔵庫の中身を使いつつ、作るのが簡単で量がそこそこ作れて、しかも翌日とかに残しやすそうな物。

 まぁ、どうせ余っても翔流が残り全部食べちゃいそうだけどさ。

 そして、ボクの食べたい物__今日は、今の季節にピッタシな冷えた物で尚且つ今年あんまり食べてない物が食べたい。

 ……そういえば、今年はまだ信世と一緒にそうめん食べてないな。

 先週の土曜日、2人でボクの家にお泊まりした時に「今年はまだそうめん食べてなかったね〜」と信世に言ったのを思い出す。

 そうめんなら、刻みネギが使いやすいし、残ってるお豆腐を冷奴にして一緒に食べるのも良いな。

 信世も同じ事考えてるはずだ。


 そうだと良いな。


「よし、決めたっ」

 ペペペペッとスマホのフリック入力のキーボードを叩く。

『今日の晩御飯はそうめんが良いな』

 それと一緒に使用履歴に残ってる「お願い♡」と言っているにゃんこのスタンプを送る。

 少し待ってみたけれど、既読は付かない。

 3人でのお話が長引いてるのかな。

 ここから近場のスーパーは24時間空いてるあそこしか無いからそこに行ってるはずだ。

 喧嘩してないと良いけど……。まぁ、大丈夫か。

 いくら信世が怒ってても、小さな女の子のシオンちゃんに暴力を振るう事なんて無いだろうし、翔流が居るから、もし仮にシオンちゃんが何かしても翔流が身代わりになってくれるだろうし。

 ちょっとだけ道草食べてるだけなのかも。

 道草もぐもぐだ。

 この調子だと少し遅くなりそうだし、ボクはボクでやれる事やっとこうかな。

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