第37話 言語
キャラ紹介。ぬいぐるみであり『奇跡』で人間にもおっきなモフモフな狼にもなれる!きりるんです
名前:きりるん
性別:一応♂
元がぬいぐるみなので、紡祇くんのきりるんへの認識次第で性別は割と自由に変えれます。ただし、紡祇くんはきりるんを男の子という設定で扱っています。
身長:
・通常時は全長約1m。でっかいぬいぐるみです。
・ぬいぐるみ状態:可変。最小で1cm。最大で東京タワー位にはなれる。
・穂波坂 銀之助状態:約180cm。基本『穂波坂 銀之助』くんの身長準拠。一応大きくも小さくもなれる。
・狼状態:可変。最小1cm。最大で東京タワー位なら行ける。
体重:可変。基本的には見た目に見合った体重になる。
能力:形態変化。狼形態では消せない炎も吐けれる。紡祇から「危ないから使わないでね」と言われている。
「おっきいおおかみさんになれるよ!! ほのおも出せる!! ご主人が言ってたふぇんりる?に似てるみたい!! すっごいかっこいいんだって!!!」
「ご主人の推しキャラ?になれるよっ!! 朝のご主人うれしそうにしてた!!」
「おっきいぬいぐるみにもなれるよ!!」
それでは、本編へどうぞ
「おや、それはシオン様から聞かされてなかったのですね」
意外そうに尋ねる床の精霊さん。
聞かされるもなにも、ボクがシオンちゃんから聞いたのは、彼女から貰った『奇跡』でぬいぐるみ達が動いたことと、信世と仲直りしたらシオンちゃんの姿を元に変化したこの銀髪美少女風男の子の見た目を元に戻してもらう約束くらいだ。
なんで彼女の『奇跡』がボクの物になってるのかとか、なんでこの見た目になったのかとか、なんで彼女と信世が睨み合ってるのかとかは一切聞かされていないけれど、まぁ、色々あったんだろう。
信世の性格からして、勝手にボクの体を乗っ取ったシオンちゃんが許せなくて怒ってくれてたんだろうし、シオンちゃんの方も何か訳アリみたいだし、互いに譲れない所が噛み合わなかっただけなんだろうな。
「まぁ……そうだね。シオンちゃんからはあまり教えて貰ってないから、色々教えて欲しいな」
実際は床の精霊さんの言う『奇物』や『呪物』については何も分からないけれど、何も知らないと言うとこんなにも尊敬の眼差しをしている床の精霊さんに申し訳ないので、全部知らないという事をぼかしつつ聞いてみる。
「畏まりました。ご主人のお望みであれば、喜んでお教え致しましょう」
「うん。ありがと」
教えれると思った瞬間に少し嬉しそうにしているのは何故だろうか。あれかな。自分が他人の役に立つと嬉しいタイプなのかな。それか教える事自体が好きなタイプか。
裕太は前者のタイプだったなぁ。いっつも信世の周りを回って舎弟みたいに「何かしましょうか!」って言ってるし、ボクが何か取り行こうとしたら必ず付いて来て手伝ってくれるし。時折その仕草が鬱陶しくなる時もあるけど、彼なりに昔、信世と色々あったのを気にしての償いみたいなつもりなんだろうけれど、それはそれとして彼のそういう性格みたいな所もある。
言動は大雑把で他人の事をあまり気にしていない感じなのに、細かい気遣いがあまりに多くて「そんな所にも気付くのか」って驚くような事をよくしてくれる。
ただ、寝起き直後の頭が悪過ぎて、学校で昼寝した後やお泊りした時の彼の介護が大変になってしまう。勘弁して欲しい。
その癖、徹夜する事も多いから、学校でよく昼寝するので昼休みの時は毎回昼寝してる裕太の周りで駄弁ってるのが基本ルーティンになっている。
「それと、ボクが知ってそうって思う事でも細かく教えて欲しいな」
「それは……何故でしょうか」
床の精霊さんが疑問たっぷりの不思議だと言わんばかりの表情をする。
「シオンちゃんからはあまり教えて貰ってないんだよ。だから、色々教えてほしいんだ」
知らない理由をシオンちゃんのせいにしてしいまうのは少し罪悪感が湧いてしまうが、
裕太と床の精霊さんが似たようなタイプだからと言って、流石に裕太と同じレベルの気遣いを期待するのは無理がある。
だからこうして、遠回しにボクのして欲しい事を伝えた方が、この子のボクに対する謎のご主人様扱いとその尊敬の眼差しに疑問を持たせずに済みそうだ。
自分の信じていた事が丸っきり間違いでしたって気付いた時の辛さは相当な物だからね。自分の全てを否定されたような気持ちになってしまう。
それを受け入れれる人も居れば、受け止めれずに目を逸らしてしまう人も居る。大半の人は目を逸らして、自分に都合の良い言い訳を作ってその真実を否定してしまう。そうなってしまったら、ちゃんと会話するのが難しくなってしまう。
「君が思っているよりも、ボクは全部を知ってる訳じゃないから」
だから、少しずつ、その真実に慣れてもらわないと。
今回の場合はこの子のボクに対する期待度の高さかな。少しずつ、自分がちゃんとしないとって思わせなきゃ。
「それに、君の事がもっと知りたいからかな」
「なんと……私の事を知りたいのですか」
とても動揺している。自分の事をあまり知られたくない子だろうか。
とは思ったが、この声の震え方は恐らく感激してる時のやつだ。さっきから事あるごとに感激してる時の声の調子と全く同じだ。
それに気付いた上で聞いておこう。そうした方が、自分がしっかりしなきゃって意識になってもらいやすいから。
「もしかして……嫌だったかな? あまり自分の事知られたくなかった?」
勘違いしてごめんね。と言って少し落ち込んだ風に謝る。
「いえ滅相もございません! 命が軽い『奇物』である私を知ろうとしてくださるご主人に心から感謝していただけでございます」
紛らわしい言動をしてしまい申し訳ないと言わんばかりに焦って訂正する床の精霊さん。
「う、うん……喜んでくれて嬉しいな」
何があったのか分からないけれど、妙に自分を卑下したその言葉に少し引いてしまう。
この子の命って軽いんだ……シオンちゃんどんな扱いしたんだよ。
どうしよう。どんどんシオンちゃんに聞きたい事が増えちゃうよ。どうしてボクに『奇跡』が渡されたのかとか、この子達『奇物』と『呪物』についてとか。他にも異世界についてとか、どうしてこの世界に来たのかとかとかとか…………。聞きたい事が沢山あり過ぎて覚えきれない。
とにかく! 今はこの子から色々聞いておかないと。そうしないとシオンちゃんとお話する時に質問だけで数時間消えちゃいそう。
「少し逸れちゃったけど、どうして君は人型になってないのに人の言葉が話せるの?」
さっき質問していた事をもう一度ちょっと整理して床の精霊さんに聞いてみる。
「それはですね。声を出す機能がある『奇物』と『呪物』達には『奇跡』を使った者。私の場合はシオン様と同じ言語が使えるのですよ。そうなるように私達は作られています」
「なるほど。だから日本語が使えるんだね」
理屈は分からないけれど、そういう物として作られるようになっている訳なんだ。やってる事は些細な事のように見えるけれど、よく考えてみれば術者とコミュニケーションが取れる魔法みたいなのを持ってる存在を量産出来るのは流石『奇跡』だ。
その名前に負けない相当な事をしている。
「あ、でもおかしくない?」
そう考えている所で不可解な点に気付く。
術者と同じ言語を使えるのは分かったけれど、それとは別の疑問が浮かび上がる。
最初からずっと当たり前のように話していたけれど、よくよく考えたらおかしい。彼女は異世界から来たのに。
「なんでシオンちゃんは日本語喋ってるのさ」
異世界出身なら異世界の言葉を使っているのが普通だ。
信世が妙に気にする「ご都合主義」の言語が分かる特殊能力みたいなのがあるなら理解出来るけれど。実際問題そんなに都合の良い事はそうそう起こらない__という仮定で考えると、恐らくこの世界に来て日が浅いであろう彼女があんなにも流暢に日本語を使っているのは不自然としか言いようがない。
「それはですね。シオン様が頑張って勉強したからでございます」
「え、勉強?」
確かに勉強したから喋れるのは納得の理由というか、それこそ勉強しなきゃ異国の言葉なんて喋れないから真っ当な至極当然な理由だけれど、そんなあっさりとした回答だと逆に疑ってしまう。
「ええ。あの御方は、紡祇様の記憶を元にこの国の言語である日本語を熟知しております」
「ええー嘘だ~」
「本当でございます」
間髪入れずに否定されてしまった。
いやだってさ、現地人であるボクの全ての記憶を教科書代わりにしたとはいえ、『奇跡』が使えるようになった今日の朝からボクを乗っ取った17時頃までの間に一つの言語を喋れる程度まで覚えるのって……それってとんでもない事だよ。
無自覚で生物としての全体的なスペックの差を見せ付けてくる信世だって、何か覚えようとした時は相当覚えるのが早くなるけど、流石に英語を一日でマスターした事なんて無いし、元々ある知識があってこその適応能力と学習能力もあるけどさ。
それでも、流石に完全に違う世界の全く知らない言語を一日でマスターするのはやり過ぎてる。
もしかして、ボクに乗り移る前にどこかで勉強してたんじゃないだろうか。
考え込むボクを見て、情報の追撃をするように床の精霊さんは口を開く。
「また、紡祇様が普段気にしていない学校の授業や、この世の至る所にある些細な英文からも学習して、英語すらもある程度は話せるようになっております」
「ちょっと待って。シオンちゃんってそんなに頭良いの?」




