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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
異世界人と男の娘とぬいぐるみと。

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35/54

第35話 床の精霊?

 以前から少し更新が空いてしまいましたね。

 少し言い訳させてください。あれなんですよ。私、体調不良だったんですよ。

 熱が38.6出てなんか喉がめちゃ痛いしで頭痛と喉の痛みでグアァァァァァってなってたんですよ。

 今は熱も37.4まで落ちたので、かなり楽になって仕事も休みで暇の塊なので、折角なので書いちゃいました。楽しかったです。

 皆さんは体調管理しっかりしてくださいね。私はもう一眠りしてきます。



それでは、本編へどうぞ

「ねぇきりるん。シオンちゃんから貰った『奇跡』の使い方とか分かる?」

「わかんないっ!」

「そっか! 元気でよろしい!」

 分からない事を分からないって言えるのは成長出来る子の特徴だね。良い子だ。

 そうじゃないんだよ。知らないのになんで人型になったのさ君は……。

 少しイラっと来てしまったが、ぬいぐるみ相手に察してほしいと考える事自体がおかしいのだと自分に言い聞かせて納得させる。

「でもねでもねっ! 床の直し方は知ってるよ!」

「ほんと? ほんとだよね?」

「もちろん!」

 訝しげに聞いてみるが、それでも自信たっぷりに両手を腰に当ててドヤ顔するきりるん。

 この子は嘘が吐けなさそうな性格みたいだし、言ってる事は嘘じゃないんだろうけど……。純粋が故にシオンちゃんから変な事教え込まれてないか心配だ。

 一応、シオンちゃんがした事は一旦許したという体にしてるけど、正直まだ疑ってる部分もある。

 彼女が言うには、今のシオンちゃんやぬいぐるみ達はボクの下僕みたいな物だから、ボクがしてほしくない事は絶対に出来ないようになってるとか言ってたけど、それがどこまで本当かは分からない。

 やろうと思えば、自分の手足のように下僕達を操れると彼女は言っていたが、それをぬいぐるみやシオンちゃんにはしたくない。

 信世の『奇跡』みたいになんでも無理矢理させれるのだとしても、コミュニケーションは大切にしたいんだ。

「じゃあ、どうやってやるか教えてほしいな」

「分かったのだ!」

 意気揚々と床の穴に向かうきりるん。

 穴の前でしゃがんで魔法的な何かでもするのかと思いきや、呪文を唱えたりする訳でもなく穴の周りを優しく撫で始める。

「何してるの?」

「床の精霊さん起こしてるの」

 魔術じゃなくて精霊術の方だったか。

 精霊といえば様々なものに宿っていると聞くけれど、果たして床にもそういう存在が居るのだろうか。

 イメージ的にはRPGに出てきそうな炎や水のような属性ななんか凄そうな奴に宿ってる印象だけど、こんな素朴な物にも宿ってるものなんだろうか。

 きりるんが言う事だから余計に疑ってしまう。

 嘘吐いてるとかじゃなくて、純粋に勘違いしてそうでえ疑ってしまうんだ。

「ご主人も起こすの手伝って~」

「もう、仕方ないなぁ」

 思ってたよりも全く反応が無くて少し悲しかったのか、半べそかきながら手伝って欲しいと懇願してくるきりるん。メンタル弱過ぎない?

 これ以上機嫌を損ねても面倒なので、仕方なくきりるんに言われるがままに手伝う。

 起こすと言っても、概念の塊みたいな存在にどうアクションすれば良いのやら……。

 とりあえず、きりるんと同じように床を撫でてみる。

 穴が空いてボロくなったせいで、木目のフローリング特有のつるつるとした触感は失われており、細かな埃が沢山こびりついてしまっている。普通に汚い。

 これ、撫でるだけじゃ意味無いよね……。

 二人で優しく床を撫でてるだけの滑稽な絵面が出来上がる特に何の意味も無いんじゃないだろうか。

る滑稽な絵面だ。

 横目にきりるんを見る。

 見た目が相当なイケメンなだけあって基本何してても絵にはなるが、必死に床の周りをさすさすしてるのは流石に滑稽に思える。見た目だけで補える限度を越している。

「床の精霊さんー。起きてくださいー」

 しかも床に話掛け始めてしまった。まずいこれでは完全な不審者だ。脳内メルヘンイケメンだ。

「ほら、ご主人も一緒に!」

「え、ボクも?」

 もちろんだと言いたげにボクの顔を見るきりるん。

 ま、まぁ、今この家の中にはボクとぬいぐるみ達しかいないんだし、教育番組みたいな起こし方しても恥なんてかきようがない。そもそも、子供みたいな存在と一緒にするんだ。もうこれは出張教育番組みたいなものだよ。いっそそういう方向に振り切った方が心理的な抵抗はかなり薄くなるんじゃないだろうか。

 無駄に思考して、いっそ思い切って歌のお兄さんみたく穴に向かって話し掛けてみる。

「床の精霊さーん。起きてくださ~い」

「ご主人ノリノリだね」

 誰のせいだと思ってんねん。

 きりるんを睨みつけつつ再び床を撫でようとした時、足元の妙な違和感に気付く。

「なんか床が動いてるような……」

 足元を見て何が起きてるか確認する。

 見た目は普段通りの床なので、違う所は汚れみたいな黒い点が三つあるだけだった。

 埃か何かが落ちてるのかな。

 気になって取り除こうと手を伸ばす。

 摘まんで持ち上げようとしても床にべったり張り付いて取れない。引っ掻いてみるけれど、カリッと鳴って動く気配はない。

 不思議な汚れだな。

 まぁ、どうせこの汚れなんて目じゃないくらい大きな破損後があるから、いちいちこれを気に掛ける必要は無いか。

「あ、ご主人。これ見て」

「ん? どうしたの?」

 再び床を撫でようとすると、きりるんがボクの足元の黒い三つの汚れに気が付いてそれに指を指す。

 汚れがあるのを教えてくれてるのだろうか。残念ながらそれはさっきまでボクが触ってた物だ。そんなものより圧倒的な汚れというか、汚れを超えた破損があるからそっちを気に掛けてほし「これ、床の精霊さん」

 そっか。これが床の精霊さんか。

 もう一度床を撫でて床の精霊を起こす作業に……。

「え、これが?」

 床の黒い汚れを二度見してきりるんに尋ねる。

 え、これが床の精霊? この三つの黒いのが?

 恐る恐るもう一度黒い汚れを触ってみる。

「ミッ!」

「うわ喋った!」

 高音の「ミッ!」に驚いてきりるんの後ろに逃げ隠れる。

「い、今っ! 今黒いのが動いた!」

 きりるんの背中から顔を覗かせて黒い三つの粒を見る。

 さっきまでは動かなかったのに、今では黒い二つの点は目のように瞬きするようにローマ字のIになったり、黒いまんまるの形になったりしている。

 残りの黒丸は口みたいな線になっている。今は動いてないから判断に困るけれど、さっき喋った時に動いていたので口のはずだ。

「こんにちは! 床の精霊さん」

「ミッ!」

「ご主人が床の精霊さんに頼みたいことがあるみたいだから、お話してもらっても良いかな?」

「ミー。ミミミ……。ミミッ!」

「疲れてるのは分かってるけど、どうしてもしたいみたいだから、ねっ! 良いでしょ?」

 きりるんが「ミ」しか話さない黒い点と話している。イケメンと床の黒い点とかいう奇妙な対話が始まってしまった。

 黒い点の言ってることは分からないけど、きりるんが頑張って頼み込んでるのは分かる。

 疲れてるとは言っていたけど、やっぱり床の精霊なだけあって床が破損してたらそれ相応にダメージが入る物なのだろうか。

 そもそもこの黒い点が床の精霊なのかも怪しい。目と口っぽいのを付けて「はい、これが床の精霊です」は無理があるような……。いや、ぬいぐるみが人型になってる時点でそんなの今更か……?

「ご主人! 精霊さんがお話してくれるみたいだよっ!」

「あ、うん。ありがとう」

 きりるんの背中で考え事をしている間に話し合いは終わったようだ。きりるんがやり切ったっ!みたいな顔をしている。

 お話してくれると言われても、「ミ」しか話せない存在とどうお話しろと……。やっぱりこういう時はジェスチャーだろうか。

 床に通じるジェスチャーってなんだ?

 まともに話せるか自信は無いけれど、話さない事には先に進まないので、きりるんの背中から前に出て床の黒い点に話し掛けてみる。

 コミュニケーションには挨拶が肝心だ。最初に挨拶することで相手の敵対心を緩和することが出来る。なんて事を信世から聞かされた事があるけれど、言語が通じない相手にもこれは使えるのだろうか。

「えっと……。こんにちは」

「こんにちは新しいご主人。私奴に何か御用があるとそちらの犬畜生から伺いました。ご主人の仰る事であれば何でも成して見せましょう」

「いや普通に喋れるんかい!」

 きりるんと話してる時は「ミ」しか話さないからそういう言語の子かと思ったじゃん。しかも声も格好良いし。老齢の執事みたいな声なんだけど。このマンションは築20年位で、そんなに古いのじゃないはずなのに何で老いぼれてんのさ!

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