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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
少し変わった日常へ

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31/53

第31話 目覚める元一般人

キャラ紹介。ようやくスポットライトが当たった裕太くん。彼は無事なのでしょうか。

名前:田中たなか 裕太ゆうた

性別:男

年齢:17歳

誕生日:1月15日

特に深い理由はありません。良いいいこで115にしちゃえっ☆って感じです。

身長:155㎝

体重:57kg


・能進高校一年四組

・信世と紡祇とは中学校からの仲

 紡祇宅で各々活動を始めた頃。

 信世達が通っている高校である県立能進高校の屋上では、ボロボロの布切れを腰に巻いた2メートルにも及ぶ筋骨隆々の白髪の巨漢が腕を組んで胡坐をかいた状態で眠っていた。

 見惚れてしまう程に鍛え抜かれた傷一つ無いその身体には大量の固まった血が付着している。



「んぁ…………なんかあちぃ」

 部屋の中にしては不思議とぬるい風を素肌で感じる。

 いつの間にか組んでいた腕を崩して目を擦り、寝ぼけた頭を無理やり動かして周りを見渡す。

 周囲は暗闇に包まれていた。遠くを見ると小さな光がぽつぽつと見える。自室ではパソコンの中以外では見ない光景だ。

 にしても、室内だと言うのになんとも

 生ぬるい風を感じながら空を見上げる。夏の星空がいつもよりもかなり鮮明に見える。

 とても良い眺めだ。

 とても…………いや待て。

 俺は何で外で寝ている?

 俺は何でこんな高い場所で寝ている?

 俺は何でこんな血生臭い場所に座っている?

 俺は何で腕組んで胡坐をかいて座ってる?

 俺は何で半裸になっている?

 俺は何で下着すら付けずに腰蓑一丁になっている?

 ていうかそもそも____

「ここは……どこだ」

 外で寝てる事とか服装とかこれだけでもおかしな状況になっているのが分かる。場所の確認をしようとして立ち上がろうとして地面に手を付ける。

「…………え?」

 体の様子がおかしい。

 膝を付けて立つ途中の体勢のままでいるのは、何もハッキリと分かっていない現状と同じみたいに中途半端で変な状態なので、ササっと真っ直ぐ立ち上がる。

 体調が悪いという意味でおかしいんじゃない。体調が良すぎるんだ。それ以外にもおかしい箇所は数多にあるのだけども。

 まず一つ。さっきから違和感だったが声がおかしい。

「なんだこの声」

 これは俺の声じゃない。

 寝ぼけてたから何かと聞き間違えたのかと考えて頭の隅に置いてけぼりにさせていたけど、これは正真正銘間違いなく俺の声じゃない。全く知らない渋いおっさんの声だ。

 そして二つ。目線があまりにも高過ぎる。俺の身長は155㎝のはずだ。そのはずなのだが__

「なんだこれ、地面遠っっ!!」

 今の視点から自分の足元を見て、地面までの遠さに驚く。

 普段よりも地面が離れて見える。あまりの新鮮な光景に、自分が腰蓑一丁丸腰超えて半裸の変態状態なのを忘れてしまいそうだ。

 「…………普段よりも地面が遠いだけで腰蓑一丁丸腰超えて半裸の変態状態を忘れるのは、流石にインパクトが弱いか」

 まぁ、それくらい俺にとってこの光景は新鮮味に溢れているという事だ。

 正確な高さは分からないが、これは普段の俺の身長よりも50センチくらいは高いんじゃないだろうか。それくらい距離感に差があるぞ。

 仮に50センチ高くなったとするなら、俺の身長2メートル突破だぞ。高校一年生でこれならバスケ選手も夢じゃない。これが成長期ってやつか。圧倒的巨漢。身長万歳。ビバ身長。成長性最高。

「っと、ふざけている場合じゃない」

 昔から、艶縫とセットで低身長コンビだとか、生意気な方のショタだとか、ハムスターだとか言われてきたので、低身長な事に多少なりとも屈辱を感じていた所はある。

 そんなちょっとしたコンプレックスになっている低い身長が、目覚めたら魔改造されていたら誰だって現状を忘れて喜んでしまうだろ。

 もはや他人と言っても差し支えない程の大変身を遂げた俺の体。以前のような、小さくて小学生のガキみたいな舐められやすい体とは違った男らしい体。

 夢のようだ。

 本当に夢じゃないのだろうか。試しに思いっきり頬をつねってみる。

「………………全く痛くないな」

 勘違いなのかと思って何度も力を入れて全力で頬を引っ張ってみるが__悲しいかな。全く痛みが無い。誰もが羨む肉体美は夢なのだろうか。

「まぁ、当然か。人間が数時間で別人になる訳ねぇもんな」

 昂った気持ちを落ち着かせて頭の中を整理する。

 これが夢なのは考えてみればすぐ分かることだった。目が覚めたら別人でしたって展開は朝起きた時がベターだろ。周りを見てみろよ。真っ暗闇だぜ。

 飯食って風呂入って少しゲームして、その後に俺が寝た時間と同じくらいの明るさだぞ。

 電灯や民家から溢れ出る光でまだ街の全てが真っ暗になってる訳ではないが、それでもこの高さから見る街の風景は、この静けさは、この暗さは、俺の部屋の窓から見える外の風景と同じだ。

 もしこれが現実なら、俺が起きてから数時間も経っていないのだろう。

 その証拠に、街にはまだ電気が点いている家が多い。俺が寝た時間は22時くらいだから、こんなにも外が暗くないのはおかしい。

「はぁ………残念だな」

 右手を握ったり開いたりして、変貌を遂げたこの体の感覚を噛み締める。

 こんなにも鮮明に五感を感じれるが、所詮はリアルな夢でしかないんだろう。

 こういう自由に動き回れる夢をなんて言うんだっけか。明確夢だったか、解明夢だったか。なんかそんな感じのだ。

 どうでも良い事だけど、一回寸前まで思い出してしまったのなら気になって仕方がない。

「スマホスマホっと……」

 真っ暗闇の中、地面を叩いてスマホを探すが__

「いや、ある訳ないじゃん。夢なんだから」

 自分の天然ボケに自分でツッコむ。なんとも滑稽な光景だ。

 しかし、スマホが無いのならどうやって調べようか。誰かに聞こうにも人が居ない。

 誰か探すか? 自分の夢の中で?

 それはそれでなんというか……不思議な行動のような気もする。

 夢の中ということは自分の中みたいなものだろう? つまり、自分の中で自分の頭が作り出した人に話すという事になる訳で。

 それはもう自問自答って奴なんじゃないか?

「まぁ…………悩んでても仕方ないか」

 両頬をパチンと叩いて周囲を見渡す。

 暗闇の中であまり見えないが、出入口らしき扉を見付ける。

「折角の明確夢だか解明夢だか分からんけど、自由に動ける夢だからな。観光していこう!」

 錆びついているドアノブに手を掛けて、右に左にカチャカチャ回して開けようと試みる。

 扉自体も錆びついていたり所々歪んでいる。長い間使われた結果の摩耗だろう。手入れがされていないと言う訳ではなさそうだ。

「こういうのって、夢なんだし結構都合よく空いてたりはしないんだな」

 開け方が悪いのかと考えて左右に回して引っ張ったり押してみたり。多少摩耗している扉ではあるけれど、こんなにも開かない物なのか。

「これはもしや……下から上に持ち上げて開けるタイプなのでは!?」

 よく昔のテレビであったコントや、忍者屋敷で使われているような、見た目はただの扉や壁なのに、下から持ち上げると上にスライドして開くタイプの扉なのではないかと勘繰る。

 試しに地面と扉の隙間に指を指しこんで持ち上げてみる。

 扉がギシギシと音を立てて少し持ち上がる。

「っっっと。結構重いな」

 少し動いた気がしたがサッと動きそうな気配は無い。

 やはり、いくらそういう仕組みの物であっても、扉一つ分の重量を持ち上げる程度の力は必要になるのだろか。

 一度指を離して腕を回して肩をほぐす。

 ほぐす為に勢い付けて動いているおかげか、太い腕が空気を押しのけて吹き飛ばし、ゴウンと風を吹かせる音がする。

 念入りに手首や指も一つずつ丁寧に丁寧にほぐしていく。

「よしっ」

 もう一度地面と扉の隙間に指を掛ける。今度はしっかりと脚腰にも力を入れる。

 見た目や触感的には、この扉は金属製の物で結構な重量がありそうだ。

「せーの……」

 ギシッと扉が悲鳴を上げる。

 どんだけ老朽化してんだと心配になるが、そんな音には気にせずに息を吐いて腕に力を入れる。

 両腕に血が巡り、ドクンドクンと脈動し、血管が躍るように動き出す。

 自身の新しい体の知らない動き方に驚きつつも目の前の扉を持ち上げようと踏ん張り、そして全ての準備が整った今。

 扉を一気に持ち上げる。

「開けぇぇ!!」



 轟音__

 辺りに響き渡る破壊音と共に、扉で仕切られていた出入口の境界線が無くなる。

 扉を取り付けていた左右の外壁は扉に引っ張られて上方向へと歪む。

 出入口の天井部分は地面に瓦礫を落として粉々になる。

 外と中の境界を仕切っていたはずの扉は、本来とは違う方向に開かれて歪な形に畳まれる。

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