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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
少し変わった日常へ

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30/53

第30話 帰宅

「ただいま。紡祇、待たせたな」

「お邪魔しますー」

「お菓子沢山買ってきたぜー!今夜はパーティだぁ!」

 紡祇の家に帰るなり、翔流は靴を脱ぎ散らかしてパンパンにお菓子やジュースを詰めた袋をリビングに走って持って行く。

 シオンは翔流に絶対に近寄るまいと俺にしがみついて離れようとしない。多分、今晩はずっとこんな感じなんだろうな。

「翔流!あんまり走るなよ。下の階の人に迷惑だ」

「すまーん」

「それと手洗いもしっかりしとけよ!」

「へーい」

 リビングから翔流が謝る声がする。騒がしい奴だ。

「皆さんおかえりなさいっ!」

「みんなおかえり~。随分遅かったね。なんかしてたの?」

 翔流と入れ替わりで紡祇と人型のきりるんが玄関にやって来る。

 廊下を見渡すと操られて移動していたぬいぐるみ達は既に普段飾られている位置に戻っていた。飾られているぬいぐるみ達には動きそうな気配は無い。綺羅星の洗脳やシオンの『奇跡』は既に解除されているのだろう。

「まぁな。おかげさまで今日はお菓子が食べ放題だ」

「だから翔流があんなにお菓子とか持ってたんだ。きりるん、翔流のお手伝いしてあげて」

 紡祇に指示されたきりるんは元気良く「わかったのだ!」と返事をして小走りに翔流の居るリビングに向かう。

 全員の靴を綺麗に並べ直して三人でリビングに向かう。

 途中、俺の荷物を見て紡祇が持つのを手伝おうとしてきたが、頭を軽く撫でてやんわりと断る。

 リビングでは、きりるんが袋の中からお菓子やジュースを一つずつ丁寧に戸棚に直していた。買ってきた本人である翔流は洗面所で手を洗っているみたいだ。

「今更だけど、今日はみんなお泊りなんだね」

 大所帯になった家の中を見て紡祇がそう呟く。

「色々あった後だし、みんなシオンと話したい事が山程あるだろうしな。いっそ泊まった方が良いだろ」

「確かにそうだね。ボクもシオンちゃんの世界の話とか聞きたいもん」

 今までは多くても紡祇と俺含めて三人までしかこの家に泊まった事がないので、五人もこの家に人間がうろついているのは珍しい。

 そういえば、晩御飯は紡祇と俺と翔流とシオンの四人分しか買っていないのだが、きりるんは晩御飯を食べるのだろうか。

 出掛ける前は狼型だったから人数からは外していたのだが、人型になったということは一緒に食卓を囲うことになりそうなのだが……そもそも、元ぬいぐるみに食事は必要なのか?

 まぁ、どちらにせよ少し多めに買っているので足りないなんて事にはならないだろう。

 冷蔵庫に買った物を全て入れた後、翔流と入れ替わりでシオンと一緒に洗面所で手を洗ってからまた台所に戻る。

 飯の時間にしてはかなり遅くなってしまった。早く作るとしよう。

 そうして、さて、晩御飯を作ろう。としようとした所で、きりるんに晩御飯を食べるかどうかを聞いていなかったのを思い出す。

「そういや、きりるん食事出来るのか?」

 翔流と一緒にお菓子やジュースを戸棚に入れているきりるんに聞いてみる。

「ぼくはご飯は食べないよー。一応ぬいぐるみだからねっ!」

 ふふん!と聞こえてきそうな勢いで返事するきりるん。

 見た目は人間だから食事が必要なんじゃないかとは思ったが、元がぬいぐるみなのだから、食事自体不要なのは当然か。

 ただ、見た目自体は人間なので、一人だけ皿も出さないで放置しているのも微妙な雰囲気になりそうだ。かと言って、別部屋に置いておくのもあまり気が乗らない。

 食べないけれど、皿だけは出しておこうか。いやいっそぬいぐるみ形態に戻ってもらうとか。いや、わざわざ人型になって喋ってくれているから、俺の独断でぬいぐるみに戻れと言うのは気が引ける。

「ねぇ、信世君」

「ん?どうした」

 どうしようかと悩んでいる所で、未だに脚にしがみついているシオンが服の裾を引っ張ってきた。

「きりるんはね、食事自体生きる上では不要だけど、別に食べれない訳じゃないよ」

「そうなのか?」

「え、そうなの!?」

 俺と一緒に驚くきりるん。きりるん本人も知らなかったみたいだ。

 シオンはきりるんに何か言いたそうな目を向けつつ話を続ける。

「うん。僕の『奇跡』__今は紡祇君の物になっちゃってるけど、この『奇跡』で作った生物はみんなその生物の形に合わせた食事は出来るようになってるんだよ。味も分かるし、味の好みだって個体ごとに差はあるよ。生命の維持には不要なだけで、趣向品として食べれるって感じだね」

 あくまで趣向品としてだが、元ぬいぐるみが人と同じ食事が出来ると。これはつまり、疑似的に生物を模倣しているみたいな事をしている訳か。

 見栄えは地味だが、物に人格を与えたり、能力を付与したり、しまいには疑似的に生物を模倣させることも出来る『奇跡』。俺の言葉だけで自在に操る能力や、翔流の圧倒的な耐久力も相当な物だが、ここまで来ると最早神の所業だろう。これを魔法じゃなくて『奇跡』と呼ばれている理由がよく分かる。

 まだ聞いていないだけで、とんでもない『奇跡』がまだ大量にあるんじゃないだろうか。

 そもそも、何故『奇跡』が俺達の世界に来たのかもまだ分かっていないし、どのくらいの種類があるのかも分からない。

 後々聞こうとは思っているが……。今日中に全部聞けるのだろうか。まだ聞きたい事の半分も聞けてないぞ。

 とにかく、今は飯を作らないといけない。きりるんも晩御飯を食べれると言うのなら一緒に食べた方が良いだろ。

「じゃあ、きりるんも一緒に飯食うか?」

「うん!信世さんお願いします!」

「おっけぇ。任せな」

 きりるんに確認も取れたし、きりるん含めて五人分の飯でも作るか。

 っとその前に。

「シオン。流石にしがみつかれていると料理の邪魔だ。リビングでゲームでもしとけ」

「あ、ごめんなさい」

 翔流を睨みつつリビングに退避するシオン。あの缶コーヒーの件で一気に好感度を落としてしまったみたいだ。

 そんな目線には毛ほども気付かずに大量のお菓子を未だに戸棚に押し込んでいる翔流。能天気なのは羨ましいな。

 さて、五人分のハンバーグとそうめんか。ちょっと手間が掛かるな。

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