第18話 休息
キャラ紹介。五人目。信世くん絶対殺すウーマンになっているシオンさん
名前:シオン
性別:女(現在の体は男)
年齢:現在秘密
誕生日:秘密
身長:150㎝(現在紡祇と連動)
体重:50kg(現在紡祇と連動)
能力:ぬいぐるみと話せる
自我を付与出来る。その他設定有り。
・異世界人。元の体は低身長の成人済み女性。
・見た目は現在の紡祇くんに近い。というより紡祇くんの方がシオンに近い。
元の設定では男の娘で、紡祇くん達にとっても友好的な子でした。初期設定では友好的だったので、協力して色々して紡祇くんの手札がとんでもない量になって、信世くんとの相性がバッチシになる……はずだったんだけどね。
性格面は最初とあまり変わりないですが、シオンさん側で色々あって信世くん達に殺意向けてます。
他にも出したい設定が沢山ありますが、まだ出せません。
畜生、キャラ紹介なのに書けること少なすぎる。ストーリー進まないと出せねぇ。
俺は「負ける事を初めから分かっていた」と言ったが、何も最初からシオンが負けるつもりでいたとは思えない。
「そういう訳でも無いだろうな。少なくとも最初は勝つつもりで準備していたんだろう」
「なるほど」
ふむふむと言ってはいるが恐らくほとんど理解してないだろう。腕を組んで「なるほど分からん」と言いたそうな顔している。
まぁ、何か思う所があれば口出してくれるだろうし、何か言われるまでは気にせず続けていこう。
彼女の最初に会った時の殺意は本物だろう。俺を不意打ちで殺しきれずに見逃したのも、翔流が『奇跡』持ちなのを最初から気付いていたからだ。まだ『奇跡』の使い方を知らない翔流だけは逃がさずに洗脳した方が戦力差が増えて楽に戦えると踏んだんだろう。
『奇跡』を奪わなかったのは、翔流をぶつけた方が友達のよしみで手加減された隙に仕留めるつもりだったのだろうか。
最初に会ってから今に至るまで、彼女の予想外の展開と言えば俺が綺羅星と組んで攻めてきたことくらいか。だが、それが原因だったとしても人数が多いだけで、翔流と対面すれば大した影響は無かったはずだ。洗脳状態であの程度しか動けなかった翔流でも、簡単に対処出来たはずだ。
そう。あの程度の翔流でも。
『奇跡』を上手く使えず動きも鈍い。先に動けばほぼ勝てるような能力なのにすぐに使わずお喋りしていた馬鹿でもだ。
「…………もしかして、シオンが負けた原因って翔流なんじゃないか?」
「え、翔流が役に立ってたの?本日のMVPってやつ?」
普段の翔流は馬鹿な事しかしない奴だ。そんな奴が今回の功労者となれば友達として、こんなに嬉しい事はない。
問題なのは、MVPの要因が本人が弱過ぎたからという事。貴方が足を引っ張ったお陰で勝てましたなんて不名誉過ぎる。
「ある意味それで合ってるな。アイツのおかげでシオンの計画が破綻した可能性がある」
「え、すごい!何したの?」
「俺を裏切ってロクに役に立てずに即死」
「え…………いや、うん。そっか……」
珍しくあの馬鹿が役に立ったかと思えばこの有様だ。困惑するのも無理はない。
翔流の状況を知らなかったという事は、どうやら紡祇は体を乗っ取られている間の意識は無いらしい。それなら、俺が殺されそうになっていたのにシオンとお話をしていたのも納得だ。紡祇目線では、急に体乗っ取った人が俺を殺そうとしていただけなのだろう。乗っ取られている間の意識が無かったなら、色々と脚色して伝えられている可能性もある。後で色々と聞こう。
暫定だが勝った要因は見付かった。功労者の翔流には今度お祝いでも…………そういや死んでたな。
「一応解決はしたし休憩でもしようぜ。丁度コップとかも用意してるしさ」
「そ、そうだね。少しゆっくりしよっか」
一緒に座って俺と翔流と紡祇の三人分用意されていたお茶とポンデリングを頂く。
紡祇が満足げにポンデリングを頬張ってニコニコしている。本当に紡祇はポンデリングが好きだな。
勝った要因が敵に回った奴が使い物にならなさ過ぎたとかいうあっさりした物だったのは意外だった。まぁ、世の中全てそれなりの行動にはそれなりの理由がある訳ではないのだ。使おうとした奴が想定以上に使い物にならなくて計画失敗なんて拍子抜けな事実も現実ならではだ。
ここで『奇跡』だとか異世界人だとか言い出したらキリがないので考えないようにしよう。
だが、まだ完全には安心していられない。紡祇の見た目は変わったままだし、シオンが今どうしているのかも、翔流の死体処理も、綺羅星達の対処も全て残っている。
まぁ、それらはすぐやるべき事じゃない。今はこうやって休憩しよう。
休憩して、頭と体を休ませた後に動こう。
ポンデリングをつまみながら机の真ん中に置いたスライムの瓶を取って見る。
シオンが用意した切り札だとか、ただのブラフだとか考えたけれど、結局コレについては何も分かっていない。
今はただの紡祇との思い出の品という事だけだ。
「これって去年の夏に一緒に作ったやつだよね。懐かし~」
「たしか、あの時も二人で水着買いにモールに行ってたよな」
「楽しかったよね~。一緒にご飯食べたりお洋服買いに行ったりとかしたよね」
「そうだったな」
毎年の恒例行事のように夏に水着を買いに行っているから忘れているかと思っていたが、紡祇もしっかり覚えていたみたいだ。
去年はモールで買った次の日に市民プールに遊びに行ってたな。
男性用更衣室に行こうとしたら紡祇だけ警備員に止められたんだっけか。必死に説得したけれど警備員のおじさんには聞き入れてもらえなくて、仕方なく紡祇だけは女性用更衣室で着替えていた。
着替えた後の紡祇の顔は茹蛸みたいに真っ赤になっていたのをよく覚えている。オーバーサイズの上着を着ていたから見た目は大丈夫だったそうだ。
「そういや、スライムって時間が経つとドロドロになったり、カビが生えたりするらしいぞ」
「え、そうなの!?」
「まぁ、ずっと瓶に入れてるなら大丈夫だとは思うけどな」
どこかで聞きかじったスライム知識を言いつつ手に出してみる。
揉んだり伸ばしたりしてみるとドロドロとした感じはなくて、むしろ昔触った時よりもハリがあるように感じた。
変な臭いはしない。むしろ良い匂いだ。
優しく控えめでフローラルなこの香りは……。
「少しスズランの香りがするな」
「え、ボクにもちょっと嗅がせて」
「ほらよ」
「ほんとだ。なんかいい匂いする」
手のひらに置いたスライムを手で仰いで嗅ぐ。
扱い方が危険物のそれである。
「すっごいお花の良い匂いする」
「だろ?触り心地も気持ち良いんだよ。ちょっと触ってみろ」
「いいの?やった~」
ハリツヤ良しのまとまりが良いスライムなので、手にしつこく引っ付かずに綺麗にまとまって紡祇の手のひらに乗せれた。
「なにこれ凄い。すっごいぷるっぷるなんだけど。高反発枕みたい」
よく分からない例えをするが、紡祇が言うからにはきっとそうなのだろう。はしゃいでスライムを伸ばしたり指に巻き付けたりして遊んでいる。
紡祇はいつも可愛い表情を見せてくれるが、年甲斐もなくこうやって遊んでいる時の紡祇の表情は特に楽しそうでこの顔を見るために色々な物を見せたくなってしまう。
そのおかげで、外出する度に何か物が増えてしまうのは悩み物だが……。紡祇が楽しそうにしているから問題ない。
小さな子供みたいに遊んでいる紡祇を傍目にお茶をゆっくり啜る。
さて、紡祇が遊んでいる間に綺羅星に連絡しよう。
俺が攻めに行ってからは一切連絡していなかったからな。好感度を無理やり上げさせてほぼ下僕みたいにしたから、通知が凄い事になってそうなんだよな。煩そうだから通知切っていたけれど……。
ソシャゲや親からの通知を確認した後にアプリを開いて確認してみると、現在進行形で更新されるメッセージボックスを見つける。
うわっ、通知+999になってる。
内容は見なかったことにして、倒れた男達の回収、洗脳解除させて、今日はもう遅いので帰るように指示する。帰る前に会いたいだとか、声だけでも聞きたいだとか、縋るような連絡が大量に返ってくる。面倒な女だ。
声だけでも聞きたいと言っていたので、ボイスメッセージで「また明日会おう」と伝えて電源を切る。鬱陶しい女は嫌いだ。
「信世ぁ……なにこれ」
紡祇から肩をつつかれる。
変な物でも見つけたのだろうか。
「どうした。何か起き……何が起きてんだこれ!?」
「分かんない!急に沸騰したんだよ!」
紡祇の手のひらに乗せたスライムがコポコポ音を立てて大きく盛り上がって蠢いていた。
危険が及ぶ前スライムを奪い取って瓶にねじ込もうとするが、瓶から拒絶するみたいにスライムから避けていく。
「と、とにかく瓶の中に……クソッ入らねぇ」
無理やり手で蓋をしても、スライムの勢いに負けて手が押し出される。
「『止まれ』」
『奇跡』を使っても止まらない。もしやコレ『奇跡』持ちなのか!?物も持ってんのか。
力押しも『奇跡』も効かず、むしろ体積が増えていく。
とうとう持ちきれないサイズになってしまい、床に落とす前に扉に投げつける。
「紡祇、後ろに隠れてろ!」
「わ、分かった!」
「『テメェらは紡祇を守れ』」
ぬいぐるみに紡祇を任せる。
もしやこれがシオンの切り札か。ならば消そう。翔流同様本体には『奇跡』が効かないなら他の物を使うしかない。
出来るなら蒸発させれるくらい熱く出来る物体が欲しいがそんな物を用意している暇は無い。考えている間に増殖し続けて既に俺の腰の高さまで膨れ上がってしまっている。
無限増殖して部屋を埋め尽くす気かよ。
何かそこそこの質量がある金属は……。たしか水筒があったはずだ。
水筒にはプラスチック類と金属類があるはず。プラスチック類でも致命傷になる温度には出来るだろうけれど焼いた時に有害物質が出やすい。『奇跡』で温度を高めた際に有害物質が出ないとは言い切れない。
金属であって欲しいが実物がどこに置いたのか……。
「バウ」
背中から狼型きりるんが口に咥えた水筒を渡してくれる。お前が持っていたか。
「『気化しない限界まで熱しながらスライムを中から焼き尽くせ』」
水筒を取り出してスライムが増える前に投げる。
水筒の素材を詳しくは知らないが感触や重さからして間違いなく金属。ならば、融点もそれなりに高いはず。
水筒が真っ赤に熱くなりながらスライムの中心に向かって突っ込んでいく。