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君との絆が奇跡になる  作者: 呂束 翠
『奇跡』使い達
13/45

第13話 戦闘準備

信世くん目線になります。信世くんが熟考しているので少し長いですよ。

10

 通話終了の画面になったスマホをポケットに直す。

 翔流の生死を確認出来たのは良かったが、大事な情報を伝えきれなかったのは痛い。

 まだ憶測でしかないが、紡祇を乗っ取っている奴(侵略者と仮で呼んでおこう)は『奇跡』を持っている人間を殺すと、何らかの手段で『奇跡』を奪えるのだろうと俺は考えている。

 翔流にそれを伝えようとしたが、その前に通話を切られてしまった。何度か掛け直してみるが反応がない。チャットも送っているが既読にならない。大方、あの侵略者やぬいぐるみ達にスマホを奪い取られたのだろう。

 最初に電話を掛けた時は、既に翔流は殺されているのかと思っていたが、まさか生きていて、しかも侵略者にバックハグされているとは思わなかった。

 初対面の時に紡祇を女と勘違いしたあいつの事だ。どうせ相手が男なのは気付いてないだろう。話し方からして恐らく中身は女性なのだろうが、体は完全に男だ。それに気付かずに誘惑されている可能性もなくはない。

 紡祇やあの侵略者の体はどこからどう見ても男だろ。

 しかし翔流が殺されていないのはあまりにも不自然だ。

 なにせ、あいつは『奇跡』持ちだ。

 これは綺羅星が居たおかげで分かったことだが、『奇跡』を持っている人間には『奇跡』の効きが悪くなるようだ。電話する前に実験しておいた。

 以前、綺羅星とその他大勢の男達に囲まれた時に、綺羅星が『奇跡』を俺達以外にしか使っていなかったのはそういう事だ。何度も何度も綺羅星に『奇跡』を使って白状させたからそれは間違いない。

 侵略者は俺の『奇跡』が欲しいと言って殺してきた。恐らく、殺した奴の『奇跡』を奪えるのだろう。だから、綺羅星の『奇跡』が効かなかった翔流を既に処理していると考えていたのだが、何故か生きていた。

 能力を奪うのに何か条件があるのだろうか。例えば、『奇跡』を使った事がなければ奪えないとか。だが、それが条件だとするなら、俺が電話で翔流も『奇跡』が使えると伝える前に電話を切ったのはむしろ都合が悪いはずだ。

 他に隠したい情報だと思ったからなのかは分からないが、何か意図がありそうだ。

 とにかく、現状あちらでは、翔流は自分がなんらかの『奇跡』を持っているのに気付いておらず、侵略者はそれを知っておきながら、あえてそれを翔流には伝えずにスキンシップを重ねているという事だ。

 翔流に『奇跡』について教えて使えるようにして殺す事もせず、俺には本人が向かわずにきりるんのような推定最高戦力のぬいぐるみも使わずに放置しているのも不思議だ。何も手出ししないのは何か理由があるからだろう。

 あり得る可能性としては、あの部屋以外に行くと『奇跡』を使えなくなる、もしくは紡祇に体を取り返されるとかだろうか。

 思い返してみれば、俺を殺したいというなら、外で背を向けている時や、洗面所で袋小路になっている所を狙えば良かったはずだ。それをしなかったのは何故だろうか。

 まぁ、相手がバカでなければ、しなかったのではなくて出来なかっただけなのだろう。

 理由は分からないが、あの部屋以外には侵略者は自分の意識を保てない可能性が高い。なにせ、あの部屋に入った瞬間に侵略者の意識に変わっていたのだ。ほぼ間違いないだろう。

 あとは、戦闘能力が高いぬいぐるみを送らなかった理由としては、本体から離れていると強い能力が使えないとかなのだろうか。家から出た途端に追手が消えたのもそれが理由だろう。

「つまり、こちらとしては準備し放題という訳か」

「そうみたいですね。ダーリン」

 腕に抱き着こうとしてきた綺羅星を蹴飛ばす。

「ダーリンの愛情表現ってすごい過激なのね。嬉しい」

「おう、そうだな。そこで座ってろ」

 俺に指示されて正座をする。

 見ての通りだが、今の綺羅星は俺が使った『奇跡』で俺に好意を抱いている状態だ。まぁ、それ以外にも少し手を加えているのだが。

 クセはあるが、操り人形みたいなものだ。

 向こうが監視していないのであれば、侵略者には綺羅星が味方になっているのは伝わっていないはずだ。ならばこれを使わない理由はない。存分に使わせてもらう。

 まず、綺羅星の『奇跡』を再確認しよう。

 彼女は、どうやら対象から別の対象への好感度を調整出来る『奇跡』を使えるとの事だった。

 この能力を使って、周囲の男達に自身への好感度を極端に引き上げて召使いのように操っていたのだそうだ。

 要はゲームで言う所の魅了みたいな物だ。

 この能力は逆に好感度を最低にも出来るみたいで、最初に会った時に翔流と俺が紡祇に向ける好感度を最低まで落としてやろうとしていたみたいだ。酷いことをするもんだ。

 結果は見ての通り全く効いていなかったのだが。

 綺羅星からこの『奇跡』を聞いた時、とりあえず綺羅星が連れてきた男全員を俺の言いなりにさせてもらった。

 ついでに綺羅星から俺への好感度も変えれないか調べてみたら、見事に成功したので、今は綺羅星とその他男達の軍勢を俺が引き連れている状態になっている。

 ただ、この『奇跡』は弱点があるらしく、好感度を無理やり上げている相手は動きが鈍くなってしまうというデバフが付くみたいだ。

 あの時、俺を殴ろうとしていた警官の動きが妙に遅かったのもこれが理由らしい。

 まぁ、肉壁程度には使えるので、突撃する時には利用させてもらおう。

「さて、ここまで手数が増えたんだ。そろそろ助けにいかないと、紡祇も不安だろ」

「ダーリン優しいのね。あんな使えない女を助けに行くだなんて」

 使えない女というのは紡祇の事だろう。このクソアマは姿が変わった紡祇を女と思っているみたいだ。

腹が立ったので顔面を蹴飛ばす。コイツを殴って手を汚したくはない。汚すのは靴だけで十分だ。

 妙に顔を赤くして息が荒くなっているが、気のせいにしておこう。見た目も良くないので記憶に残したくない。

 計画は簡単だ。

 相手は紡祇の家から出てこない。ならば、少しずつ攻略していけば良い。

 手始めにコイツらを5人程向かわせて、内部の状況をスマホのビデオ通話で確認しながら進んでもらう。

 状況を見ながらぬいぐるみを外に出して俺の『奇跡』を使いつつ無力化して紡祇の部屋に侵入。翔流を連れ出して、人質とぬいぐるみが無くなった所で男達を使って侵略者を捕まえて、俺が『奇跡』を連発して無力化した後、俺の『奇跡』で侵略者の意識を消して紡祇を取り戻す。

 綺羅星に関しては、殺されて『奇跡』を奪われてはいけないので、外で待機してもらう事にする。

 まぁ、綺羅星が居なくても人のストックは少なく見積もっても30人はいる。何人かやられても余裕はある。

「お前ら行くぞ」

「はぁい、ダーリン」

 少し好感度を高くさせ過ぎただろうか。終わったら記憶を消させなければ。

 大量の男達を引き連れてマンションの玄関へと向かう。

 紡祇から合鍵を貰っているので、自動ドアを他の人が入るのと同時に入るなど狡いマネはせずに堂々と正面から入る。

 警備員のおじちゃんに怪しまれたが、俺の『奇跡』で見逃してもらった。やはり、相手を

操れるのは便利だ。利便性が非常に高い。

 道中は何事もなく紡祇の家の前まで来れた。もしかしたら、家からは動けないという当てが外れて何か仕掛けられているのかと思ったが何もなかった。

「作戦はメッセージに送った通りだ。テメェらしっかり働きな」

「「「はい!!」」」

「もちろんよダーリン」

 抱き着こうとする綺羅星の腹に回し蹴りを放ってうずくまらせる。

「この痛み……ダーリンの愛情が強く感じれて嬉しいわッッ!!」

「こうも好感度が高いと流石に怖いな」

 使いやすくする為に好感度を高くしたのは間違いだっただろうか。ただなぁ……俺の『奇跡』だけだと数分したら解除されるから好感度を戻すのはあんまり良くないんだよな。

 それに、俺の『奇跡』だと、毎回指示しないと動いてくれないみたいなんだよな。だからこそ、綺羅星に好感度調整をしてもらっているのだが。

 まぁ、こういうのは紡祇を助けた後に解除すれば良い。今は紡祇が一番大事だ。何が何でも取り戻さなければいけない。

「これを貸してやる。俺の大事な物だ。失くすなよ」

「もちろんです!」

 初めの五人チームの男達に合鍵を渡して突撃してもらう。2人はスマホのビデオ通話で前後の把握をさせてもらう係、他3名でぬいぐるみを捕まえてもらう係だ。

 入口付近には、当たり前だがぬいぐるみが待機していた。ご丁寧に、あの時扉を破壊した小鳥も居た。

「『攻撃するな』」

 ぬいぐるみ達は、奥に居る俺の姿を見るなり突撃しようとしてきたが、俺の『奇跡』で攻撃を封じさせる。これで、攻撃に関する行動は出来なくなったはずだ。

 侵略者の『奇跡』で動いているぬいぐるみ達に俺の『奇跡』が通じるか不安だったが、問題なさそうだ。

 俺の『奇跡』は遠くまで効果を発揮させようとすると道中に居る奴にも効果が及んでしまう。だから「止まれ」ではなく「攻撃するな」だ。

 ついでにだが、どうやら俺の『奇跡』は別に大声じゃなくても良かったらしい。綺羅星に実験している時に気付いたことのだが、『奇跡』の存在を知ったことで、意識してオンオフが出来るようになったみたいだ。

 攻撃が出来なくなって戸惑っているぬいぐるみを男達が回収していく。

 順調だ。

 ぬいぐるみに俺の『奇跡』が通じるのであれば、綺羅星の『奇跡』も通じるはずだ。

 外に送ったぬいぐるみを味方にするように綺羅星に命令して先に進む。

 念のためにあまり前に出ない様にはしているが、想像以上に早く片付きそうだ。

 洗面所やトイレも含めてしっかりと探索し、道中に居るぬいぐるみを全て味方にしてリビングに到着したその時。

「よぉ、信世。随分と賑わってんな」

 翔流が嘘臭い笑顔で椅子に座って待っていた。

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