河野碧斗の始まりと本当の終わり。
河野碧斗
高校1年生。
異世界。
その言葉だけでワクワクする。剣や魔法。スキルやチート。自分に託された異世界の命運。
魔法やスキルで俺TUEEEEと持ち上げられながら生きるもよし。
転生前の料理や生活家電を異世界に持ち込むもよし。
又は……異世界の女の子全員に好かれてハーレムを作るもよし。なのだ。
言わば異世界は、オタクの夢を叶えてくれる場所。俺にしかない魔法。俺にしか使えないスキル。転生前はパッとしなかった自分が輝ける世界。
___なのかもしれない。
大きくため息を付き、読んでいたライトノベルを閉じた。何度目だろう、この小説を読むのは。
ブックカバーを付けられているこの本は、少し前に流行った異世界転生ものだ。
とあるパッとしない男子高校生が異世界へ転生し、神に与えられたスキルやチート級の魔法で世界を救い自信を付け、助けた女の子やエルフ、はたまた妖精にまで好かれ無自覚のハーレムを作り、めでたしめでたしで終わるという、ありふれた内容だった。
転生作品ではよくある設定だし主人公のカッコつけが鼻につくし、今読んでみるとどこかパッとしない内容だが、初めて読んだ時のワクワク感が忘れられず何回も読み直してしまうんだよなぁ。
最初に読んだ時よりもワクワク感は減ってしまったが、それでも読み終わった俺の心臓は大きく拍手をするように脈を打っている。
余韻に浸る間もなく、現実に戻される。
ガタンッ!と大きく机が揺れ、俺は咄嗟に体を後ろに引く。ちゃんと愛本も手に持って。
机が大きな音を立てた理由は、教室の後ろで格闘技の真似事をしていたクラスメイトがぶつかってきた様だった。
怪我はないか、とぶつかってきたクラスメイトの足先さら頭まで見る。痛がってる様子はないし大丈夫そうだ。
「…あ、わりい河野!周り見てなくて…!」
全然いいよ!気にしてないから。それよりさっきから話してるの昨日投稿された動画で芸能人の…いやまて、突然こんなにペラペラと早口で話しかけたら俺がオタクってバレるじゃないか。
ええとまずは気にしてないから、と伝えて…それから…よし。と覚悟を決めて口を開けると同時に、前方のドアが大きく開けられ声のでかい担任が、朝のホームルームを始めるぞ〜、っと顔を出した。
「河野、ほんと…まじでごめんな」
申し訳なさそうに眉を下げたクラスメイトは、トボトボと自席へ足を向けた。
………いつもこうだよなァ俺って!?!?!?!?!?!
暗黒の厨二病…いやいや中学生時代…俺は毎朝見えない妖精に向かって、「おはようアリス、今日も可愛いね。クスッ…照れた顔も可愛いよ。…っておい!髪を引っ張るなよ!…ったく」
な ん て 言 っ て い た ! !
毎朝のご飯は母親の作る朝食を断り、10秒で完食できるゼリーをおねだりして買ってもらい、それを吸いながら学校へ登校していた。もちろんそれだけじゃ足りなくて腹が良く鳴っていた。
そんな俺がなぜ厨二を卒業したかと言うと、
「お前いつも誰に向かって話しかけてんの?」
と、下校中にたまたま俺を見かけたクラスメイトが、俺にしか見えない妖精アリスと戯れている瞬間を見て肩を叩かれた瞬間だった。
あの時の俺を見るクラスメイトの目が忘れられない。
闇の中学生時代を2年ちょっと過ごし、あとの1年は教室の机の影になるように過ごした。
せめて高校では…高校では普通に生きたい…。あと出来れば女の子からモテたい…。
と、慣れないながらも美容院にいって髪の毛を整えてもらったり、ネットでみたメンズヘアセットをしてみたり、メガネをコンタクトに変えてみたり…見た目は結構変わったと思う。
が、見た目は変わっても中身はこれだ。
元厨二の陰キャ童貞コミュ障が本当の俺。
やっぱりクラスメイトの男子も女子も、陰キャな俺を見抜いているんだろう。
だから入学して1ヶ月間、誰にも話しかけられないんだ…。
高校では友達作ったり、放課後遊んだり…か、かか彼女なんか居たらいいなーって思ってたのに。
「…んじゃ、伝えることは以上で朝のホームルーム終わり!次の授業の教科書出しとけよー!」
担任の大きい声でまた現実に戻る。
気づいた時には担任の後ろ手でドアを閉めている瞬間だった。
次の授業まで時間がある…。自販機で飲み物買ってこよう。
立ち上がった俺が珍しいのか近くに居たクラスメイトが、俺の頭の先から腰まで見上げた。
えっ…すみません…なんか変なことしちゃいましたかね…?すみません、すぐこの場から離れるから。
楽しそうに話してるクラスメイトに背を向けて教室から急ぎ足で出る。涙は出てないから。
…本当は、俺もあの会話の中に入ってみたいんだけどなぁ。
…ぐす。
「…河野ってさ」
河野碧斗がいなくなった教室で、河野碧斗の前の席の女子生徒が呟いた。
その一言でその教室はしん、と静まり返った。
一言呟いた女子高生は言いずらそうに唾を飲み込み、それから口を開いた。
「かっこいいし話しかけたいんだけど、あまりにも一匹狼すぎん?いつも教室で本読んでるけど何読んでるんだろーね」
出ていった河野を追いかけるようにドアに視線を向けていた女子高生に同調するように、隣の席の男子が頷いた。
「俺達と精神年齢違うよな。話しかけると笑ってくれるけど何考えてんのか分かんねぇわ」
「でも河野、あんたよりかっこいいんだわ」
「うるせ!!!」
河野の話題で笑いが起こった教室で、机にぶつかった男子が立ち上がり、興奮を抑えきれないようにあのさ!と、声を出した。
「今日こそあいつ誘ってさ……。皆でカラオケいかね?!」
男子が言った一言に、皆は口々に、いいね〜!私団体割引あるから予約しとくよー!まじ!?たすかる!などの声が上がった。
そう…河野碧斗は高校デビューに大成功したのである。
物静かで動じないミステリアスな性格(実際は話しかける勇気が出なくて陰キャなだけ)
身長が高く、髪型や身だしなみに気を使っている(身長しか伸びず、成績は伸びないのね!と中学生時代は母親からよく怒られていた)
そして河野碧斗は。
「皆、俺抜きでカラオケにいくんだ…いいなぁぁあ…………」
そんな皆を教室のドアの隙間から聞き耳を立て、肝心な所を聴き逃していた男だった。
………これは、異世界に憧れた河野碧斗が。
「…俺もあの本の主人公みたいに、突然日常がガラッと変わんないかな…」
ゆっくりとしゃがみこみ、大きくため息を吐く。
「俺も…異世界で…最強になって…俺TUEEEEしたり、女の子からチヤホヤされたり…そんで俺だけの…ヒロインを…」
ぼそっと呟いた俺に答えるように地面が小刻みに揺れ、下から風が吹き上がった。
揺れ、て?え?地震!?
「結構でかくないか…ってか、風ってどこから…!?お、おい!皆大丈夫か!?」
体をバネのように持ちあげ、少し開かれていた教室のドアを勢いよくあける。
皆、一斉にこちらに目を向け、大きく見開いた。
大丈夫か、そう声を出そうとした瞬間、俺の視界は真っ暗になった。文字通り、目の前は闇だ。
何となく自分の手のひらをみると、俺の体は見える。
俺だけにスポットライトが当たってるみたいだ。
真っ暗……?停電か?その割にクラスメイトの声が一切しない。
スピーカーのボリュームを一気に下げたように。まるで俺の聴力がゼロになったように。
___いいでしょう。河野碧斗。
耳。よりも頭に響く水音のような済んだ声。この声の持ち主は心も見た目もとても綺麗な女性だろう。
声だけでこの人がただの人間じゃないと思わせる。
忙しなく首を左右に向けても、声の主はどこにも居ない。
まさか。これって。
__私が作った異世界に貴方をご招待致します。
異世、界…?まじで?ドッキリとかじゃなくて?
俺の事、騙してるだけなんだよな…?ほら、クラスメイトとか。ああほら。たまに学校にテレビだってくるだろ。今流行りの異世界転生させてみたら男子高校生はどうする!?みたいな企画だろ。
そうだよ、な。
俺の体は勝手に、ごくん。と生唾を飲み込んだ。
いつもは女性と話すと緊張して一言二言しか話せないし、何を話そうかとか考えるのに。ああ、もう。心臓の鼓動が早くなって何も考えられない。
「異世界…魔法とか、スキルとかある…あの異世界?」
__そうです。魔法もあれば魔物もいます。我が国は現在、魔物の長…魔王の完全復活の日が近づき、人類は為す術なく苦しんでおります。魔王が復活してしまえば、私の世界の人間は全員死に…世界はやがて滅びるでしょう。
魔法…魔物…魔王…!!
ゾクゾクを体を駆け回る鳥肌に快感すら覚える。
どうして俺が選ばれた?とか、俺のいる地球に戻ってこれる?とか。聞きたいことは沢山あるけれど。
「つまり。俺が呼ばれたって事は、俺にしか魔王を倒せないって事ですね」
声の主は何も答えず、ふ。と鼻を鳴らした。
きた、きた。きた。俺が。俺が。異世界。異世界に!本当にあったんだ!!!
ここが俺の部屋だったら今すぐベッドに向かって走り出し、枕に顔を押し付け大絶叫していることだろう。あぁ〜枕が欲しい。
__異世界へ連れていくに当たって貴方に能力を授けますが、時間が惜しいため早口になります。後ほどご自分でもスキル確認してくださいね。それでは説明します。
そうだよな。魔王が完全復活する日が近いっていうなら、早く異世界へ行って色々慣れた方がいいよな。
頭で状況を整理していると、体がふわっと持ち上がり10センチほど宙に浮いた。
うっ…エレベーターの浮遊感みたいなやつだ…俺苦手なんだよな…。
「1つ、スキル・勇気を授けます。これは貴方が人と円滑にコミュニケーションが取れるスキルです。魔王を倒すには仲間が必要ですからね。
但し、注意点があります。貴方の場合だと思ったことをすぐに言ってしまうと思うのです…いい事も、悪い事も。言葉には気をつけてくださいね。1度言ってしまった言葉は取り消せませんから」
おわっ!?急に左から鮮明に神様の声聞こえた!?
俺の左側に立ってるんだろうか…あ、何もないや。
異世界の神様だから…異神様?って呼んでいいかな。無礼かな。
ってか俺がコミュ障だからか神すぎるスキルくれるなんて分かってる〜!!!
なんて考えていると、神様がくすりと笑う。
なんと呼んでもいいですよ。と。
優しい…惚れそう。俺女性に優しくされた事ないんだよなぁ…きっと綺麗な神様なんだろうなぁ異神様…。てか、やっぱり神様だからか俺の心読めるんですね。
「ええ。読めますよ。貴方が私の顔やスタイルを想像している事も。ただ、胸はもう少しあります」
「あ!?すみません!!忘れてください!!」
やっべぇ…ここが真っ暗な空間なのも神様が作ったものだろうか。だから俺の心が読めるとか?
あ、でもスキルを頂いたからなのか、教室に居た時よりも円滑に話せてる気がする。これが勇気のスキルのお陰なのかな…?
「そして2つ、スキル・鋼の精神を与えます。そのままの意味でメンタルがめちゃ強になります。魔王討伐を目指す者として、救える命は救って…。散ってしまった命には手を合わせて。貴方は優しい人間ですから…色々と考えすぎて潰れてしまわないか不安だったので…」
本当にそのままのスキルでちょっと面白いけど、確かにこれも俺に必要なものだ。
人の目を気にして生きてきた中学生時代。メンタルが弱く、打たれ弱い俺を支えてくれるであろう。
神様って凄いな。俺に必要なものわかってるんだから。こんな俺に期待してくれてるんだから、俺も神様の期待に応えないとな。
「そして3つ目」
お。神様の声が左耳から右耳に動いた。なんかASMRみたいだ。なんか贅沢だな異世界の神様にASMRしてもらうのって。
「貴方に…スキル・フェロモンを与えます」
透き通った神様の声が、どろり。とした水飴の様な言葉に変わった。色気というか、雰囲気が変わったのか…?
動揺を隠すように、神様の言葉を真似る。
「ふぇ、ふぇろもん…?どんな、スキルですか?」
んふふ、と神様は悪戯に笑った。少し離れて俺の反応を見るように声が移動し、そのスキルはね。と囁いた。
「異世界転生を望む男性なら、誰もが喉から…いえ、全てを捧げても欲しいと願うスキルですよ。
フェロモンとは貴方の香り。1度その香りを嗅ぐと無条件で貴方を好きになるのですから。貴方の汗や体液、体臭から甘い香りがしてそれを嗅いだ女性の脳が体を興奮させ、それを恋愛感情だと錯覚させます。ちなみに動物には効きませんのでご安心くださいね」
俺の体臭を1度でも嗅ぐと…?無条件で俺を …好きになる?!
ま、まままま待ってください神様!確かに俺、異世界に行ったら女の子にチヤホヤされたいって言ったけど、俺、本当は…!!!
「夢だったんですよね。異世界へ行くこと、強いスキルと、異世界の女の子にチヤホヤされハーレムを作ることを」
うっ…。確かにオタクの…いや男の夢だ。
俺だけの特別な力。俺だけを好いてくれる一途な女の子達。でも、でも俺は…!!!
「私の子供達は私に似て可愛いので、きっとお気に入りの女の子ができますよ。何だったらフェロモンに当てられた女の子達を手当り次第に孕ませてもいいのですよ。…が、使命をお忘れなく」
そっと背中を誰かに押され、押し出すように徐々に強くなる。
いやまてまてまて!?神様!?話聞いてほしいんだけど!?押さ、押さないで!?
「あ、あの俺、俺は!!異世界でハーレムが作りたいんじゃないんです!!」
「お行きな…っさい!!!!!!!!!♡」
あ、語尾にハートマークついた。
どん!!!っと強く背中を押され、浮遊感が消える。
そしてとんでもないスピードで落ちていく体。
だから!!俺は!!!
「俺は、1人の女性だけ愛したいんですけどぅぅぅぅううううううわあああああ速えええええぇぇぇぇぇぇぇぇえええええ!?!!?!???!!!!!」
………河野碧斗が1人のヒロインを探す物語である。
____ぷっ。あはははは。ひゃはははははは。
取り繕っていた仮面が剥がれ落ち、女はひぃひぃと下品に喘ぎ笑う。先程まで上品に微笑んでいた女とは思えない豹変ぷりだった。
儂たちが座っている長テーブルの所まで小走りで走ってくると、笑いが耐えきれないのか自席に座り、顔を腕で隠し、片方の腕で机をバシバシと叩いた。
「聞きましたか!?あの子のセリフ…ぷ、ぷふ…あっ…あっはははは!!何が1人の女性を愛したいんですけどおお!?ですか…んふ、どうせ最後には手当り次第食い散らかす癖によ゛ぉ゛!?」
ゲラゲラと笑う女を注意する者はいない。いや、本音では文句の1つでも言いたいのかもしれない。が、それをしてしまえばこいつの逆鱗に触れ、何をされるか分かったものじゃない。
周りの者達はじっと彼女に目を向け、この場を耐えている。
笑いの虫がようやく腹からでて行ったのか、女ははぁはぁと息を整え、最後に大きく深呼吸をした。
そして顔にかかった前髪を払うと、私に艶やかな視線を向けた。
「さて地球の神…いや、ここは河野碧斗さんに習って地神。と呼ばせてもらいましょうか」
女は姿勢を正すように長い足を組んだ。
「数千年前から幾度と争われていた神の戦争…私と貴方達の戦いは白熱し、何個世界を壊し何個世界を作り直したか覚えてません。神は作った世界の人々の信仰がないと力を無くし、最後には名の無い神だった者として忘れられ消える。まあ、今も昔も数千年前から見覚えのある顔しか並んでないんですけど」
長テーブルについた神々の顔を、舐めまわすように端から端まで目を回した女は不機嫌そうに結んだ真一文字の唇を三日月に変えた。
「正直私も、力を消耗するだけで決着のつかない戦争は不毛でしたし、私一人に対してそちらは多勢に無勢…。前々からずるいっておもってたんですよね〜。まあ、そんな時に地神。貴方が言いました」
女は立ち上がり、テーブルに足をかけ乗り上げると儂の方へにじり寄ってくる。こんな性格じゃなければ、誰もが見惚れる顔だというのに。
赤子のように手と足を器用に動かし、儂の目の鼻の先で止まる。
「我々、神が戦う戦争ではなく、我々の創った世界の人間同士を戦わせようって。つまりこれは神々のゲーム…」
__今日で約束の100年目。地神が選んだ河野碧斗に全ての運命がかかっているのです!!
よいしょ!なんて可愛らしい掛け声で自席に戻った女をみなが見つめる。
中には悔しそうに眉を落とし、震える拳をテーブルの下に隠した神もいた。
見惚れるような容姿とは裏腹にとんでもない毒を吐き出すこの女。この神の名は__。
「私、異世界の神こと…異神が。貴方達、他神の世界を吸収し、全ての世界の創造主となるのです…あぁ…!ここまで長かった…!!」
耳に触る異神の絶叫に思わず顔を後ろへ引いた。
……そう。儂は思ったのだ。
神とはいえ、我々数人の神が集まっても力では異世界の神に勝てない。
我々を信仰してくれた人間が痩せた大地に寝転がり「神よ…」と救いを求める顔をもう見たくない。
どうせ戦争をするなら小規模に。そして異神へ提案したのだ。
…異神の創った異世界へ我々の人間を1年間に1人を100年間送り込み、異神のように見目麗しく育った女人の誘惑に1年間耐え、男女の仲にならなければ我々の勝ち。
そして今年は最後の年の100年目…。儂の世界から選んだ、河野碧斗…。
お前を呼んだと言うことは99人はダメだった。最短で3日。最長で3ヶ月。
お前の真の目的は魔王討伐などではない。
異世界の神が創った幼子、姉妹、お姉さん、人妻、熟女等の女人の誘惑に耐え、1年間その身を守ること。
世界の命運はお前にかかっとるんじゃぞ…!!!
こんな女に創造主を任せたら、自分の私利私欲のために人間を使うにきまっとる!!
「では、河野碧斗のこれからを見ていきましょうか。んふふ…彼は何日持つかしら。…はっ!もしかして数時間で卒業しちゃうかも!?」
「…貴様っ!いい加減に…!」
思わず立ち上がりかけた儂を、両隣に座っていた神々が腕を引いて止める。それだけで上がった血の気がサッと冷え、開いた口を噛む。
「99人もダメだったんです地神。次も…多分…」
苦虫を噛み潰したような顔で俯いた神を励まそうとなにか言葉を考えるも何も言えず。
すまない。と2人の神に謝り、「異神もすまんかった。年甲斐にもよらず、熱くなってしまったわい」
と余裕ぶってみる。これが年長者の切り替えだ。
「はぁい♡ちゃんと謝れる方は大好きですよ〜。ま、謝った所で今更替えなんて許さないんですけどね」
異神は鼻先で笑いながら指先をぱちん。と鳴らすと我々が着席しているテーブルより大きな映像がプロジェクターのように浮かび上がる。
これならどこに座っていても映像がわかる。
目を逸らしていても仕方がない。覚悟を決めて儂も彼を見守ろう。
……これは、河野碧斗が知らない物語である。
初投稿です。面白いと思って頂けた方はいいね(いいねとかあるのか分からない)とかコメントとか頂けると嬉しいです。
遅筆ながら書いていきます。