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探偵兼殺し屋  作者: 増井 龍大
第一章 最初の仕事は

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第1話

 探偵になる二年前、〈白の殺し屋〉に入って最初の殺し屋の仕事があった。それは時効になってしまった放火の事件の犯人の暗殺だった。

 最初の仕事は丸山が助っ人兼審査員として同行することになった。大通りを風切って歩いている犯人の後ろを二人で追う。

「暗殺っていうのはね、基本的に社会的に影響力のある人の方が難しいんだよ」

 考えればわかる当たり前のことを丸山は真剣に語った。

「そりゃそうでしょ。そんなことより僕は〈白の殺し屋〉のルールとか、現状とかを知りたいんですけど」

 僕は初めての任務よりもこの組織の事情に関心があった。

「はっはは、それもそうだね。じゃあまずルールから教えてあげようか。基本的にルールは二つ。殺しを誰にも見られないことと依頼にあったものは必ず殺すこと。それ以外は自由だよ。何をしても、しなくても大丈夫」

 嬉しそうにニコニコ笑う丸山は気味が悪かったが、ルールの方は想像していたよりもずいぶんと自由な感じだ。

「もしもそのルールを破ったら?」

「そうだな。多分、俺が君を殺しに行くことになる」

 冗談めかして笑いながら丸山は言う。しかし、これではっきりした。僕はこのルールを守らないと死ぬ。確実に死ぬ。

「〈白の殺し屋〉がやった殺しは人に見られた場合を除いて犯罪にならないからね。最悪の場合、殺しを見られたら、見た人を殺せばいいんだけど、殺す回数が増えれば増えるほど見られるリスクも高くなるからおすすめはしないかな」

 このルールなら僕がアルファを人知れず殺しても犯罪にならない。

「この現代社会で誰にも見られないなんて不可能じゃないですか? この大通りもそうですけど、防犯カメラがそこら中に配置されているし」

「カメラは大丈夫だ。〈白の殺し屋〉には『クッキー』っていう最強のハッカーが居るから、殺した場所を言えばその辺のカメラはハッキングでどうにかしてくれる」

 カメラに映ってもいいなら何とかなるだろうか。いやそれでも人が多いところでやるのは避けた方が賢明だろう。

「ああ、あと、〈白の殺し屋〉だけやってれば生活に困らないだけのお金は入ってくるけど、周りの人に怪しまれないために仕事はしといた方がいい。俺の場合は殺し屋兼警察」

 丸山は警察に二つ籍があることになるが、問題にならないということはそれだけ極秘組織であるということなんだろう。

「じゃあ、僕は探偵になろうと思います。……情報も集めたいし」

 アルファの情報は全く集まってない。今どこにいるのか。何をしているのか。僕が知らないだけで、もっと人を殺しているかもしれない。早く足取りをつかまなければ。

「青山君、ターゲットに近づきすぎ。もっとゆっくり歩いて」

 小声で言われてふと前を見ると、今まで10メートルほどあった距離が5メートルまで縮んでいた。

「すみません。少し考え事を」

「今は集中してね。次はウチの現状について話すけど……」

 そこで丸山の雰囲気が変わった。前にいたターゲットが大通りから、路地裏に入ったからだ。

 ――気付かれたか?――

 僕たちは周りの人に気付かれないように歩くスピードを上げる。この路地の先は行き止まり。気付かれていたとしてもターゲットは袋の鼠だ。後は殺すだけ。警戒しながら中に入ると拳銃をこちらに向けたターゲットの姿があった。

「動くな!動いたら撃つ!」

 ターゲットは狼狽えた様子ながらも拳銃をはっきりとこちらに向けていた。そしてその拳銃にはサプレッサーがついていない。発砲されたら、ここに人が集まってしまう。発砲される前に仕留めなければならない。

「ゆっくり手を頭の上に挙げろ!」

 僕はターゲットを刺激しないように要求に従う。

「お前らは何者だ⁉」

 拳銃の持ち方からして、その道のプロではないはずだ。しかしターゲットは僕たちから視線を全く外さないし、なぜだか余裕がない。この様子では僕らが動いたら本当に引き金を引きそうだ。

「僕たちは、あっ……」

 僕はそこまで言って、視線を大きく上にあげる。それに釣られてターゲットも一瞬だけ視線を上にあげた。そしてその一瞬は僕たちから視線を外すことになる。本当に小さな隙。僕はその隙をついて一気に距離を詰める。後ろに回りながら左手で首をホールド、そして右手で瞬時に拳銃をターゲットから取り上げる。そしてその拳銃を頭に突き付けながら言う。

「動くな。動いたら殺す」

 ターゲットは何も言わずに両手を上げた。僕は左手で腰のベルトからナイフを取り出し、ターゲットの首を掻き切った。

「動いたら殺すって言っただろ」

 人間だったものの首から飛び散った返り血が僕の服を汚した。きっと即死だ。しかし首を切っただけでは死なない可能性を考慮して心臓のところにナイフを突き立てる。その時は返り血は飛ばなかった。

 ――パチパチパチパチ――

 振り返ると後ろで見ていた丸山が笑顔で拍手をしてきた。彼は今日は助っ人兼審査員なので何もしなかったのだろう。

「いい手際の良さだ」

「ちょっとは手伝ってくれても良かったんじゃないですか?」

「いや、実際僕が手伝うまでもなかったよ。ターゲットに主導権があると錯覚させて、油断したところを刈り取る。本当にいい作戦だったよ。点数をつけるなら90点ってところかな」

「後の10点は?」

「そうだね。犯人に近づきすぎたことと、何も聞かなかったことだよ。もしかしたらターゲットは、君の聞きたい情報をもっていたかもしれない。僕らにとって、殺しは仕事だ。けれど、私情がはいっちゃいけないわけじゃないよ」

「なるほど。勉強になります」

 僕はそう言ってターゲットの所持品を確認する。人を殺したのは初めてだった。でも感情は全くと言っていいほどに動かなかった。このターゲットの身の上は知らない。こんな放火犯であっても友達が居たり、恋人が居たり、家族が居たりするのだろうか。そんなことを考えながら、ターゲットの服のポケットを漁る。

「胸のポケットの中に何か入ってます」

 僕は警戒しながら中の物を取り出すとそこからは一通の手紙とスマホが一台が出てきた。手紙の中を確認すると


「神からの祝福

 ヒストリーより」


 この手紙に僕は既視感が有った。アルファが僕に出してきた手紙と書き方がずいぶん似ている。同じ組織で動いているものだろう。

「確かに何も聞かずに殺したのは間違いだったかもしれません」

「そうだね。次回からは自分の聞きたいことは殺す前に聞いた方がいい」

「この後はどうすればいいですか?」

「この後は『クッキー』に電話だね。これ電話番号ね」

 そう言って丸山は携帯の番号が書かれたメモを僕にくれた。さっそく電話を掛けると3コールで出た。

「もしもし」

「もしもし」

 若い女の人の声だった。

「初めまして、青山と申します。『クッキー』さんの番号で間違いないでしょうか?」

「うん。あってるよー。でもこれ仕事の電話でしょ? あんまり本名は使わない方がいいよ~。コードネーム決めてないの?」

「まだ、決めてなくて……」

「そうかじゃあ今決めよう!」

 コードネーム。そんな話、丸山からは聞かされていないけど、まあいいか。

「僕のコードネームは№2でお願いします」

 意味は一つ。2は大富豪でAよりも強い。アルファを倒すことの決意を表すコードネーム。

「わかったナンバーツーね~。了解、了解。どのへんでやったの?」

「大通りの路地裏のところで」

「あーそこね。了解。あと、君が良ければなんだけど、君のスマホの位置情報ハッキングしてもいいかな? いちいち場所聞くの面倒だから」

「悪用しないなら構いません」

「それはしないから大丈夫。じゃあそうゆうことで、位置情報持っとくね~」

「はい。では。失礼します」

 そうして僕の初任務が終わった。死体は後で警察に回収されるそうなので放置し、ターゲットのスマホは警察で中身を見ることになった。ターゲットのスマホの中からはヒストリーに繋がる情報は出てこなかった。もちろんアルファの情報も。

 初仕事で人を殺した。僕の心境に変化はない。アルファは僕が殺す。ただ、僕がアルファを殺したいように、僕のことが殺したいほど憎くなった人間も存在するかもしれない。僕の邪魔をするならそいつも殺す。やっぱり僕は普通の人間ではなく欠陥品なのかもしれない。


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