表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不死鳥の嫁入り  作者: 丹㑚仁戻
プロローグ
1/44

終わり、そして蘇る

 その日、(はい)国で一人の女が息を引き取った。女の遺体は一気に燃え上がり、視界を奪うほどの光を発した。

 だが、それも短い間のこと。紫や緑の光の混ざった赤い炎は一瞬にして肉を灰へと変えると、跡形もなく消え去った。

 全てを焼き尽くすような光だった。けれど燃えたのは遺体だけ。彼女が横たわっていた布団も、着ていた着物もそのまま残っている。着物の中では人ひとり分の灰が赤く燻り、その灰を周囲で男達が見守っていた。


 一分にも満たない、短い静寂。その静寂を破ったのは、灰の動く音だった。


「おおっ……!」


 男達の中から、小さな歓声が上がる。彼らが食い入るように見つめる灰の中で、もぞりもぞりと、何かが動く。

 動いているのは小さな塊だ。動くたびにその塊は大きくなって、着物の胸元あたり、はだけたその場所に小さな灰山を作った。


 灰山の成長が止まったのは、それが人間の赤子ほどの大きさになった頃。もぞりと動けば、大きくなる代わりに固まった灰に(ひび)が入る。まるで卵の殻のように罅は幾筋も灰の表面に伸びていって、ぱらりと破片が一つ崩れ落ちると、そこからふっくらとした肌が姿を見せた。


「おぎゃあっ……おぎゃあっ……」


 ()()()()から、赤子の産声が響く。


(すい)国の使者は?」

「ここに」


 問いかけた男はその声に頷くと、灰の中から赤子を抱き上げた。すかさず別の者が上等な生地のおくるみを差し出し、壊れ物を扱うかのようにそっと赤子をその中に収める。


「これより、この方は〝朱華(しゅか)様〟だ」


 そうして、彗国の使者を名乗った男に赤子を差し出した。


紅胡(こうこ)様に感謝を。そして〝朱華様〟に幸多からんことを」


 男の言葉と共に、その場にいた者達が頭を下げる。使者の腕の中で産声を上げる赤子は、ただただ泣き続けていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ