たんぽぽ引きちぎったらループした
初です。よろしくお願いします。
「あぁ。また戻ってきた。……あぁもう、どうしたらいいんだよ!くそっ!」
道の真ん中で一人の男が歩みを止め、突然空を仰いだかと思うと、口汚い言葉を大声で叫んだ。
スーツ姿のそいつは、苛立ったように頭を掻いていた。怒りに顔を顰めたその表情に、横を通った若い男は「ひっ」と悲鳴を上げて足早に去って行った。その声を聞いた周りの通行人達もつられるようにその顔を見て、ぎょっとしながら皆その場を早足で去った。男は酷く怒っているようだった。
「あのクソ花め。何がしたいんだよ。俺をどうしたいんだ!!」
……もしかして「クソ花」とは私のことだろうか。彼とは何回か会っているが、彼に何かした覚えはない。人違いだろう。…少し自意識過剰だったようだ。恥ずかしい。
わぁーわぁー叫ぶ彼は、相手がいないのに一人怒鳴っているので少し目立っていた。男が怒鳴っている方向にいた人は気まずそうにチラリと彼を見た後、そそそと横にズレた。少し離れた位置にいる人には迷惑そうな顔で見られていた。同じ人間を見ているのに感じ方は違う。人はいつ見ても飽きないな。
彼を避けつつ、何かに追われるように早足で歩く彼らは一体どこに向かって、どんな気持ちで、何をするのだろう。私は好奇心が強いのだと思っている。この件が終わったら、観察してみるのもありだろう。……あぁでも、あの人混みに私が入ると私は跡形もなく潰されてしまうのだろうな。ゾッとる。
……はぁ。少し嫌な気持ちになってしまった。そろそろこの原因を探さなければな。
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俺は俯いた顔をゆっくりと上げた。周りには誰もいない。どのくらいこの場にいてたんだろう。1時間だったかもしれないし、一分だったのかもしれない。どうでもいい。
「……はぁ。」
思わず深くため息をついた。今回も手がかりをつかめなかった。いや、前回か。その前もその前の前も、ひとっつも得られなかった。どうすればいいんだ。どうすれば抜け出せるんだ。俺は一体、何を、すればいいんだ。
「くそ」
悪態をついた自分の声は思ったより随分と弱々しくなった。こんなはずでは無かった。こんなことになるとは思わなかった。いくら言い訳しても、このループは止まってくれない。だから、俺が止めなければ。
俺はゆっくりと顔を上げ、目的地も分からずにただただ無性に走り出した。