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第44話
扉を開けた。きいきいと、耳障りな音がする。
中にいる人間がそれで誰かが入ってきたと判ったのだろう。
しゃがれた男の声が私に届いた。
「またか。今度はベリオ、お前か……?」
私は、一歩。また一歩。足を進めていく。
「そろそろ焦らしてくるとは思っていた」
歩みを。
「だがまだあれは完成にはほど遠い、と何度も言ったはずだ……」
。
「そろそろまた……次の被検体が欲しい頃合いだ」
。
「まだだ……。まだ足りない。もっと必要なのだ」
。
「あれを満たすためには、もっと魔力を持った人間が必要だ」
。
「お前が連れてきた……お前の所にいた副師団長のような、質の高い魔力を持つ人間が」
。
「ならず者だろうと構わない。貧民だろうと構わない。移民だろうと、稀人だろうと、下人だろうと、子どもだろうと」
。
。
。
「人間だ。人間であればいい。良質な人間の魔力が必要なのだ」
。
「はやく、連れてこい。お前が見つけた逸材とやらを」
立ち止まる。
「お前は誰だ?」